表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境へ追いやられた落とし子が、隠された聖女を迎えに来た  作者: もち雪
2:北部の辺境の地にて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/58

35:最北端へと続く道

 馬車は岩場を進んでいる。

 一年前の大量の魔物が、闊歩した痕跡の残るその道を。


 一年前の悲劇のきっかけは、ある年老いた聖女の死。


 新しい聖女候補は二人居たが、一人は使い物にならない姉、聖女に相応しいと言われている妹は十三になったばかりの少女だった。


 残された結界を張れる者は、四人。


 今ある結界を張った王族の血を引く者、王、王位継承権第一のセルジオス、そして前王の血を引くが、王妃にも、側妃にもなれなかった人物の息子である、カリオス ホークニング。


 その中に適応者が一人しかいない。


 だから彼が、第二の結界を張った。

 幸いにも、一枚目の結界は魔物の蠢く魔の森側にはれており、何の問題もないように思われた。


 しかしある日、ふたたび第二の結界は木端微塵に壊れた。


「そしてその衝撃によって、第一の結界まで壊れた……」


「何故、第二の結界まで、同じ人物がはる事なったのですか? 結界が破られれば、はった人物に衝撃が来ると知らなかったのですか?」


 フェリーネはカリオスと、オリビアに聞いて見た。

 彼らなら、きっと貴族や教会の事情にも詳しいはずだ。


「何せ、今までは結界は破られた事はなかったからな」


「頭の固い貴族が、ばかのだ」

 そうオリビアが吐き捨てるように言う。


「王族と聖女、そして教会。今のところ建前上、その組織と人物が、この国をまわしている。王族は尊く、不可侵だ。そこに手を突っ込むと、争いが生まれる。そして結界をはる者は英雄であり、聖女だ。だから、争いの引き金になる俺は外されたらしい」


「では、今はどうです?」

「辺境伯の仕事としてやっている。公式には、領地を守るために、個人的にな」


「えっと……、難しいのですが……。人の命がかかっているのでしょう?」


「だが、カリオス卿が、前王の後継者である。この国を守っているのは私だ。そう言って民衆を扇動し、言ってまわれば内戦、革命にもつながり兼ねないと思っていたらし。今現在も見ようによっては、結構厄介な状態になりつつあるがな」


「扇動で、イクリオン家が倒せるなら、もうとっくにやっている。俺がやっている事は、王家の前に罪人を引っ立てる為の証拠集めだけだ。そして、フェリーネの妹の誘拐嫌疑がかかったと聞いて、動揺さえ覚えた……」

「あぁ……」


 彼は頭を垂れるようにそう言い、オリビアは思い当たるという感じで声を漏らす。

 フェリーネはそれを、胸に湧き上がる少々の不安を感じながら見ていた。


「やはり、教会を再開できないからでしょうか?」


「それで、どうするんだ? こちらへ接触して示談にしょうとしているのか?」


 カリオスは困惑気味に、手を開く。答えを求めるように、フェリーネに質問するが……。


「私を殺害するチャンスを狙っている……? とにかくセルジオス殿下と結婚すれば、聖女と仕事をしなくてもよくなるので」

「二年……、調査書には十五と、聖女の資格を得るのにそれほどかかると」


「「……」」

 気まずい沈黙、そこにサラテートが関わったかどうかで、意味合いは180度変わるが、今は彼女たちの意図さえわからない。


「向こうの行動には、対処しかできない。もういいではないか。で、結界が破壊された原因は?」


 ひざを抱えたオリビアは、フェリーネと、カリオスは交互に見た。


「では、私から、知られているかわかりませんが、結界は初歩的な迷路になってます」


「迷路?」

「そうなんです。カリオスがはった結界は今、道が空いてますよね?」


「あぁ、とても長い距離を取って、こちらと、レスタード結ぶ崖の切れ目。その少しレスタードに寄った場所に、蓋を浮かせるように結界ははってある。だから、隙間を通って、崖の切れ目である道を通って魔物がやってくる。目視してから時間が、稼げるという程度のものになっているな」


「そこに聖女はその内側で、道をふさぐように結界はります。ザルと同じで弱い魔物や剣、弓、そして人をも通します。それに対し、王族の結界は強度が高く。剣の攻撃も阻むのです。そしてカリオスの言うように第一の結界より長さを取り、ふさがず両端を開け、魔物に列を作らせる」


「大きく言えば、蜘蛛の子の様に一度に増える。弱い魔物が、人間側に逃げる数を制御でき、脅威になる強さを持つ魔物も、結界の内側から無傷で倒せる可能性が高いという事でいいのか?」


