26:世界を守るカシオペア
『釈迦に説法』ですが、フェリーネの世界の言葉を、翻訳投稿者が直訳で翻訳しました。
そして何も言わず、座る彼の横へフェリーネが座ったってからしばたく経った。
食べた事のない料理ばかりを食べ終えて、ずいぶん久しぶりの満腹感に、眠気まで襲って来る。
けれど、何も話すことなく座って居る、カリスト聞くのは違うような気がしていた。
――きっとこの教会について、聖女としての感想を期待されているのだわ。
そう教会の木製のベンチに並んで座り、やっぱり彼の隣りで彼女は目を見開き、眠気に耐えていた。
「どうだ?」
「えっ!?」
「眠いのか?」
カリオスは前かがみになり、フェリーネの顔を覗き込む。
「そんな事はないです……。始めての場所でちょっと緊張しただけ、それだけです」
両手で、椅子の座る部分を持ち、靴先に視線を落としている。
そんな彼女は、自身の頬が赤いかどうか、そればかりが気になっていた。
幌馬車という出る事のできない狭い空間と違い、セオラ中央教会程の広さの教会では、カリオスとの近さが今更ながらフェリーネには気にかかる。
――長旅で、浄化の力があるとはいえ、水浴びや、温めた濡れタオルで体を拭く事しかできなかったのに……。
――にお……ってないですかしら……? ……うーん、もぉー。
いろいろな事が心に渦巻き、どんどんフェリーネは、顔を隠すように猫背になってしまっていく。
「大丈夫か?」
「匂いますか?」
「は?」
「あぁ……、いえ、何でもありません。素敵な所ですね」
――カリオスが顔を近づけ聞いて来たので、ついつい余計なことを聞いてしまった……。
「あの女神カシオペア様の御姿が、王都の御姿とは違うのですね」
「彼女は、女神ではないらしいからな……」
「女神ではない……?」
カリオスから目を離し、目の前に立つカシオペアの像を見る。
セオラ中央教会の彼女とは違い。
天使の様な羽根もなく、苦難へ立ち向かうい、民衆を庇う様に手を広げる姿でもない。少女の様な面影を残し、神に祈りを捧げるようにその手を重ね合わせている。
「北に住む人々は、カシオペアがこの地方に住んでいた少女だと思っている。この地を救い、そして災いを防ぐための旅へ出た勇者的存在だと……」
「北へですか?」
「それはわからない。熱病を治療したような伝承もあるし、魔物退治したよう記録もあるそうだ」
――教団の教えでは、女神は天界から降臨し、セリファスの先祖と子をもうけ、各地を巡る事になっている。
そして今もこの国、セオラ・ノーブルにはその子孫として、フェリーネやセイラなどいった聖女の力を持つ子孫が、国を守る役目をになっている。
二人のカシオペア、とても不思議な話だ。
「フェリーネ!」
「はい?!」
大きな声を出したカリオスは、少し怒った様な顔でこちらを見ていた。
「フェリーネ……」
ふたたび、彼女の名前を呼んだ彼は、視線外し、目の前の地面を見るようにうつむいてしまった。
「すまない……。俺はあまり、カシオペアを信じていない」
「そうですか……。それでも、カシオペア様は貴女を、見守ってらっしゃいますよ」
フェリーネはそう言った。フェリーネが『何故?』『どうして?』『嘘よ!?』そう言葉を投げ掛けると、修道女達は少し、困った顔をしてそう答えてくれた。
誰からも見守られていなければ、この世界は辛すぎる。……からなのかもしれない。
そう言われ育ってきた彼女は、いつしかそれが、彼女達の優しさだと思う様になってきた。
「かもな」
聖女の言葉を聞き、お不幸な落とし子はぶっきらぼうにそう言った。
彼の心を、フェリーネは少なからず知っている。
――そんな私だから、私の言葉で伝える事ができる、何かがあるはず。
しかし言葉は、形をとらずにサラサラと砂の様に、心の中へ落ちていく。
結局、彼女の世界は、逃げる事でしか救われなかった。
「一年前、俺はここで五年に一度と言われる南下してきた魔物の大群と戦うことになった。戦いに不馴れな民と、ギルド経由で集めた冒険者を率いて……。明日死ぬか、今日死ぬかって日々だったんだ……。だから、俺は疲れてて……」
彼はその日々を思い浮かべる様に、眉間に皺をよらせながら語っていく。
「簡易的な祭壇に、女神と少女の姿の像。二つの像が並んでいるものだから……、『ふたりの神聖な神なる者に願うのなら、苦戦続きの俺の元へも加護が届かくかもな?』 と、 少々やけっぱちな気持ちで祈った。そして俺は今ここに居て、生きてる。数の問題ではないだろうがな」
「はぁ……」
セオラ女神教団の聖女としては、多分……、肯定してはいけないだろう。
けれど、その彼の言葉を否定する事にカリオスを思う優しさはない。
優しさのない祈りは、私にとって意味がない。
「だから、フェリーネ、お前も二人の聖女に祈るのはどうだろうか? そうすれば、少し気が晴れるかもしれない……。……怒るか?」
カリオスは、大真面目にフェリーネを見ていた。心の中を覗き込む様に。
「えっ? ふふふ……、カリオスに教えをいただくとは思っていませんでした」
――荒唐無稽な考えで、もしかして怒り出す人もいるかもしれない。
「釈迦に説法というやつか?」
彼は真面目に、そう言った。
「それが……カリオスの優しさの形ですか?」
「優しさ……? お前は怒らないのか?」
「……私が怒ったら怖いですか?」
彼女は、興味本意で聞いてみた。
きっと怖くないだろう。彼女自身もそう思っている。
「それは……見てみたい。イクリオン家の女たちの前で、怒ってみせろ! 怒りは何も産み出さないと言うが、お前は怒ってもいい。いざとなったら俺が止める。しばらく、俺がお前達の保護者なのだから、わかったな」
「はい、わかりました」
彼女は呆けながら、面白く、自由な考え方だと思った。しばらく旅をしてきたが、カリオスはこんなに変わった人だなんて……。
「ふふふ、変な方ですね」
思わず、彼女そう言ってた。
そして今度は、カリオスが暫く呆ける番の様だ。
続く




