求められない報告
【予告】第3回ひとり更新祭の開催
ブックマーク100件ありがとうございます!!
ちょっと先ですが、3月3日に第3回ひとり更新祭を実施します。
タイムリーにお付き合い頂ければ幸いです!!
ギルドでルイが他の冒険者の対応をしているところを見ていた。本来、ギルド職員は複数の冒険者の担当を持っていて、自分の担当が空くまで待たされるのが当たり前だったりする。ただ、俺の場合、混んでいる時間を避けてきていたからルイに即対応してもらっていただけだ。Eランク以下の場合は特定の担当が付くことなんてまず無い。
ルイが対応しているのを見ているだけで面白かった。
そんな気持ちで見ていると、なにやらルイが接客中なのにカウンター越しにこちらを見ていた。気のせいかと思っていたら手招きをされたので対応中の冒険者の横に行く。
「リヒトさん、すいません」
「どうしたの?」
「いえ、この方がどうしてもお話を伺いたいと」
「すまん、モーランと言う。リヒトさんとお話がしたく、ルイに無理を言った」
そう自己紹介をしたモーランは赤髪で漆黒の鎧を着て、鞘に見覚えが・・・。
「もしかしてギブリの店にいた人?」
「そうです!!」
なぜか嬉しそうな笑みを浮かべているが、ルイは対照的に額に手を当てている。俺、選択肢間違えた?
「それで何のよう?」
「ぜひ、模擬戦をしてもらいたい」
「やだ」
間を空けずに即答する。そういう話ならまったく興味は無い。ギブリが言っていたのはBランクってことくらいか。俺は赤髪と鞘しか覚えていなかった。
「混んでるから出直しすな」無駄に目立つのは避けたいので伝えておく。
「リヒトさん、どうか俺と模擬戦を!!」
面倒はごめんなので無視してイヴォーグの店へ向かう。途中、露店で焼き鳥のおばちゃんと談話していたら結構な時間が過ぎてしまった。おばちゃんに街を出ることを伝えるとバシバシといつもより叩いてくれた。サービスの一貫なんだと理解することにした。
多分、背中には手の跡がある。地黒だけど。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そんなわけでイヴォーグの店に行き、もう少ししたら旅立つことを伝えた。ついでにギブリの所で好評だったマジックバックを見せたら一瞬間抜けな顔になってから大笑いした。ちなみに、弟子のクーデは完璧に固まっていて正気に戻るまで時間がかかっていた。
「なぁ、それ譲れるか?」
「ギブリにも渡したし良いよ。イヴォーグにも世話になったし」
そう言ってマジックバックを差し出すとイヴォーグが代わりに「これを持ってけ」と手渡された。革は雑貨屋のものとは全く違う材質で、パッと見でも上質なものだとわかる。縫い方がとても丁寧で細工がないのにキレイだ。
「ちょっと場所借りるぞ」と勝手にカウンターの中に入る。
精神集中
「『マジック・バッグ』」
最初、もろそのままな魔法名に報告書を読んだときは吹き出した。ただ、魔力を入れた分だけ拡張されるし、安定した出し入れを可能にするため笑う余裕など術者にはない。結構な魔力がドンドンと注ぎ込まれていく。もしかしてカバンによって魔力吸収に差がある?そんなことを考えながら針で指先を突き血で魔法を固定する。
久しぶりに息を乱してできあがりを確認すると問題なく使用できた。これまでの一番の出来である。
「イヴォーグ、こっちの譲る」とドヤ顔で渡す。
「ふむ。初めて見たがいい仕事だな、リヒト」
イヴォーグは試しに鎧とかボンボン入れている。あとで片付けが大変だと思うのだが・・・。
「そのバッグはイヴォーグが作ったのか?」
「あぁ、まだ弟子の頃に作ったものだ」
「そうなんですか?」クーデが喰いつく。
思い出の品をもらわずに済んでホッとしたが、マジックバックにして良かったのか?という疑問はある。まぁ、イヴォーグは結構”今”に拘るが過去を引きずるようにも見えない。元々、エルフってサバサバしているのかもしれない。
「弟子の頃からそんなに丁寧だったのか」
「これなんかは材料を無駄にしてるだけだな」愛着とかまったくない様子のイヴォーグ。
「でも、作品がいいから魔力の吸着も良かったぞ。今まで作ったマジックバックよりもかなり性能はいい」
「それだけ分かっただけでも価値があるな。リヒト、ありがたく頂く」そういって店の奥へ移動し始める。
「いい忘れた。リヒト、もし革とか素材で面白そうなものを見つけたら俺に見せろ。物次第で俺が加工してやる」振り返り、ドヤ顔をしていった。まぁ、気に入ってくれたんだろう、マジックバックも一緒に奥に持っていったから。
「クーデ、おまえも師匠を抜けよ」
「馬鹿か、リヒト。あの人はグーム公国で1番の防具職人だぞ」
「いや、イヴォーグは世界一目指してるんじゃね?」
なぜかクーデの表情が消えた。
「どうして分かる?」
「なぜ分からん?」
なんかどうもコントみたいだな。
「ドラゴンとか爪もらえたら持って来るわ」
「ドラゴンに知り合いいるのかよ!!」
「いや、まったくいない」いるわけねーだろ、と。
どうしてもコントみたいになる。クーデと二人だと会話が成立しないかもしれない。なんか妙に固いんだよなぁ。
「というわけで、またな!」そういって店を去る。
そうこうしているうちにギルドが空く時間になったのでルイのところへ向かった。




