北の森と賢者
今日から少しサブストを並行更新します。
サブストの表現がキツイので苦手な方はスキップを!!
サブストは11時に更新します。
鬱蒼と北から入れる森は、そのまま西南に進めればダークエルフの村の方向である。アイルランダーの周辺では特殊な状況を除けば一番ランクが高い魔物がでる。ちなみに人族判定では、魔族領のような魔物と魔獣の区別はなく、一括りで魔物だ。
訓練の時に依頼掲示板の分布図をみたかぎり、北の森は推奨ランクB以上になっていた。ギルドのBランクとCランクではカナリの差があるようで、各ランクには簡単に越えられない壁を設定しているようだ。そのため、Cランク以上ともなるとどの街での信用もかなり高くなるし、拠点の街では一般住民にも名前を知られていたりする。ちなみにBランクになった俺が知られているかは不明だ。
あと、もう俺は自重することをやめた。以前は、できる限り目立たず、ソウ達に合流し平和に暮らしていければ良いと思っていた。それも次第に出生からしてワケありだし、なによりも自分に実力がつかないと守れないことも十分知った。努力もすぐ結果に反映される世界でやらない選択なんてない。
北の森にある程度入ったところで『サーチ』に反応があった。
『ハイド』で近づくと、双頭の狼オルトロスがこちらに気がついた。
片方が威圧を放ち風が巻き
残りが咆哮をあげる
威圧を避けたところで俺の中で警報がなる。一気に5体近づく反応がある、しかも早い。
これはヤバイ・・・。俺を中心に均等に配備されている。統制がとれている魔物は強い。
先手必勝と『ファイヤーアロー』を目の前のオルトロス以外、均等に分かれている方向へカンで放つ。6本の矢は予想以上の爆音がなり響く。浮かれて装備した後に魔法を試していなかったことを思い出す。
相手が強いのは分かっているので、出し惜しみせずに魔力を通した刀で戦う。目の前のオルトロスが爆音に気をとられる事もなく爪を振るってきた。疾さに躱すことは諦め、剣で流そうと合わせると爪を斬り落とした。
「まじで!?」何の抵抗も感じられずスッと落ちた爪。硬質なそれが地面に突き刺さっていた。それを難なく断ち切る愛刀にゾッとする。
相手は距離をあけて爪と俺の様子を見ていた。
クゥオォーーー!!
再度咆哮を上げると
逃走した
俺はかなり驚いたが『サーチ』の結果からオルトロスと周囲の3頭がドンドン遠ざかるのを感じる。こっちの『ハイド』に気がつく敵がいる事、数的有利があっても逃走を選択する魔物がいることに驚いた。
残りの手負い2頭の状況を確認すると、爪で襲ってきた個体よりもふたまわり小さく、戦ったのがボスのような存在だったようだ。トドメを刺してから『アナライズ』を使い、皮、牙、爪が素材と分かったので解体する。俺のアナライズでは、魔獣:オットローと判定された。解体していると地面に刺さっていたボスの爪に躓き転びそうになった。最後まで抵抗を示す爪も忘れずに回収する。
それから『サーチ』に引っかかった敵を中心に討伐をし続けた。北の森クラスになると具体的な討伐対象はかかれておらず、それぞれの魔物に応じた素材が重宝される。当然、魔石も金貨1枚以上の価値が普通である。
たまに忘れそうになるが、ピコ鳥の休息で1泊銀貨5枚なのだから金貨1枚で20泊分が稼げることになる。だから無理をしてでも稼ごうとする冒険者が後を絶たない。一攫千金が文字通りできる職業なのだから。
その後、飛ばないダチョウみたいな鳥、小型のヌエのような魔獣、動く樹などを狩る。そんな中、大型のマントヒヒみたいな猿が最悪だった。最初は『サーチ』のギリギリの距離でひっかかっていたのだが、少しずつ近づいてきて俺の戦闘を観察していた。
観察も飽きたのか、今度は戦闘中に嫌なタイミングで投石してきた。ファイヤーアローで迎え撃つも、難なく躱し、奇妙な踊りを始める。猛烈に腹がたつので追っかけると、樹々の移動速度は俺よりも疾く逃げられた。次会ったらまっさきに戦うことを心に決めて街にへ戻る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで今日の収穫はなんですか?」ルイは驚かないよう構えてる。
