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異世界転生、俺だけソロ活動から!!  作者: とかじぶんた
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時をかける

 「リヒトさん、大丈夫ですか?」ギルドの階段を降りたところでルイに声をかけられる。


 「えっ?どうして?」俺はルイの様子を確認する。

 「なんか怒ってません?」首を傾げるルイが言う。


 「いや、・・・手が寂しいかも」と笑って両手で獣耳を揉む構えをする。

 「それ差別ジェスチャーですよ」とイカニが割って会話に入る。

 「ほんと?常識がなくてすまん」ルイに最上級のお辞儀をする。


 「えっ、リヒトさんってほんと可愛いですね!」

 「イカニ!!冗談では済まされないですよ。ウソですよ、リヒトさん」ルイの声のトーンが怖い。

 「なんだ、違うのか?」俺は顔をあげる。やっぱりルイの顔は氷の微笑みだった、もちろん、相手はイカニ。


 「だってルイさんばっかりリヒトさんを独占してずるい」

 「いや、そんな私は担当なだ」

 「もう俺はルイのものだ、諦めろイカニ」ルイの話にカブせて言う。

 「えぇー!!ひっど、なにそれルイさん」と冗談だと分かっているイカニが笑いながらルイを批難する。ルイは結構慕われているんだよなぁ。こないだギルド職員のザックと話している時も感じたことだった。


 「リヒトさん・・・次やったら蹴るっていいましたよね」

 

 ん?こっちに氷の微笑みが向けられた。


 とりあえず、いつもの様子なのでルイを無視して冒険者ギルドをあとにする。受付カウンター内で何の会話をしてるのかね。きちんと仕事しましょう、俺は冒険者の仕事をする。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 宿の自室に戻り、ベットに飛び込むと時空魔法の報告書を読みふける。ちょうど昼の日差しが部屋の窓から入り、ウトウトするには最高の環境である。メイプルの掃除も終わっているし、だれかが部屋を訪れる予定もない。


 報告書には、支援効果の高い『ヘイスト』、『スロウ』、対象物の時間を早送りさせる『フワド』、瞬間移動する『ワーラ』・・・ん?もしかしたらオッさんオークが使ってたのは時空魔法なんじゃないだろうか。それで目が覚めても『サーチ』のエリアの範囲外だったのか・・・?


 とりあえず後で試してみよう、もし正解なら少しだけオッさんオークに近づける。


 そして、期待していた『マジックボックス』系の報告書には「時空魔法でも危険なため、空間系の魔法はマジックアイテムにしてしまうのがオススメ」と書いていた。使わなければ分からないのだろうけれど、()()()()()()()()()()()()()()()を推測すると試すのも怖い。もう少し実力がついてからにしよう。


 最後のページ下段にオマケ的な扱いでマジックバックの作り方が書いてあった。クッ○パッドみたいな簡単レシピにされている。これ1つで冒険者引退して、マジックバック長者になれそうだ。術者のイメージ像がまったくできない報告書の構成だった。




 食堂に降りてお茶をいただきながら風魔法の報告書を読み始める。ルイが書いてくれたのが分かるほど、丁寧で分かりやすい作りになっていた。人の書いた文章には独特のリズムがあり、それを読むと何となく作者のイメージが勝手にできる。当たっているかは別として、前世でも俺はそうだったことを思い出した。


 魔法一覧と効果はやっぱり見返してもためになる。俺は風魔法適性がないが使えないわけでは無い。洗濯物を乾かすために使う『ウィンド』は風魔法の初級だし、同じ『ウィンド』でも魔力制御ができていれば屋根くらいは飛ばせる。そうか自力でハングライダーとか出来るんだな。・・・魔物に落とされなければ。



 読み終わった後、風魔法の報告書をカナデに読ませてやろうと思いつく。


 部屋に戻り大事に報告書をマジックポーチにしまって俺は西の森へ向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 西の森のグリーンオークは以前より数を減らしていた。これはギルドが森に深く入らなくても遭遇できるだけに、討伐報酬を少し上乗せした結果だろう。街道の近くで遭遇となれば交易にも支障がでる。英断だと思う。おかげで俺もけっこう稼がせていただいたが。


