Let's ダンジョン
朝食をカナデと食べていると、案内してくれたエクモカが給仕をしてくれた。
どうもエクモカの動きが気になる。なんだか滑らかすぎる。
「視姦はダメだぞ」とカナデに注意を受けた。
「いや、エクモカの動きって冒険者じゃね?」と視線をエクモカからズラさずに言う。
カナデは俺の意図を組んでくれただろう。
「ウエストがキュッとなっててスタイル良いし、あのプリ尻はガン見したくなる」
違うから!!びっくりするくらい通じていない。
「あれくらいの動きってBランク相当じゃないかなぁ」
「ふーん、そういうもんかね。私には分からん」
近くにエクモカが来たので声をかける。
「朝食美味しい!!この宿を教えてくれてありがとう」
「まぁ、仕方なく?」目線をずらしエクモカが言う。
エクモカは身長もカナデと変わらず170cmは優に越えていて俺より大きい。手足が長く、前世のモデルのようにスラッとしている。顔も珍しく薄い系統だが、髪も癖っ毛のあるブラウンで美人だと思う。
「そんなに見るな」
「あぁ、ごめん。エクモカってBランク?」
正直に思ったことを聞くと、エクモカは不機嫌そうに顔を歪めた。
「ごめんっ!あのさ俺ら2人でダンジョン行こうと思ってて、情報を売って欲しいと思ったんだ」
すぐに去りそうなエクモカを引き留めるため、早口で一気に話した。朝から俺は頑張っている。例え、視姦する痴漢みたいな扱いを受けようとも。
「2人でいくの?」ちょっと驚いた顔をする。
「うん、2人で。一緒に行かない?」カナデは全く空気を読まない。
「なに言ってるのよ!行くわけないでしょ」
「何階層まで行ったの?」俺の中では冒険者確定である。
「あのさ・・面倒くさい」
「2人で行くとしたら注意する点は?」
「宿の宿泊費を滞納しないことだね」
「それだけはしない」
俺はポーチから金貨1枚を出してエクモカに渡す。これで8泊分の宿泊費にはなる。
「マジで初めてなんだ。少しでも良いから情報が欲しい」
「それならギルドに行きなさい。信頼性の高いものを教えてくれるから」
「あの喧騒溢れる人垣を越えて受付に辿り着けん」
大真面目に答えたのになぜかエクモカに笑われる。『笑わせる』と『笑われる』の致命的な点は主体がどこかにあるかだと思う。少なくとも意図して『笑わせる』は少しの達成感を約束してくれるが、『笑われる』は喪失感しかない。
「傭兵としてなら雇われてもいいわよ。高いけど」
「あぁ、エクモカって傭兵だったのか、ぜひお願いする」
「あのさ価格聞こうよ・・・1日金貨1枚よ」
「んじゃ、5日間ね。よろしく」
そう言って俺は金貨5枚をエクモカに渡すと笑い出した。あぁ、これはイヴォーグの時にやったやつだと悟る。
「だって身元バレて宿まで教えてくれるんだ、先に払わないとこっちが信頼を得られない」
俺の思いを伝えると余計に笑った。あっ、実力の確認してないや。でも体捌きでエクモカのレベルは分かる。カナデよりも実力は明らかに上だし、経験面でもダンジョンを知っているだけで頼りになるだろう。
「こんな勧誘初めてだわ」
「病みつきになるかもよ」
そう言うとカナデに蹴飛ばされた。なぜかは不明だが、カナデは明後日の方向を見ている。
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そうして街を出てすぐのダンジョンに入る。
隊列はエクモカ、俺、カナデの隊列である。
エクモカに歩きながらサードリアのダンジョン説明を聞いた。今のところ最下層は不明となっていて、1番進んでいるのはAランクパーティーの”銀狐の尾”でギルド情報では18階層まで進んでいるとのこと。ただ、これも「18階層までは確実に行っている」という情報で、実際にはもっと最深部まで進んでいることが往々にしてあるらしい。命がけの情報を易々と提供するほど冒険者もお人好しではない。一攫千金や名誉を競い、ダンジョンに入っている。
「で、リヒト達は『強くなりたくて』が理由なのか」呆れたエクモカが話す。
「あっ、もうすぐ敵にあうぞ、その角曲がったらすぐ」と声をかける。
「なぁ、ここまで楽チンなダンジョン攻略PTに入ったことないぞ」
エクモカは2階層の敵を片手剣で払いながら歩を止めずに進む。ダンジョンではドロップ品が落ちるので解体の手間がなく、非常に効率的だと俺は思う。エクモカも俺も2階層レベルはCランク未満の敵ばかりで倒しても魔石すら拾わない。
気になることは、後ろでカナデが俊敏に拾いまくっていることくらいだ。
おまえ、そんなに拾ったらマジックバックがバレるだろ!!
いまのところダンジョンは広い洞窟のような作りになっている。このダンジョンでは確認されていないが、他のダンジョンだと地形どころか風景すら変わるところもあるらしい。前世ならびっくりな仕様である。
ちなみにエクモカは戦士で盾持ちの前衛職だった。相手の剣先の軌道を変え、自分に常に有利な状況を作っていくのがうまい。ランクについて尋ねると「まぁ、リヒトのご想像に任せる」と笑いながら返って来た。初めて笑った顔をみたが目が線になっていて非常に魅力的であった。俺のランクを聞かれたので教えると「ゲッ!」って驚いていた、俺のことをどう見ていたのかは不明である。
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「あのさこの短時間で5階層まで来るって普通ないよ」
俺が出した昼ごはんを食べながらエクモカが言う。今は安全地帯と呼ばれる魔物がこないエリアにいる。他のパーティーもご飯を食べているのだが、やけにこっちに視線を向けられている。
「でも余裕だろ?」
「うん、もっと強い相手じゃないと」カナデも俺に賛同してくれる。
「リヒトもそうだが、カナデがCランクとか考えられないな」
エクモカが汁物を飲みながら言う。多分、カナデが暇すぎて前衛を交代した時の戦闘を思い出したのだろう。二刀流でCランクの魔物相手に無双していたからなぁ。あれは俺もちょっとどうかと思う。
「あと、ご飯が普通なのが異常だし、2人組とかあり得ない」
「3人組になったから俺らは助かってる」
「そうそう、いなかったら道も分からないよ」
エクモカは優秀で最短距離で5階層まで来た・・・と思う。少なくとも俺の隠密セットのマップを確認していたが、余計な道は通っていない。カナデもなんとなく察知している雰囲気だった。さすがハンター。
「で、次から6階層だけれど、ここからはBランクも出て来る」
「おぉ、やっとだ」
「お互いに連携が必要になってくると思う。先に打ち合わせをしないか?」
エクモカは気を使いながら話す。そりゃお互いに手の内を晒せ、と言っているのと同義なのだから当然なのだが、命をかけてダンジョンに入っているのだから言わない理由もない。
「6階層に入ったら、まず俺とカナデの戦い方を見てくれ」
「そうそう、その方が早い」
カナデはまだご飯を終わっていない。結構な量を食べているのだが・・・。
「分かった。それ次第で向かう階層を決めよう」
6階層に入り、早速サーチに4体の魔物が引っかかった。「俺が行く」と2人に告げ、小ホールみたいな場所で遭遇した。相手はブルーオーク2体、グリーンオーク2体で当然こちらに気がついている。
『ファイアーアロー』を4体に使う
避けたブルーオーク2体に刀を振るう
すぐにドロップ品だけが残る
「こんな感じだ」と後ろを振返ると、エクモカが呆然としていた。




