品を忘れない
2/24 誤記修正、一部表現追加
「気に入ってくれればいいがのぉ。微調整はこれからする」
テーブルには3つの武器がきちんと並べられていた。片手剣、杖、弓・・・あれ短剣は?
「ギブリ、短剣はどうしたの?」
「それは後のお楽しみじゃ。まずは剣からだな」
そう言ってギブリは裏庭の練習場に歩いて行った。あわてて3人もついて行く。その姿を後ろから見ていると少し口角が上がるのを感じる。ギブリが打った武器はどれも格好が良い、ほんとうにそう思う。
俺が遅れて練習場に着くとソウが片手剣で素振りをしていた。
「そこの動きが雑だ」
なぜか微調整とは関係なくソウがギブリに指導を受けている。あぁ、俺はなにも言われなかったから刀を売ってくれたのだと気がついた。ギブリの指導は無駄がなく、教え方も上手いのかソウの型がどんどん良くなっていった。
「んじゃ、次はお嬢ちゃんだな」
「オトハと言います。よろしくお願いします」綺麗なお辞儀を返すと、ギブリが焦っていた。
魔法支援の杖ってどの程度なのか自分も興味があったので『アナライズ』をする。
『リザード・マスターの白杖』
・回復魔法強化 <中>
・水魔法強化 <中>
・女性専用武器
「なぁ、ギブリ・・・魔石ってリザード・マスターだったの?」
「ん?知らなかったのか」
「いや、リザード・ソード だと思ってた」
・・・今度、ルイにリザード・マスターのランクを聞いておこう。以前にギルドで魔石を出すか迷ったが出さなくて正解だった。
「魔石が魔石だけに、嬢ちゃんのが一番目立つ」
「それでは打ちます『ウォーターアロー』」
土で固められた人形を貫いても勢いは止まらなかった。しかも径が太く、どちらかと言うと矢というよりも砲って感じである。魔法を使った本人も唖然としていた。
「大丈夫そうだな、それじゃ魔力認証だけしよう」
どうやら魔力認証をすることでオトハ専用武器になるらしい。盗難防止にもなるとのことで、白杖に目立つ赤い印が模様として浮かび上がった。ちなみに売るときは解除を武器屋で出来るらしく、その際は本人の同意がなければできないとのこと。なんか盗難車とかあった現代でも使えればいいのにと思える技術である。
「次の弓だが・・・魔力を通してくれ」
「風魔法でいい?」
「あぁ、風の方が具合がいい」
カナデが風魔法を込めたと思われると、弓が小さく音を立てて弦が張られた。なにそれ、ちょーかっこいんですけど!!!と俺が思っていると、ソウも目が輝いていた。
「なにそのロマン装備!!」
「えっ、これで矢をつがえていいの?」
「あぁ、それで打ってみてくれ」
シュブ
と風が鳴ったのが聞こえた。的は抉れ、矢は奥の壁を抉りながら突き刺さっていた。コークスクリューブローの矢版っていうか、それは理論的に拳銃と同じじゃないか?ってか矢ってそういう作りじゃないよな?
「これヤバイ、下手に打てないじゃん」あまりの破壊力にカナデが漏らす。
「まぁ、込める魔力で威力は変わるからな。その辺は試して見てくれ」
なんか簡単にギブリが言うがCランク装備じゃありえないスペックなんじゃないか?
「なぁ、ギブリ。今回の3人の装備って普通何ランクで手にする?」
「あぁ〜、そんなもの気にしてるのか?自分たちが生き残るための装備だろ」
「まぁ、そうなんだがな・・・」
「おまえの刀、あれはSSランクが過去に装備していた」
全然期待していない方向で回答をくれた。
「はぁああ!?それ金貨3枚でいいのかよ」
なぜか無視されてゲンコツを喰らった。理不尽だ、ギブリよ。
「あと、短剣は両手で弓柄を持ってみろ。魔力は両手につけろ」
「えっ?」
「その握ってるグリップのところだカナデ」とソウが補足した。
カナデが両手で持ち、魔力を通すと弓が2刀の短剣に別れた。
「なにそのロマン装備!!!!」ソウがちょっと前の俺のセリフを言う。
「うぉーかっけぇ。なんだそりゃ」
男子2人揃って同意見である。なんつーかっこいいもの造るんだギブリ。
カナデは2刀流を綺麗に振っている。なんかクノイチ忍者感がでてるんだが。獣耳付きだけれど、それは酷くカナデに似合っていた。うん、違和感がない。
「いや、こりゃびっくりだな。ソウの剣だけまともだな」
「おいおい、それが1番苦労した魔剣だぞ」とギブリ。
そっか、ソウは知らないんだ。というわけで、ギブリの了承を得て、ソウに魔剣に魔力を通す方法を伝える。ソウ自身は魔力操作を取っていないので努力が必要だが、いつものソウなら習得も問題ないと思う。実際に、試し切りをしてみると、切られた土人形は剣の筋よりも幅広く斬れていた。そういう特性なんだと思われる。
「ギブリ、この魔剣を少しみてもらいたんだけど。あっ呪われるから触るなよ」
「なぬ?こないだの2刀で構えたやつが呪い持ちか?」
「あぁ、なぜか俺だけ呪われないらしいけどな」
俺がギブリに見やすいように両手で献上するように持つと、ギブリは普通に俺から剣を受け取った。
「いやいやいや、呪われるって言ったよな?」
「大丈夫じゃ、リヒト。おまえの許可があればな」
ギブリはそういうと丹念に見ては、整備台に載せて刃の確認をする。柄の確認をし、磨き、鞘を丁寧に拭く姿が洗礼されていて綺麗だった。ギブリの事を思い出すといつもこの時を思い出す。
「リヒト、これは早々人に見せるな。あと、武器に魔力を通すときは最後まで辞めておけ」
「それもすごい剣だな」ソウはテンションが上がりっ放しで俺の剣に見惚れている。
「あぁ、分かった。ギブリ、ありがとう」
「ところでリヒト。今の魔剣はどこから出したの?」
「あぁ、マジックポーチに収納していたからな」
「なにそれ、そんなのまで持ってるの?」カナデが言う。
まぁ、論より証拠というのが本当にいい表現だ。あとすっかり忘れていたが旅立つ前に準備していた物があった。
「そうそう、3人にも用意しておいたんだ」
俺作成のマジックバック4号、5号、6号を取り出す。1〜3号は失敗作でお蔵入りになった。
「リヒト、これはおまえが作ったのか?」ギブリが明らかに動揺している。
「そうだけど」
「ワシにもくれ。お代はそれで十分だ」
えっ、なにそれ。造った3つの武器代よりも価値あるの?
ギブリに俺が使おうと思っていたマジックバック7号を渡すとホクホクと満足顔だった。ついでにダークエルフ村特製のワインを渡すと満面の笑みを浮かべた。「これで徹夜が報われる・・・」と心の声がダダ漏れだったが聞かなかったことにした。すまん、無理言って造らせて。
ギブリから俺がマジックバックの作成できることは内緒にするよう厳重注意を受けた。「国を左右しかねない技術であることの自覚が足りない」、「ホイホイと仲間にやるものではない」と言う割に自分はしっかりともらったよね?とか言いたいが我慢した。だって、その時のギブリが苦笑いで、ソウ達も背後で笑っているのが分かった。
「ありがとう」と4人でお礼を言うとギブリが片腕をあげて「メンテに定期的に出すように」と言い残して言った。いよいよ3人とも別れの時間が近づいていた。また会えるだろうと思うのは俺が軽いからかもしれない。そのまま俺だけ冒険者ギルドへルイの報告を受けに向かった。




