冒険者の出発
明日3月3日、第3回ひとり更新祭を行います。
何回か更新されますのでタイムリーにお付き合い頂ければ幸い。
あと、評価、ブックマ(ブクマ?)、レビュー等々をお願いします。
朝、剣の鍛錬に少しだけ時間をあてて、残りは昨日もらった回復魔法と光魔法の報告書に目を通す。まだ霧がかった街は一部の人間しか目覚めていない。少しずつ霧が晴れて見渡せるように刻々と変化する景色もこの街の魅力だと思う。
壊れかけていたテラス席のベンチに腰をかける。
まずは回復魔法だが、『ヒール』は初級であり、上級でもあるとのこと。込める魔力量に応じた結果(回復)が付いてくるものらしい。なので部位欠損でも『ヒール』の魔力を込めれば復活する可能性はある。ただし、部位欠損は早めに措置しないと戻らない、という恐ろしい検証がなされていた。医療倫理とか概念とか制限がないのね、やっぱり。
同じく『リカバ』が状態異常を治す魔法で、魔力量に応じた治癒になるとのこと。
『ヒール』&『リカバ』で死者復活を検証したものでは、一部適用とされた者が出たが本当に生き返ったかは不明だと書かれてあった。まったくもって回復魔法の報告書の癖に、精神に深いダメージを与える内容になっている。
俺のイメージだと甦りだと『リバス』とかそういう魔法なんじゃないかと思う。怖いので詠唱や検証なんて絶対にしない。時空系で干からびた果物がピカピカに戻った時の違和感を思い出す。
その他は支援系で、活性化が継続する『リジュネット』、アンデッドに効く『スパーダ』と記されていた。ちなみに詠唱文も俺は目を通すが覚えられないというか、いろいろな感情が湧き出て唱えられないのでイメージ付だけしている。
まぁ、『ヒール』、『リカバ』を覚えればほぼ終了というのが分かったので、後でオトハに渡すことにする。
そして、光魔法だが報告書の枚数が今までで一番長かった。まず、光魔法の経緯から始まったので後回しにして、魔法効果と魔法名の一覧に目を通す。
『ライアロウ』が光の矢でそのままな感じ、『ライガード』が光の盾・・・これ面白いかも。『ライトロード』が対魔の道を確保、ってこれ逃走するときに使えるのか?『ホーリィエリア』で対魔エリアの構築・・・なんか覚えるの面倒だなぁと思っていたところで、『ラ・イド』対象者の俊敏性を飛躍的に上げるという便利魔法が出て来た。
そんなことを考えながらページを捲っていた。
『ラ・ウルティ』・・・術者の生命と引き換えに魔王に極大ダメージを与える。
・・・『ラ・ウルティ』ってこれいらなくね?ってか、場所とか何も書いていないから見えなくても魔王に届くの?誰に聞けばいいの?ってか使いたくもねぇし載せるな!!!
