23:何を望み、こんな事をしでかしたのか? 2/2
シオンの卿の話合いは進むが、やはり元王妃の行動に対応せざるを得ない。
そんな不確かな行為の対策は立てられず、会議は進まないままだった。
そして……、今回の事件の発端であるカリオスが、彼の作戦を口にする事になる。
「それを行うならば、当初の予定通りいく。
サラテートはそんなに甘くはない。王の御前に建つ前に、彼女を亡き者とするかもしれない。
セイラの信者は多い。その信者と擬装させ、フェリーネの命を狙う。群衆に呼びかける。理由をセイラを守るためだったという事にすれば、もはや追及する者はいないはず。
もし、そこでフェリーネという証拠無くなってしまえば、貴公も手を引く。そうだろ?」
それを聞き、シオンは嬉しそうににこりと笑う。
「そういう事もあるかもしませんね。では、当初の計画通りのカリオス卿の計画を聞きましょうか。そうしなければ比較も出来ないですからね」
反論もしないシオンに面食いつつも、カリオスは話だす。
「俺の計画もふたりの計画と変わりない。変わるのは、距離と場所だ。王都から離れ、知り合いしかいない俺の領地へ、王の耳と口を呼び出す。そこで聖女だと言う事実を突きつければいい。
誘いの餌は噂だ。
聖女がライストファーの地に居るとわかれば、教会が出て来ると思うが、今まで聖女について放置や、黙認していたんだ。
こちらから必要なものだけを、むしり取る。
彼女自身の意志で、北の地まで来たと知ればもはや、フェリーネが教会本部で円満に治療を続けらないと危惧し、俺の利用しようと考える。
そこで……、フェリーネが今まで北の地で行って来た奇跡が活きる。
多くの民衆に認知された、力を持つ聖女。
すぐには認められないだろうが、審査が行われるはず、そこでまんまと聖女をただの人として俺に取られるわけにもいかないだろう。認めざるおえなくなる。
王室側も教会と一緒にか、教会からの連絡を受けてか、秘密裏には審査を行うかもしてない。けれど、聖女と答えを出さざるおえないだろう。何しろ、多くの民衆が真実を知っているのだから、イクリオン家のできるのは暗躍ぐらいだ。
一応、情報ギルドにはローリエの金で、金は積んできた。
それで、イクリオン家の横槍が入らず、現世の女神と教会が認めれば、フェリーネは聖女として、表向きの権威としては、教会、王室同等とされている権力を持つこととなる。
その成果として、まず、『いじわるな継母』を童話の如く鉄板の上で踊らせてやる。
その時、サラテートがどんな顔をするか見ものだな」
そうカリオス様は怖い事を言い切る。魔物討伐で町を一人で救った英雄は、熱に浮かれるように。
カリオスはこちらを見ることはないが、彼の握り返すフェリーネの手は痛いほどだった。フェリーネはその手を握り、胸が張り裂けそうになる。
カリオスの言葉は、無念だったあの日を思いださせる。
忘れようと思っていた。けれど、カリオスの言葉で、こんなにも胸が痛い。
自身さえ燃やし尽くしそうな、炎に心を常に焼かれながら、この計画を立ち上げたのなら……。
フェリーネは頭を少し振ると、視線をつながられた手に戻した。
……同情では、彼の炎に焼かれる事だろう。批判や止める行為が出来るほど、フェリーネは彼を理解してはいない。
――だから、いつか彼にも、彼を待つ。ただ、ただ温かな家が待っていればいい。そう願う。
「もし全てが拒否されたなら、立て籠もるのみだ。聖女のつくる結界の中に。
協力者である最北を守る。ローリエ辺境伯が守るローリエとともに。
街に、結界を張り、自然に流れ出る北の魔物たちをやり過ごす。 俺たちは何もしないだけだ。事を起す前に近隣住民には俺自身が逃げるよう伝え、強引につれだしてもいい」
「それは……、明確な反逆行為でしょう。王室と国家を相手取る危険な行為です」
シオンの顔に笑いが消え、真剣な表情になっている。
――明確な反逆行為……。