 そんなわけで森の入り口付近ではソウ達も『サーチ』には引っかからなかった。俺は切り替えて西の森の奥へ進むことにした。他の冒険者がいない場所でなければ時空魔法の鍛錬はできない。



 ある程度広がったスペースが見つかったので『サーチ』で周辺を再確認した後に時空魔法の鍛錬をする。


 マジックポーチからキワラズベリーを出して古い切り株に置く。少し離れたところから「『フワド』」と詠唱する。キワラズベリーは干からびる前にグズグズに腐り始めた。『ドライ』と違うところは水分を飛ばすのではなく、『腐敗』を進めているところか・・・。結局、これって酸化であって時空関係ないのでは?と思っていると、置いた切り株も中心が腐敗していた。魔力操作が難しい。


 ・・・パンの酵母とかじゃないと分からんかも。ってかどのタイミングでこれ使うんだろう。美容には明らかに悪い、っていうか完璧に敵である。逆の時間を溯れる系の魔法であれば良いかもしれないが報告書には無かった。『フワド』がfowardのfwdなら、backwardはbwdで「『バワド』とか?」と詠唱するとさっきのキワラズベリーが復元した・・・。マジかよ・・・。



 つやつやに戻ったキワラズベリーが食べれるのか謎だ。少なくとも遺伝子組み換え食品よりも俺には怖い。自分が食べた瞬間に爺さんとかになっても困る。ダークエルフ爺さんって・・・村でも見たことない。寿命も分からないし、ギルドに調べてもらうか。セルドにも威圧するくらいには開き直ったし、いよいよ遠慮がなくなってきた自分を実感する。



 古い切り株を確認したが新芽が出たり、樹に戻ることはないみたいだ。


 使い勝手がやはり分からない魔法である。


 『ヘイスト』と『スロウ』は自分にかけるのもありだが、相対する相手がいないと効果が分かりにくい。砂時計を見ながら自分で試すか、訓練中のソウにかけてるくらいがパッと思いつくところ。前者なら1人でできるが、後者だとソウに怒られる可能性は残っている。


 つづいて『ワーラ』の効果だが結構怖い。なんというか瞬間移動って前世でもない効果なのだ。次元を超えるって細胞が持たないんじゃないの?どういう仕組み?とか考えてしまう。ただ、そんなことを考えると『ファイヤ』で火が灯ることも説明が付かない。種火もなく火がつくし、理屈なんて物理が苦手な俺に分かるわけはない。


 復活したキワラズベリーから離れ、移動先へ意識をしながら「『ワーラ』」と唱える。


 直後、魔量がゴッソリ抜けるのを感じた。実感では禁断の『ファイヤーボール』3発分くらいだ。切り株を見るとキワラズベリーが無くなっていて、少し離れた目標に移動しているのが確認できた。この距離で膨大な魔力を使うとなると戦闘時の移動にはまだ使えそうにない。



 魔力の回復をするため休息しながら考えていた。


 結果、いまのところ時空魔法は残念な子である。


 ただ、神様が俺のスキルを弄って与えてくれたので将来性には期待はしている。マジックポーチ作成要員かもしれん・・・。



 『ステータス』


 名前:リヒト・ヴァーズ 性別:男

 種族:ダークエルフ

 職業:冒険者(Bランク)、冒険者の導き手

 適性:火魔法適性、水魔法適性、光魔法適性、時空魔法適性、魔力操作適性、

    片手剣技術、鍛治技術、隠密技術、魔闘気適性、身軽

 個性:金髪、運が良い、モテ期(初期)

 スキル:火魔法レベル3、水魔法レベル2、光魔法レベル1、片手剣レベル4、隠密レベル3、身軽レベル3、

     魔闘気レベル2

 加護:ほんの気持ち程度見守っている


 加護の欄が『学校の通信欄』みたいな使われ方をされてから見ないようにしていた。変なこと書かれても不安になるだけだし、こないだの④魔王は〜のくだりは怖かった。あの晩はランプ消さないで寝たもん。


 『魔闘気』は最近身につけた刀に魔力を通す技術だと思われる。先天性かと思っていた適性までついている。職業欄に気になる記述があるが無視する。基本的に『ステータス』は怖いから見ない、それが心の平穏を確保するコツである。他者はそれを現実逃避と言うが俺は知らん。



 ある程度魔力が回復したところで街へと戻った。


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