2回目の応対室とシワシワの魔女
ギルドの応対室でヴェニチが何度目かのため息を吐く。
間違いなく1日の収穫として認められたのだが、まず、カナデのランクアップで問題が発生した。CランクからAランクになった者はいないらしい・・・というのも、Aランクに行くにはBランク同士戦う必要がある。俺の場合、騙されていつの間にか戦う羽目になっていたアレである。
「まぁ、私の目標はランクアップじゃないから」カナデはドライである。
「じゃぁ、Bランクでいいのか?」ヴェニチがカナデを見据える。
「うん、問題ないよ。むしろありがと」カナデは微笑んでいた。
次の問題はボス部屋のリザード・ネイチャーの魔石だった。判定機にかけたところ、「リザード・ネイチャー改」と出たのだ。そんな判定結果はこれまでにはなく、魔石として活用ができるかも分からないというのがヴェニチの見解だ。
「じゃぁ、それは武器の素材にしよう」
「あっ、それいいね」カナデも賛同した。
「ちょ!それはダメ。ギルドも良質な魔石は欲しい」
「いや、それならエクモカから買えばいいじゃん」
エクモカは完全に居眠りをしていて、話を振られてキョドッていた。そんなキャラじゃ無かったよな?最初の頃、明らかにできる女風だったのに2日目でこれか・・・。
「それじゃぁ、あとは換金だけね」
「昨日の分も含めて大丈夫か?」
「話を通しておくから夕方に来て。明日も潜るの?」
「いや、明日は潜らない」
「えっ、リヒト潜ろうよ。私もボスと戦いたい」
「1回、鍛錬日と休息日を取ろう」
「げぇ、鍛錬やだぁ」カナデの表情が一気に曇る。
10階層を繰り返していると、そのうちに周りのパーティーから苦情が来てもおかしくない。ボスを倒したいパーティーだっているのに、俺たちだけで独占するわけにもいかないだろう。この街にはまだAランク相当は他にもいるのだから。
「まっ、武器屋とか防具屋巡りもしよう」
「おっ、デートならいいよぉ」カナデも現金である。
今回の換金が終わると、カナデも結構な金額を入手することになる。
「あと、忘れがちだけれど、エクモカの分け前も今回あるからね」
「いや、今回だけはいいや。戦闘経験値で十分だ」手をヒラヒラさせながら答えた。
ほんとうに固辞されたので、俺はマジックバックからエクモカへの報酬(初日分)を小テーブルにすべて置いた。その量にヴェニチが軽く頭を左右に振っていた。まるで何かを振り払うような動作だった。
「んじゃ、また〜」カナデが席を立つ。
「ところで、サードリアのギルマスって誰なの?」
「へっ・・・私だけど?」ヴェニチが今更って顔をしている。
「エクモカさん?」
「知らないで一緒に行動してた方がビックリだ」エクモカがドヤ顔だ。
「いや、昨日がギルドに来たの初めてだったから」
「まぁ、いいじゃん」カナデに肩を叩かれた。
なんかカナデの俺に対する扱いが雑である。
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カナデと二人で冒険者ギルドを出て、目ぼしい武器屋と防具屋がないか見回る。アイルランダーの時は、入った瞬間の雰囲気で勘が働き、うまいことギルドとイヴォーグのお店を見つけることができた。
そんなことを考えながら歩いていると雰囲気のある店が見つかった。
ただ、道具屋である。
佇まいが怪しく、建物も古びていた。それなのに外から覗いて確認できたアイテムが「何か掘り出し物あるかもよ?」と訴えていた。こういうのに俺は非常に弱く、嫌がるカナデを前に押し出し店に入った。レディーファーストである。
「ちわー」と声をかけるも反応は無い。
一応、サーチには反応があるんだけれどな。
「リヒト、だれもいないみたいだよ」
「いや、いるよ」即答するとカウンターから人が出て来た。
「おっ、随分と若いのが来たねぇ」
グシッと鼻を掻き、シシシと笑っていた。いかにもと言う感じの外見がシワシワの魔女である。
「なにをお探しだい?」
「いや、冷やかしでは無いのだが、妙に惹かれて。少し店の中を見てもいいか?」
「どうぞどうぞ。大したモノはありませんけどねぇ」
長く伸びた緑色の爪が目についた。
あまり人の出入りがないのか、店に置かれた素材はホコリを被っているものが多かった。そして店の棚に陳列された物とカウンターの中の品質に差がありすぎる。それをシワシワ魔女に言うと「そうですかねぇ?」とはぐらかされた。
どうも興味が向かない客は相手にしない様子だった。
「今度来るときは面白いもの持って来る」と伝えて店を出る。カナデから「あんなおっかない人と普通に話せるのが信じられない」と苦情が来た。それで店の中で一言も話さなかったわけだ、と納得した。シワシワ魔女は静かな威圧をずっと俺たちにかけていた。