「俺は反逆する予定ない。俺の領土にいる聖女様をお守りする事に、全力を傾ける。ただそれだけだ。聖女は二人いるんだ。妹の方の聖女に、結界を張らせ、その中で呼び寄せた王都の騎士たちを配置すればいい」
「だが……、フェリーネが本物なのだろう……?」
「やはり、知っていたのか? その上で、王子の上前をかすめ取り、本物の聖女と縁を結ぼうと? そちらの方が反逆行為であり、簒奪者だな。シオン侯爵」
カリオスは口調は荒げてないが、シオンを断罪していた。
そんな彼の言葉には、威圧力があり、少々の間を置いてシオンはカリオスを見る。
「それはないよ。王の為になっている。もし、王がフェリーネの現状をしていても、サラテートがいる。彼女は貴方がご存じの通り証拠を残さない。よくある手として塔へも閉じ込めきれない。それを王が、カリオス卿にいう必要がないだろう? 彼女を注意を向けている立場ならわかる事だ」
落ち着いた口調のシオンの言葉に、歯ぎしりするようにカリオスは顔を歪ませる。
王の、前王の御心は他の誰にもわからない。
カリオスにも、そしてフェリーネにも……。
「そこで、私は私の利益を求めて動いている。
それが結果的に、フェリーネが婚姻によって、向こうの勢力側のかすめ取られる事ならないと良い。というくらいの心境だが。
そして俺がカリオス卿の話を聞く限りでは穴はないな。耳や、口程度には私がなってもいいと言っている。
だから、結界を張り引きこもるなんて馬鹿な事は考えなさるな。
貴公の考えにはフェリーネ様の命も乗っている事を気付け」
「そうです。引きこもる作戦には賛成できません。貴方の敵は、我が国セオラ・ノーブルではないはずです。もし、失敗したのなら、私からもそばにいる方から説得してみます。シオン様……、その際は出来たらミリアだけは祖父母のいる。ローリエへ連れていってあげてください。きっと辺境伯である、祖父母まで罰せられる事はないはずです」
フェリーネは決意を示し、そう二人に伝える。
聖女として仕事に励む、時と同じように……。
「わかりました。引き受けましょう。しかしフェリーネ、貴方の失踪はイクリオン家をどうするかの最後の線引きのラインになりました。あの家のこの世の謳歌を見届けるか、阻止するかの……。だから、最後まで希望をお持ちください。その為のオリビアです。存分にお使いください」
そう、空に瞬く星の様に、星を浮かべた瞳で、シオンはフェリーネに語りかける。
「それに……」
――それに……?
シオンはさも、愉快そうに笑う。
「悪い虫からも、貴女を守る事が出来ます」
「俺の領土にそんな不届き者などいない。……しかし、ちゃんとした、結婚の手続きを踏めばいいだろう?」
「それは、カリオス卿の話で?」
「俺の……?」
カリオスはさもわからないという顔をする。
「そういう話も出たが、ライストファーの地で、所詮、俺は他所者だ。そういう場合、一番手っ取り早いのはその地の者と縁をつなぐ事だ。そう意味において仲間には『俺は聖女に相応しくない』とだけ伝えたが……」
それを聞き、シオンは仕方ない人だと言いたげに笑うのだった。
「そうか。考えすぎが過ぎたようですね。しかし女性の騎士が居た方が新天地での暮らしも楽なものになるでしょう。やはり、オリビアは予定通りに置いて行きます」
「いいだろう。こちらも彼女を歓迎しよう。そして悪いのだが、ハークエルでは専属の騎士団をお持ちと聞く。拠点の防衛についてオリビア殿からもお知恵をお借りしたい」
「それについては、本人と話してくれ、こんなものでいいかな?」
「ああ、十分だ」
こうして聖女フェリーネ、ライストファーの領主カリオスと、ハークエルの領主のシオンとその騎士オリビアの秘密裏の会談が終了した。
その後、シオンは聖女を住むのにに相応しい土地であるかの確認をするために旅に同行する事は変わらなかった。
そして皆に、報告が行われる。
「必要な物があれは送ろう」
そう言うシオンの言葉を聞き「是非、いらっしゃってください」と言ったマルティーはちょっとカリオスに睨まれていた。
続く




