ダンジョン集落サードリア
3日目に予定通りサードリアに到着した。イメージしていた集落よりも街が整っていることに驚いた。防壁こそないものの、街としてはきっちりと建物があり、街並みも整っていた。
「結構、きちんとした街だなぁ」
「集落をイメージしてたし、ならず者が座ってたむろしてると思ってた」
どちらも似たようなイメージを持っていたようである。街に入るときに税金は銀貨1枚だった。この価格がどのように決まるのかは不明だが、俺の冒険者タグをみた門番は絶句していた。それほどAランク冒険者は稀有な存在なんだと思う。連れがCランク冒険者の獣人のため、門番はすぐに正気に戻り、ありきたりの対応をしていた。ちなみに、二人ともDランク以上のため税金は免除されている。
「とりあえず、宿か」
「ボロくてもいいから美味しい所を希望」
カナデの発言を無視しとりあえず宿を探す。前はルイに教わったし・・・冒険者ギルドで聞けばいいか、と思いいだす。
冒険者ギルドに行く途中、案の定というべきか絡まれた。自分のことだけに忘れがちだが、見目麗しいダークエルフとスタイルが良いカナデである。多少のやっかみや冷やかし程度なら無視できるものの、今回はきちんとガラの悪いオッさん3人が立ちはだかったのだ。
「なんのよう?」もう小指で耳ほじりながら聞く。
「すまん、兄さん。助けてくれ」真ん中のオッさんが言う。
「はぁ?!」
オッさん達の話では、ダンジョンで仲間がひとり置き去りになったらしく、それを助けてくれる人を探しているとのこと。カナデと目を合わせたが、すぐに意思疎通を確認できた。
オッさん達に丁重な対応させていただいた。
だって、建物の後ろに1人いるんだもん。
途中、カナデが調子にのって「見つけたら報酬は?」と聞くと「金貨1枚!!」とオッさんが即答したため大変だった。主にカナデを止めることに。というか、カナデは本当に報酬をもらうつもりだったらしく、オッさん達が態度を豹変したところで威圧を使った。
いつの間に覚えたんだよ。
Cランク1人の威圧に耐えられないDランクパーティーってどうなんだ?と思ったが、まだ街に来たばかりなのに出禁になるような真似はするなとカナデを止める。まじでカナデは異世界に元からいたかのような振る舞いだ。
「カナデ、おまえ、ソウとオトハといる時よりキレやすくない?」
「リヒトが止めてくれるからね」興味は街並みにあるらしく、こちらを見ない。
そんなことがありつつ、冒険者ギルドに入ったが盛況だった。アイルランダーのピーク時でもここまで喧騒はないと思う。受付も混み合っていてまったく行く気にならない。明日、早朝に冒険者ギルドに行くことで落ち着いた。
そうなると宿の確保になるのだが、情報が足りなすぎる。俺は治安は正直どうでもよくて、魔族領ほど警戒する必要がないのが理由である。察知できる範囲で俺くらいがほぼいない。『ほぼいない』というのは、それっぽいのがチラホラ感じるからである。ダンジョン目的なので、できるだけ遭遇しないようにしたいのだが、そういう人が泊まっている宿ほど質が良い。
その辺の考えをカナデに伝えると「行ってから考えよう」という冒険者のど真ん中な意見を言うので従うことにした。そう、なんか俺ひとりだけ考えるのが馬鹿らしくなってきたのである。
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「やっぱり考えれば良かった・・・」
「まぁ、仕方がなかったんじゃない?」
衛兵にこれまでの事情を説明しながらしみじみ思った。
話は少し遡る。