あと、光魔法は回復魔法の上位互換で、闇魔法は黒魔法の上位互換のようだ。闇とか黒とかどんな魔法よ?っていう感想しかない。
その後、光魔法はざっと流し読みしてマジックバックにしまった。もうマジックポーチは帯剣ベルトに括りつけて、マジックバックは躊躇せずに使用することにした。だってAランクになったから。ルイに昨晩聞いたが、アイルランダーにいるAランクは俺しか今いないらしい(ケイトはどうした?とか言えない)。グーム公国でも有数な都市なのにAランクが殆どいないってのはどうなんだろうと思うが、実際にはケイトみたいに隠れAランクだったり、SSランクとかがいるのだと思う。じゃなきゃ、俺の刀はどうしたのか?という話だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝食を食べに食堂に降りるとオトハも珍しく居たので回復魔法の報告書を渡す。
「これ貰っていいの?」
「あぁ、シンプルだし読んだから。あと、オトハが読み終わったらダライに渡してくれ」
「ダライさん、回復魔法使えるの?」
「いや、知らん」明らかに口が滑った。
ジト目でオトハが俺を見ていたが、長い溜息とともに諦めたようだ。
「ほんとありがとう。リヒトのおかげで今日がある」
「まぁ、それほどでも?」オトハは冷静な分、誤魔化しが効かない。
もし、スキルに『看破』とかあったら持ってそうだ。・・・それか『話術』とか。
俺の朝食時間に合わせたのだから話があるんだろう。
「オトハはどうするんだ?」
「うん、迷っててる。パーティを出るか、暫く続けるか」
「俺の希望だけ言うと、もう少し続けて欲しいかなぁ」
「どうして?」
「だって、回復魔法がいないとソウとカナデのカバーが無いだろ?あと、今度はオトハが焦っているように見える。てきとうに言うけど、水魔法の威力あがったからだろ?」
「・・・たぶん、焦っているかもしれない」食後のお茶を飲みながらオトハが言う。
「まぁ、好きに生きるのが大事だと思う。オトハはもっと楽したほうがいいぞ」
「カナデみたいに?」
「カナデみたいに」
そこは二人とも一致していた。本人は悩んでいるのだろうけれども、どうしても他の人と比較したら軽く見られる。そういう性質がカナデにはある。ソウが重いのとは正反対だ。だからこそ最初に3人に会った時、カナデの異変にすぐ気がついたというのもある。
「まっ、ひとそれぞれも含めてだね」
「ダークエルフと獣人だからね」
「そそ」
そうやって話していると、汗をかいたソウも食堂に来て一緒に食事をした。ソウから珍しく模擬戦をして欲しいとの申出があったので軽く吹っ飛ばしてやった。まだまだ戦力差は縮まらない、ということを教えなければならない。無事でいて欲しいし、絶対に言わんけど。
カナデが伸びをしながら降りて来た。俺はちょうどギルドに向かうところだった。お互いに手を振って別れる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドに着き、ルイをカンターで呼ぶとイカニが2階に案内してくれた。珍しく普通の応接だった。
「はい、リヒトさん。ここにルイさんが居ますのでキチンと話してください」
応対室前のドアでイカニは安定のイカニだったのを悟る。
「おはよう、ルイ」
「おはようございます。リヒトさん」少しルイの目が赤い。
「こちらが換金した金額は金貨432枚相当で、勝手ながら白金貨2枚と金貨232枚にしました」
「かさ張るから助かるよ。ありがとう」
その後、手続きもスムーズに終わった。今回の金貨はギルドでは買いきれなかったため、冒険者に競りをする方向で処分したとのこと。こないだの競りは俺の素材だったことを知った。・・・そりゃ怒るわ。
「ルイ、これからもよろしくな。また素材もってくるから」
「今日、アイルランダー出発する人の言う事ですか?」言葉とは違ってルイは笑っていた。
「結局、ルイに甘えていた。まぁ、美人だし?仕事できそうだし?」
「疑問形ばかりですね」
「好きだった」
「ありがとうございます」ルイが深々と礼をする。
「今度好きになったら拾いにくるから」
「捨てられてませんっ」
「んじゃ、冒険者らしく討伐する」
「魔物でもありません」
「魔物だろ?」
そんなバカ話をしながら手続きを終え、雰囲気も落ち着いたところでプレゼントを渡す。
「なんですか?」
「髪飾り」
もうちょっと早ければなぁとか色々思うけれど、タラレバなんてキリがない。バス移動がなければ〜とか言っても何も始まらない。それなら今できるベストを尽くすべきだ。
ルイはまた涙を流した
つい見惚れて
パチィイイン!!
と叩かれる。
「このタイミングでプレゼント渡してキスするなんて!!」
「つい綺麗だったもので」
「このクソエルフ!!!」
まぁ、ちょっと悪かったかと思うのと、ベストを尽くした結果、俺は隠密セット起動でギルドを後にした。




