それぞれの影響
オトハもソウもBBQのセッティングをしていた。まさにBBQという鉄串と、その他、野菜やらキノコを網に乗せて火で炙っている。なかなかに美味しそうな匂いが漂っている。周辺の匂いに釣られて知恵ある魔物なら出てきそうだ。
「これギブリに作ってもらったんだ」ソウが思い出話のように言う。
「串なんてよく作ってくれたな」
持ち手と良い、熱くならないような工夫といい、とても噛り付きやすい。
「形状説明したら『長い手投げナイフか?』ってすぐに20本作ってくれた」
「その後、料理器具と判明したら怒られたんだけどね」
オトハが何でもないことのように言うが、明らかにソウは申し訳なさそうだ。わかりやすく頭がうな垂れた。
ちょっと怒られた後で、ギブリの店に行きにくかったらしい。今回の素材を持っていけば、ギブリならすぐに仲直りできることを説明する。「理由?俺なんて耳引っ張られたことあるから」と漏らすと、「なにをしたの」とオトハにジト目をされた。魔剣2刀流で構えたとは流石に言えない・・・。口は災いのもとである。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
腹ごしらいも終わり、BBQ臭いままギブリの店にいる。
ギブリに4人の武器のメンテナンスをお願いすると、俺とカナデの武器から視線を外さずに言う。
「おまえら、何と戦った?特にリヒト」
「・・・」答えずにカナデの顔を見ると目が合った。
「ごめんなさい。ミニ・ドラゴンと戦った」カナデが言う。
誰も声すら出さない。重たい沈黙だ。
今日は沈黙することが多い日だな、とぼんやり天井を見ながら考える。答えもないのに、あくまで『僕は考え事してますよ』というアピールだけの動作である。俺はドラゴンとは直接刀を交わってないぞ、デクネスガードとは斬り合ったとか言い訳が浮かぶ。
「リヒト、おまえはほんっとバカだな」
「俺はデクネスガードと斬り合っただけだぞ」
俺の発言を無視し、ギブリはカウンターの奥に入った。
戻ってきたときに俺に小さな物を投げてきた。
「ん、これってもしかして鍔?」
「あぁ、変えると刀の特性変わるんだ」
そう言ったギブリは、既にカナデの弓の方に注意がいっている。
「なにそのロマン武器!!!」
俺のテンションはだだ上がりである。だだだだだだだ上がりだ!!横でソウの目も輝いている。うわぁ〜、すぐに試したい。テンションが上がりすぎていて鍔を上手く変更できない俺に、軽くゲンコツを食らわせたギブリが洗練された手つきで鍔を変える。
「なぁ、ギブリ」
「あぁ、その鍔だけ渡しとく」
やっぱりあるんだね!!!他も期待して良いんだね。鍔を変えた愛刀のルックスも中々に良い。鞘が藍色なだけに鍔が銀色なのもシックで素晴らしい。すぐに試したいが「メンテナンスをする」とギブリが4人の武器をすべて回収する。
回収したギブリは、すぐに閉店の看板を掲げて俺たちを追い出した。なんかもう全自動な動きで、考え事しながら俺たちを押し出すギブリに思わず吹いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「追い出された客でーす」
「なんだもう帰ってきたのか」イヴォーグはこっちを見ずに言う。
弟子のクーデは不在らしく、イヴォーグだけがカウンター横の椅子にかけていた。
「あのさ、先に謝るから」
「・・・許すと思うか?」
「多分、しばらくはダメだと思う」
マジックポーチに手を入れて目当ての品を探す。
「だろうな、良い素材は?」
「ある。それ見て許すか決めて」
ここまで説明したら義理を通しただろう、そう思いローズから預かった巾着袋を取り出す。
テーブルの上に巾着袋を奥もイヴォーグの反応は無い。
「誰にあった?」いつになく真剣な顔をしている。
「ローズって超怖い魔法使い」カナデが余計なことを言う。
イヴォーグは何も言わずに俺の顔を見ている。目力が半端なく、魔法をそのまま使いそうなほど集中しているように見える。なんかオデコが熱い気がする、た、たぶん気のせいだよね?
ミニ・ドラゴンの爪と皮をテーブルに置く。
「これをお納めください」俺はお辞儀をするタイミングでカナデも合わせる。偉いぞ、カナデ!!
それでも暫く俺を見ていたが、爪と皮に視線を移してからは少し機嫌も戻ったのか会話も成立した。「何が必要だ?」と言われたので、カナデの鎧とブーツ、できれば籠手もお願いした。不承不承にイヴォーグは頷き、「7日くれ」と言ってカウンター内に入っていった。当然、店の関係者はいなくなったので、俺たちも自主的に店を出る。お宝もいっぱい置いてあるのにいいのだろうか?といつも思う。
気になったことがある。
イヴォーグは俺たちが帰るまで巾着袋のことを完璧に無視していた。
「あれ、何入ってるんだろうねぇ」カナデが後ろに腕を組みながら言う。
「ミニ・ドラゴンの爪と皮だったの?」オトハが改めて素材のことを確認する。
「うん。それにしても私の防具でよかったの?」
「カナデが殆ど倒したような物だからね」俺はトドメをさしただけだ。
俺の発言に驚いたのか、オトハは「ほんとうにカナデは強くなったんだね」と漏らす。その表情は少し嬉しそうでもあるが、悲しそうにも見えた。ソウもレベルアップしているみたいだし、自分だけ置いてかれるような心境になるかもしれない。
ずっと無言だったソウが言う。
「なぁ、ドラゴンソードとか出来たのでは?」
「おまえ、それ早く言えよぉおおお!!」
思わず涙が出そうになった。俺の大声が街に響き、通行人たちを驚かせた。




