38: 荘厳な面構えの教会
先程から柔らかの緑の野原の風景に、簡単な柵が目の前に続くようになる。
そこにポツン、ポツンと羊が現れ、穏やかにすごしている姿を目にするようになってきた。
「そろそろ、ローリエに着きそうですよ」
そう、マルティーの声がキャビネットへと聞こえて来た。
「「はぁーい」」
キャビネットの後ろで、風景を見ていた女性たちは声を揃え、そう返事をした。
「入るぞ」
「「はーい」」
返事とともに、キャビネットの入口にかけてあるシーツを手を掛け、カリオスがキャビネットへと入って来る。
「風景がのどかになったと思ったら……、もう、ローリエなのですね」
「あぁ、二日間かかるのは変わらないが、騎士たちがこっちの道を通るため、道の整備を入念にしているようで、水たまりにはまる事もない」
そう言って彼はに、フェリーネたちの前に胡坐を座った。
彼の亜麻色の髪が目にかかり、そして黒いシャツ。
そんな服装の彼は、寡黙な雰囲気がさらに増し、三人も緊張してしまうというものだった。
「まず、ここに来た目的を説明しよう。ここでは教会で治療をして貰う」
「これからずっと、ここですか?」
フェリーネは少々緊張しながら聞く。ここは彼女の母の故郷、そして祖父母はまだ健在で、大きな城に住んでいるようだ。
なら、フェリーネをここへ残し、名声が知れ渡るの待つのも何らおかしくはない。
吊り橋で、馬を乗り継ぎ移動すれば、時間の問題もクリアーできる。
「いや、いずれ帰る事となる。以前言ったように、君の話はダリム卿から聞く事となった。ならば、君の祖父である、あの方にも考えがあるはずだ。そして君もそれを聞かなければならない」
いつのまにかカリオスは、フェリーネをしっかりそのエメラルド色の瞳で見据え、話していた。そうするとフェリーネはとても緊張し、頬が少しだけ赤くなる。
「祖父の考えですか……」
祖父は、何て言うだろう。彼女の祖父も亡くなった母の事がある。カリオスの話に乗る計画なのか、フェリーネと話をしてみて決めるのかはわからない。そしてオリビアを見る。
――もしも、シオン様の所へ嫁げと言われら……。もう自由になれないのかもしれない。それが貴族の血を受け継ぐ者なら普通と知っていても、自由を知った今は、やはり寂しい思いがする。
「わかりました。祖父母に会うのは楽しみです」
そう彼女は控えめに笑う。誰が彼女の真の心を知っているかわからない。
カリオスも、オリビアも、彼女の言葉に同意をしただけだった。
「わぁー、おねえちゃんのおじいちゃま、おばあちゃまがここにいるの?」
「はい、いますよ。私もいろいろあって、まだ会えていないのですが」
「「何故だ?」」
カリオスと、オリビアの声が揃う。オリビアなんて、前のめりになって聞いてくる。
「先の討伐の際は、ここで救助スペースがあったはず。なのに会えなかったのか?」
「あっ、はい……会えませんでした。何故でしょうね?」
そう言うと、オリビアは苦虫を嚙み潰したような顔をする。
いつもは明朗で、貴族の令嬢なのだなぁ……という雰囲気の漂う彼女にしては珍しい事だ。
――けれど、会えなかった事の憤りを、彼女が知って不条理だと思ってくれる事は心強い。
そう、フェリーネは思う。それだけあの戦いは過酷だった。我が儘など言う人などいなかった。
「だが、大丈夫だ。今日の夜には会える。あの時は、多忙だったのかもしれない。もし、違う理由なら……」
「違う理由なら?」
「その理由を、イクリオン家の連中に司法の場で喋らしてやる。心情的には奴らを貶める手伝いとなるだろう」
「そうですね。一生懸命悲しそうに話します。勝てるように」
「私もおねえちゃんが勝てるように、本当のこと言う。私の嫌だった事もいっぱいの、いっぱーい」
そうミリアは手を大きく広げて言うが、ハッと気づく。
フェリーネが心配そうにしている。その事に気付いて。
「えっと、おねえちゃんが怒られた事とかだよ。私は逃げ足早いもん。大丈夫だったよー」
そう手遊びをするように、もじもじと彼女は言う。
「わかったわミリア。これからは嫌な事ないようにするわね。嫌だった私は言うし、ミリアも言ってね」