「いや、ちょっと分からないんだ」と5個の魔石をテーブルに置く。
既にギルド2階のいつもの部屋だ。
「サイズはグリーンオークより少し大きいですね。どこで?」
「北の森。それで、これも調べて欲しいんだ」
テーブルに傷をつけないようソッと物騒な爪を置く。あのボスのだ。
「・・・北の森っていいました?」
「あぁ、Bランク以上は良いんだろ?」
「Bランクパーティー以上はですね。あと、行く前にギルドに申請が必要です」
「マジで?」背もたれがないが天井を見上げてしまう。
「マジです」ルイは前傾姿勢でテーブルより乗り出している。
「・・・今度からする」
「パーティーで、ですが」
「ソロパーティー」
「それは独身貴族会のことですよね?」まったく笑わないルイ。
「まぁ、ちょっと判定機使ってよ。ルイさん」
「もうっ。・・・お願いしますよ」
判定の結果、双頭の狼はオットロー、飛ばないダチョウみたいな鳥がドンプファ、小型のヌエのような魔獣がヌーク、動く樹がムービングツリーと確定した。すべて『アナライズ』と同じ名称なのが確認できた。魔石の状態も問題ないことが確認された。
魔石の換金はオットローが金貨18枚、ドンプファ、ヌーク、ムービングツリーは各金貨15枚だった。あとは素材系で合算して金貨5枚となった。オットローの皮が損傷がありマイナス査定となっている。そこまでテキパキと仕事を進めていたルイの手が最後のボス爪の判定で止まった。
「この爪、判定結果が出ているんですが、よく戻ってこれましたね」
珍しくルイが泣きそうな顔をしている。
「ん?いや、相手が逃げてったからな」
「・・・またギルマス案件なんですけど」
「えっー、もう夕方だし長くなる?」
「こっちだって報告書仕上げたいんですよ!!」
あっ、ルイがキレた。
ドアの閉まる音で耳が痛い。
しばらく待つとセルドがやってきた。
「この時間帯にルイを困らせるなよぉ」会って早々にセルドが言う。
「いや、北の森のこと知らなくて」
「おまえ、そりゃないよ。ルイがどれほど気に」
「ギルマス!いいから見て!!」と判定機を指差すルイ。
もう少し小芝居を続けたかったセルドと俺は顔を見合わせる。
「うーん・・・真面目にこりゃヤバイわ。坊主よく帰ってきたな」
「いや、オットローのボスみたいなヤツだった」
「分かってるのか?オルトロスだぞ、A+だ。しかも爪を断ち切って持ち帰るなんて」
アイツがA+判定だったのか、通りで強いし賢いわけだ。あっ、話が通じたかもしれない、向こうから先制されたけど。
「堅そうだし価値はあるんだよな?」
「本気で・・・言ってるんだよな?」セルドは俺じゃなくルイを見ている。
「だから困ってるんです!!!」まだルイは怒っている。
分からない俺に簡潔にセルドが話してくれた。オルトロスを討伐するとしたらAランクパーティが3つ以上、それかSランク冒険者が2名程度必要とのこと。ちなみにパーティーは4人以上が1組の計算だ。「なんかデジャヴな話だな」とジャイアント・ドーダを思い出して漏らすと盛大なため息が1つ、氷の微笑みが1つ返ってきたので平謝りする。
ルイが爪以外の換金のため部屋を出た。
セルドからは、その爪が高価すぎて買取できるか迷う品物らしく、本気でギルドに売るのなら事前に教えてくれと言われた。あと、爪の事はギルドからは何も言わないとの確約をもらった。「1年も経たずにAランクだな」と部屋をでるセルドは苦笑していた。
ルイが金貨86枚をトレイで持ってきたのでお礼を良い受け取る。
ルイから前の調査依頼報告書は昼過ぎにはできている事と、夜のレストランの場所を聞いた。ギルドには迎えにこないでくださいね、と注意を受けた。迎えに行くもんだろうと思っていたので内心焦ってしまった。
金銭的余裕ができたので装備品をランクアップしようと楽しい妄想に更けながら宿に戻った。




