"フィッターの午睡"とダンジョン
エクモカの案内でついたのは『フィッターの午睡』という宿だった。「オヤジ、お客さん2名」と素っ気なく紹介され、宿泊の手続きにうつる。エクモカはそのままカウンターの中に入っていった。
料金は1泊銀貨8枚とのこと。看板娘のメイプルがいる”ピコ鳥の休息”と同じ価格であった。えぇ、2名1部屋ですからね。
「なぁ、別々の部屋にしないか?」カナデに提案する。
「強い冒険者がいるのに私をひとりにするの?」
俺より長身でクネクネするカナデをジト目で見る。さすがに恥ずかしくなったのか、「今日だけでもお願い」と本気で言われたので諦める。これが前世ならいくらカナデでも一緒の部屋に泊まるなんてことにはならないだろう。多分、その場合は俺の理性はもたなかったはずだ。
やっぱり9歳の思春期だからなぁ。(トオイメ)
どうもその辺りがルイのときも関係しているような気がしてならない。まぁ、そのうち成長するだろう、なぜなら冒険を始めた頃と比較しても体が成長しているからだ。
案内された部屋は、入るとベットが2つ左右に並んでいて、奥には小さなテーブルと椅子が2脚置かれていた。室内は小ぎれいにされていて、荷物置き場なのか、床の一部にはゴザのような敷物があった。窓は小さいものの、空きっぱなしで、矢文とか飛んできそうだと思った。
カナデと一緒なのをソウとオトハに伝えてなかった。カナデにその事を確認すると、「私がレターで2人に送ってるから大丈夫」とドヤ顔で返してきた。どのタイミングで送ったのかは謎だ。パーティー組む気満々だったとか知りたくもない。
そして、お待ちかねの夕食である。味はびっくりのマスターレベルであった。好みによっては超えていると感じる人もいるかもしれない。カナデは「おおぉ、リヒトと一緒に行動すると飯に困らない」と怪しい独り言を漏らしていた。お茶を啜っているときに不穏な発言である。
味もそうだけれど、食堂に集まっている冒険者もBランクパーティーとかCランクが多い。値段もそこそこするから、このレベルの料金を日々払える経済力があると、味も保証されているのかもしれない。ただ、他の部屋は満室だったから俺たちはラッキーだった。そう・・・不本意だがしばらくカナデと一緒の部屋が続くことが決まった。
食堂は悪くない程度の喧騒で、他の冒険者の話も伝え漏れてくる。なかには「Aランク魔術師のクゥーエン(クーウェン)がどっかの冒険者に吹っ飛ばされた」とかの話題があった。その話をしている冒険者に銀貨を渡し、もう少し情報を聞きたいと話しかけると相手は驚いていたが悪い顔で話してくれた。
どうもクーウェン(クゥーエン)と呼ばれる魔術師は、他のパーティーの助っ人として入ることが多いらしい。いわゆる傭兵みたいなもので、本人の性格もあって1つのパーティーに安定して所属できないそうだ。まぁ、街中でファイヤーアローぶっ放すヤツだから即同意である。
あとギルドの空いている時間帯について確認すると、陽の昇る前(開いているらしい)か昼前になるらしい。帰りのピークは傾く前らしく、日が沈む頃には落ち着いているのも教えてもらった。いろいろ教えてくれてお礼を言うと、「アイルランダーの『木剣ダークエル』だよな?」と言われて驚いた。
相手の名前はケヴィンといい、Cランクパーティーのリーダーで、少し前までアイルランダーで活動していたとのこと。俺らもダンジョンに入ったのは少し前からだと話してくれた。現在は5階を探索しているらしい。ダンジョンのことはよく分からないので、テキトウに流していた。
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部屋に戻り、カナデと明日からの行動について確認する。ギルドには昼前に行くことにし、それまでは情報収集や街の様子を見ることにする。武器屋と防具屋も巡ることが決まった。
あと、朝の訓練についてはカナデから『私も参加する』と意外な提案があった。アイルランダーでは最後まで寝てたよな?とか思うのだが、確かに、移動中も朝練を一緒にしていたので本気なのかもしれない。
そして、『ステータス』をダンジョンのことを考えて確認する。
名前:リヒト・ヴァーズ 性別:男
種族:ダークエルフ
職業:冒険者(Aランク)、冒険者の指導係
適性:火魔法適性、水魔法適性、光魔法適性、時空魔法適性、魔力操作適性、
片手剣技術、鍛治技術、隠密技術、魔闘気適性、身軽
個性:金髪、用心深い、運が良い、モテ期(初期)
スキル:火魔法レベル6、水魔法レベル3、光魔法レベル2、時空魔法レベル1、
片手剣レベル4、隠密レベル4、身軽レベル3、魔闘気レベル3
加護:ほんの気持ち程度見守っている
・ ・ ・ ・ ・
名前:カナデ 性別:女
種族:獣人族<オオカミ>
職業:ハンター、冒険者(Cランク)
適性:狩人技術、風魔法適性、魔闘気適性、罠技術、弓技術、隠密技術、健康、幸運
スキル:瞬間強化、罠レベル1、隠密レベル2、風魔法レベル3、魔闘気レベル1
弓レベル2、二刀流レベル1
自分のことは実感していて、北の森でもギルド設定のBランクまでなら余裕になっていた。
・・・カナデのステータスにはかなり驚かされた。これBランクは確定で、下手したらAに届くのでは?というくらいレベルアップしていた。う〜ん、俺より飛躍的に成長している気がする。
そのことを本人に言うと、「デヘヘヘ、やるでしょ?」と照れていた。ケモミミもピコピコしていて不覚にも可愛いと思ってしまった。いや、客観的にみて十分にカナデは可愛いのだが、俺からすると安定のマイペースである。
「となると、余計に気になるんだがカナデの目標はなんだ?」
髪に櫛を通していたカナデが振り返った。