そう、ミリアの頬に触れると、うんうんと無言ながら彼女は頷くのだった。
「もう、嫌な事がない。と言ってやりたいが、それは約束できない。それでも協力してくれると助かる。もうローリエまで来てるんだ。強制はできないが……、無いように努力する。それは怠らない」
ミリアの様子を見ていたフェリーネは、今度はカリオスに飛び火していて、少し驚いた。皆の優しさは嬉しいだからこそ、心配はかけられない。
「えっと、私も頑張りますから」
そう言っている隣で――。
「出来たら、頑張らないでもらいたいのだが、ハークエル領地では、フェリーネが来てくれたなら、カリオスが提示しているだろう同等の物を、時間がかかるがだいぶ軽減されたリスクで提示できるだろう」
そうオリビアに言われると、フェリーネは頬に手をつき考える。
当初の、町娘に近い位置で、治療していく生活からは、すでにずいぶん遠くなってしまってしまったなぁ……と。
そして選択しは、王族と結婚、普通に政略結婚。
どれも、想像に難しいものなかりだ。
「…………、とりあえず教会で行かせてください。それとも先に市場ですか?」
「教会だ。市場へは俺とマルティーで行って来る」
「はい」
「いや、まず、門に着きましたから、カリオス様出てくれませんか?」
マルティーが入口から顔をだした。
ちょっと驚いたが、よくやくローリエへの前へはついたようだ。
◇◇◇
今回、フェリーネがお世話になる教会へついた。
セオラ中央教会の教会本部側に、新しく出来た教会ほど面積と、荘厳な面構えの教会で今回も関心するばかりだった。
――何故、こんなに塔があるのだろうか?
そうどちらの新しい教会を見る度にフェリーネも思うが、本部側では聞けず、こちらでは勉強不足と思われそうで、やはり聞けていなかった。
「わぁー、いつも思うのですが、なんでこんなに塔が多いんでしょうね?」
それはマルティーの声だった。長年の疑問が、今回解き明かされる事になるかもしれない。
「知らん」
「装飾なのでしょうか?」
「フェリーネ様、知ってますか?」
「えっ!? ……」
「知らないと、まずい感じですか?」
「それは……」
「おっきいね。近くで見たいマルティーおにいちゃんおんぶして?」
「あっ、マルティーさんありがとうございます」
そう、フェリーネはお礼を言って、早足で扉の奥へと駆け抜ける。
「私しってるよ。塔が多いのはねー……」
ガッコン!!
――そして扉は閉まった。
――ああぁああぁぁ!? 後で、ミリアにこっそり聞く事にしましょう……。
◇◇
室内は、眩しい光の洪水。様々な原色の色たちが鮮やかに描かれる。
その素晴らしい輝きに、目を奪われてしまう。
そしていつも天井画を眺めては、首が疲れてしまうほど見てしまう。
ここは、フェリーネの所属しているセオラ女神教団ではなく、北部に昔からあるカシオペア様が人間であると教えを説いている教会である。
そちらの教義の方がローリエでもよく知らてているので、教会もローリエのにあるセオラ女神教団建物より規模が大きい。
一年前の大規模な魔物討伐の際も、セオラ女神教団の司祭様にそう説明された後、『そこの司祭様と自治会つながりで、部屋が借りられる事になりました』と、案内された場所がここだった。
教会の道を進んで行くと、体の様子を覗きみればやはり、もやに覆われた人もいる。
カリオスの村より規模が大変多きいが、根絶という先が見えるのなら、いつか彼らの事も治療できるかも? そう思える。
その中に、強い、黒いもやを纏っている女性が居た。彼女は誰かを探す様な目をしている。そしてフェリーネを見たが、すぐに視線はまた彷徨い、ため息を漏らす。
――きっと、ここでも患者を募っているなら、聖女を探しているのね。
けれども聖女は二人。そして秘密が多ければ順番は早まるかもしれない。
それか、過去、セイラはこの教会へ来る度に、入り口に集まる人々を笑顔をふりまいた。
暗いニュースや、魔物の恐ろしい噂が街を覆う中、彼女の笑顔は救いだっただろうう。
だから聖女と聞いて、今もセイラを探してる……。
続く