「ええ、大きく言えば」


 フェリーネは、オリビアの大まかなまとめ方に、笑顔をこぼす。

 今まで受けていた勉強は、祖母の時以外は、細部まで事細かく! って教えかただったので。



「で、二枚の結界の間に、全ての魔物を閉じ込める結果になり、結界が破壊されたのか?」


「たぶん……」


「そうらしい、通常ならそれでも王族の結界があるから、以前あった橋からなら間に合ったが、王都からやって来ていた王族は破壊された衝撃で、オドが上手く働かず、体の中の全ての魔術の道が止まったと考えられている。その結果として、王国辺境騎士団のマークが言う話では、駐在してた騎士の前で、第二の結界までも一瞬で消え去ったらしい……」


 うーん……、と唸り声のような声が漏れ、ふたたび重い沈黙が広がる。


 ここは辺境の地、それでもあの事故は、大災害レベルだった。

 大きな魔物の餌は、小さな魔物から、人へと変わり、そして私たちは十日後、地獄の地へとやって来た。



「結界をはる仕事、一所懸命やらせていただきます。まだ、経験が少ないので持続は出来ません。それは通常なことなので心配なさらないでください」


「ああっ、わかった。何事も始めはそういうものだ」

 そう、カリオス少しの笑顔とともに言い、オリビアは怪訝な顔をする。


「何だ?」

「いや、何でもない」

 オリビアはそう答えた。フェリーネも、カリオスも不思議そうな顔をした。


 ◇◇



 幌馬車の一番後ろ。

 帆のハリにもたれ掛かり、辺境騎士団、そして多くの魔法使いが、魔物の軍勢と戦った痕跡を眺める。


 黒く、焼け焦げた大地はも、雨や風の浸食で以前の大地の顔を、思い出しつつあるようだ。


 そして私たちは大きな道からそれて、緩やかな上り坂を、くねくねと大地に合わせ進んでいる。


「ほら、これを飲め」

「あっ……ありがとうございます」


 急に、屋根に掛かった衣服の間から、カリオスが現れた。

 ワインのようなふたを開け、それを飲めば少しだけ冷たい。


 だから、カリオスを見た。


「冷たいのは嫌か?」

「いえ、便利だなって思って」


 フェリーネは体を傾けて、カリオスは見る。

 そんな彼女の前で、彼は丈夫そうな木箱に腰をかけ、ぎぃぃー、とそれは悲鳴をあげる。


「便利なのはお前たちの魔法の方だ。癒しの力を使えれば……、そう思った事も多くある。だが、その力を持つだけでは辛そうだ。破壊する力があれば、殺す事も容易い。そう思えば、やり過ごせる事もあった」


 そう彼は、自分の手を見る。彼は、彼の運命を少し転じさせたこの地で、少しセンチメンタルになってるのかもしれない。


 ――カリオスが力を使わなかったのは、残ってくれた者たちがいたからだろう。

 それとも、子どもだったから?


「何だ?」

 ――いつものカリオス。せっかくなので、聖女らしい事しなくちゃ。


「カリオス、貴方の強さは、貴女のまわりの人々を思っているからですよ。これは真実。私でさえ貴方の生存について、疑わしい時がありました。けれど、貴方は生きていました。私はそれが貴方が、みんなの事思って頑張ったからだと思います。正解は貴方しかしりません。ですから、私は、私の思っている事をお伝えします」


 フェリーネは、驚く顔のカリオスの手を取り、そして指を一本一本開いていく。

 そして両手の親指で、手のひらを指圧するようにギューーットと、痛くないようにしながら押す。


 そしてフェリーネは真剣な顔をして、彼の顔を見た。

 大きな手は温かく、ちょっと押すのは親指は痛いが、彼の手を触るのは嬉しい事のように思う。


 指も長いわ……。


「お前は時々、何をやらかすかわからない……」


 彼は、呆れてしまったのか……。視線をそらされてしまった。


「そうなんでしょうか……」

 ちょっと、反省しつつ彼女は言葉を返した。


 握っている方と反対の手が、フェリーネにのばされる。

 彼女の頬を触れ、首を柔らかい場所にくすぐるように、耳の後ろへとまわる。


 なんだか、カリオスとの顔の距離が近く感じる。

「そうなんだよ」

「それは……ごめんなさい……」


 謝罪の気持ちを表したいのに、目が離せて……。

 怯えるように、瞳を瞬かせるフェリーネだった。


「お願いだから、謝らないでくれ」


 カリオスは懇願するように、そう言うだけ言って、彼女を置いて御者席へと行ってしまった。


 けれど、彼の手は、別れを惜しむように、ゆっくり彼女の頬をなでていた。

 だから、頬が熱を持つように熱い。


 そこへ、自分の手か重ねてみるが、なぜかいけない事しているようで、彼女は顔をふせ、もっと小さくうずくまったのだった。


 続く





「「…………」」

「喧嘩した?」

「ミリア、しーっ、しーっだから」

「わかったわ」

 ミリアと、マルティーの声がした。けれど、一緒に居るはずの彼女の声は聞こえなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