俺たちは良さそうな宿に着き、空きの状況を確認していると、俺と同程度の強さの冒険者にフロントで遭遇した。俺は無視を決め込んでいたのだが、その態度が気に食わなかったようで相手は「おまえ、名前は?」といきなりキレ気味に話しかけられた。そうなると温厚を地で行く俺である。
面倒なので無視した。
何回か話しかけられ、あまりに面倒なので振向くとフードを被った女魔術師だった。声が低く、ずっと男だと思っていた。それが表情に出ていたのか「おまえ、私が男だと思ってただろ?」とニヤリと笑っている。ローブに半分隠れた顔は斜めに傷跡が残っているものの、ローブから見える髪は茶色で艶がいい。年齢不詳である。
「それで何の用だ?」
「そのローブ、金貨500枚で譲ってくれ」
「やだ」すぐにフロントのオヤジに顔を向けた。
フロントのオヤジは驚いていないで宿の手続きを早くしてほしい。そう考えていると、オヤジが震えだし、「あんた、早く謝るんだ」と俺に迫る。いや、単純に申出を断っただけだろ。
「おい、ダークエルフ。貴様は死ね」
殺気を感じた。まじかよ、ここ街中だぞ?カナデを抱えて宿を飛び出す。案外、重たいなカナデ。
「おまえさぁ、初対面でしかも街中でなんで殺気放つのよ?」
「やさしいねぇ、ぼっちゃん。彼女も抱えて大変だろ」
「彼女じゃねぇっし!!」言い返すと『ファイヤーアロー』が飛んできた。
まじか・・・。
「なぁ、カナデ。ちょっと邪魔にならないところに移動しておけ」
「分かった。ケント気をつけて」カナデは風魔法と瞬間強化を使って空中を移動する。
「ほぉ・・・あまり見ない移動方法だね」
「おまえ、マジでありえねぇ」
相手の『ファイヤーアロー』を自分の『ファイヤーアロー』で相殺するつもりが、俺の方が威力が高く、そのまま突き抜けてる。お互いに無詠唱だ。
「えっ」一瞬の動揺、魔法使いが避ける。ローブの端に当たるのが見えた。
その隙に間合いを詰めて蹴り上げる。魔法使いは腕をクロスさせ、蹴り上げを止めようとするも俺の膂力が勝る。大したダメージは入っていないだろうが建物の壁にぶつかった。
「次やったら激オコだからな」ちょっとやりすぎたと反省する。
で、街中でそんなことをしていると衛兵が当然来るわけで、新参者の俺らが詰問を受けることになったわけだ。向こうはAランクで街の発展に寄与されているから少ない問答で終わったようだ。ちなみに俺もAランクのタグを見せたのだが、「本物かどうかアイルランダーの冒険者ギルドに確認する」とのこと。あまり時間がかかるようなら躊躇なく脱走しようと思う。理不尽な応対に従うほど利口ではない。
「おまえら、確認ができた。出ていいぞ」
「事実が確認できて、『出ていいぞ』は無いんじゃないか?向こうから喧嘩を売ってきたんだぞ?」流石に腹が立ってきた。
「ちょ、リヒト!!でるよ」なぜか背中をカナデに蹴られる。
「衛兵に威圧つかったら流石にアウトじゃん?」
「使ってた?」本当に心外だったので確認する。
「いや、ちょっと漏れ始めてた」
冷静に考えるとカナデにファイヤアローを打たれたのがキッカケだと思う。こういうのはソロの時にはなかったなぁ。冷静さを保たないと身を滅ぼす。
さすがに揉めた宿はもう行く気にならないので、美味しい露店のオススメで宿を決める方針にした。結果、カナデと一致したのは、カーデンボークの燻製という串肉を売っていたところで、妙齢な女性に話を聞いたところ、「おまえらカップルは他行け」と自分が宿の関係者であることを教えてくれた。
態度こそ冷たいようだが、料理は手を抜かずに売っていたので、カナデの顔を覗くと目でオッケーが返ってきた。「お姉さん、よろしくお願いします」と頭を下げると、露店が終わってから案内されることになった。若干のツンデレ系?なエクモカに連れられ、宿に向かった。




