2:聖女である彼女の過去 (人物紹介 その1)
○フェーリネ セリファス(母の旧姓ローリエ)
17才 聖女ではあるが、不幸な星のもとに生まれヒロイン
仕事熱心、庶民派、家事が苦手
○カリオス ライストファー(母の旧姓ホークニング)
18才 去年できた町の領主で張りぼて辺境伯、不幸の星のもとに生まれ男
前王の落とし子(正式に結婚してない子供は、父のあとを継げない法律になっている)
重要事項しか話さない。困ってる時は、彼なりに世話してくれる。
○マルティー ホーネス
22才 辺境へ行く途中、カリオスに世話になってカリオスのとこにいる。
貴族の長男じゃなかったので、商人やってた。弓の使い手
○ミリア
設定上10才位だが、可能な限り幼い年齢であって欲しい。
フェリーネお姉ちゃんの前では、甘えるが、掃除とかは修道院で習ってきて優秀。
ネコ科の獣人
○セイラ
15才 フェリーネの腹違いの妹
勝ち気、
○アークエル(旧姓イクリオン)
フェリーネの継母
○サラテート イクリオン
アークエルの父の年の離れた妹、フェリーネからは、血のつながらない大おばになるらしい。元王妃、実はカリオスの継母だが、両方もう前王の籍にはいってないので、継母ではないかも?
○ライネア セリファス
フェリーネとセイラの父、男が生まれがちな聖女の家系の一人息子。
セリファス家と聖女自体が嫌い。だから、手続きすればハーレムもつくれたが、そんな実家が穢らわしいと思っている。一応、教会関係者だったが、よそで働き結構、嫌なめにあってて、見返すべくブラックな働き方をしている。家庭と、この話の後半で影か薄い。
この国最古と言われるセオラ中央教会の壁は、所々で白い塗料が剥がれ落ち、積まれた石がむき出しになっている。
今ではあまり見ることない造りの、いくつも並んだ小窓の列から、差し込む光が蝋燭の並ぶ室内に、午後の暖かな光を落としていた。
入口の大きな両開きの扉から、もっと奥の祭壇には、背に羽を生やした女神の像が、困難から誰かを守るかのような格好で立っている。
その女神の像の前に、女神を見つめる娘が一人、ほうきを持って立っていた。
筒の様な白い服に、腰ひもを巻き付けただけの服を着て、彼女の黒髪は、窓から差し込む光を受け、時折、光の加減で深い紫色にも見えている。
「誕生日か……」
彼女は小さく呟いた。
今までの習わし通りなら、成人になるまでには、彼女が違う選択をしない限り、セリファス家に生まれた聖女は、高い地位を持つ貴族との縁を繋ぐ事になっていた。
しかし今年十八歳になるフェリーネ セリファスは、聖女であるかどうかの診断さえ受けていない。
前聖女だった祖母は、自分の息子である父が帰って来てから、聖女の診断の打診が来ても、受けさせる事なくフェリーネの力を隠してきた。
成人し彼女が望めば、フェリーネを母の故郷へと逃がすために……。
◇◇◇
もともと母は今ではもうわからないが、父にとっては結婚は、望んだものではなかったようだ。
そんな、母にとっても幸せとは言い難い夫婦生活だったためか、フェリーネの母の産後の肥立ちが悪く、フェリーネが五歳の時、冷たい雪が降った翌日に亡くなった。
幼かった彼女は祖母と手をつなぎ、辺境伯爵に生を受け、多くの聖女を輩出してきたセリファス家に嫁いだにしては、寂し過ぎる母親の葬儀に出席した。
そして母を埋葬した晩、居ない母親を探す娘に父親は「死んだ者はもう戻らない。お前もいつまでも泣いているのはよせ」そう彼女を突き放す様に言い放った。
「何故、実の娘にそんな事を言えるの!? お前って子は!」
喪服のまま、フェリーネの泣く様子に途方に暮れていた祖母が、そう父へくってかかった。
「俺から、温かな心を取り上げたのは貴女ですよ」
「彼女の事を言っているの? 彼女では駄目なのよ。何度も話し合ったじゃない」
「えぇ……、決定事項を何度も言い含められました。そして俺がここの居ても、親子でののしり合うだけです」
そう言うとフェリーネの父は、前もって用意していただろう、大きな旅行鞄を手に取り、ダイニングルームを出て行こうとする。
「待ちなさい!? ライネア!」
祖母、ロトリアは、当時、フェリーネの世話をしていた修道女に彼女を預け、縋るように父の後を追って行く。
そして残されたフェリーネは、止まらない冷たい涙に頬を濡らしながら、温かなぬくもりに縋るように、サラの首へと手を回す。
「サラ……、おばあ様は、帰って来てくれるわよね?」
「大丈夫。ロトリア様は決して、フェリーネ様の元を離れませんよ」
「そうよね。サラも絶対よ」
「はい。もちろんですとも、フェリーネ様」
彼女が言ってくれたように、彼女の祖母は《・》帰って来てた。
けれど、お気に入りの赤々と燃える暖炉の前で、一人長い時間の間、考え込んでいたようだった。
◇◇
そして父が帰って来たのは、一年後。
継母のアークエルと、二歳下の腹違い妹セイラを連れて帰って来た父は、フェリーネの前で、教会に新しくつくられた屋敷へ荷物を運び込ませていた。
フェリーネは何も言わず、サラの手をきつく掴み、その光景を見ていた。
「ライネア!? 何故、フェリーネに声の一つもかけてないの!?」
「おばあ様……」
祖母は息を切らし、治療着姿のままで下まで降りて来た。その手は、怒りのあまりブルブルと震えている。
――おばあ様の、こんなに怒った声を聞くのは一年ぶり……。
口元を歪めるように笑った父を見ながら、フェリーネの心は黒いもやでいっぱいだった。
――また、私のせいでおばあ様が……。
「あぁ……、忘れていたよ。フェリーネ、こちらがアークエル、こっちが私の娘のセイラだ」
「娘……」
フェリーネは言葉を確かめるように、父と、娘と言われたセイラの間を、視線を何度も往復させる。小さなくまのぬいぐるみを持った彼女は、ふんわりと可愛らしいドレスを着て、母親に手を引かれこちらを見ている。
「ああ、そうだよ。それにロトリア様、セイラにもちゃんと貴女と同じ、聖女の血が流れていましたよ。嘘だと思うなら、セオラ大通り教会に問い合わせるといいさ」
「そういう事ではないのよ、ライネア……」
祖母は悲痛な表情で、父に向って首を振る。しかし父は表情を変えず、祖母を見ていた。
「話はやはり平行線だね。では、挨拶はここらへんでいいかな。俺はもう疲れた」
そう言うと、父はフェリーネたちに背を向けた。
「「ごきげんよう」」
美しく着飾った、プラチナの髪、青い瞳の母と娘が、日傘をさして挨拶をする。
「待ちなさい! そういうことじゃないのよ。ライネア!?」
「ロトリア様、挨拶したし、聖女の血と力を受け継いだセイラを、拒める権利はロトリア様にもないのですよ。ましてや、ロトリア様だけが見たと言う。一度きりの夢のお告げに、いったい何の意味があるというのです……」
悔しさを、なんとか心の内に閉じ込めるように、父は言う。
そして父の家族は、言い淀む祖母を置き去りして、彼らの家へと入って行った。
続く




