西の森の乱獲
リザードマン達との戦いの後に学んだことがある。魔剣(魔刀)に魔力を通す方法だ。実践には使ったことがないので、いつものごとく訓練相手としてグリーンオークを選んだ。木剣でも魔力が通ることは鍛錬で試していた。
隠密セットを起動し、近くにいたグリーンオーク2体に接近する。1体は『ファイヤーアロー』で気づかれずに瞬殺し、残った方の前で木剣を構える。素手のグリーンオークが殴りかかってきたのを魔力を通した木剣でいなす。すると、いつもなら体勢を崩す程度のはずが、腕が勢いよく横に弾けた。
「はっ?」と、一瞬結果に理解が追いつかなかったが、そのまま木剣でトドメを刺す。グリーンオークの素材は無視していいだろう、『サーチ』にはまだまだ複数の反応がある。魔石だけ頂くことにして『ファイヤ』で処理することにした。
そのまま何体倒しただろう。夕暮れも近くなって来たところで、ソウ達と思われる3人組が『サーチ』にひっかかった。あのステータスでグリーンオークの相手をしているのか?気になるので見に行く。
到着すると3人はグリーンオーク1体と戦っている最中だった。うまく1体だけ釣っているようで、予想通り前衛にソウ、続いてカナデ、オトハという陣形だ。
ソウは片手剣でグリーンオークの棍棒を弾いている。なんどか打ち合っているうちに掠めたのか、血が所々滲んでいる。ソウがバックステップで距離を取ると、カナデが矢を放った。慣れた役割分担なのか、しっかりと連携が取れている。
「いきます。『ウォーター・アロー 3』」とオトハが唱える。
3本のウォーターアローが空中に浮かび、クロスガードをするグリーンオークの腕を突き抜く。
グォオオアオオオオ!!!
グリーンオークが咆哮した。
『あっ、こないだのスタンだ』気づいた俺は、固まっているソウに飛び蹴りをした。きちんと着地地点には茂みがある、3m先だけど。
蹴飛ばした後、少し遅れて棍棒が振るわれる。それを魔力を通した木剣で跳ね上げる。何体か戦う内にグリーンオーク相手なら魔力を木剣に通せば力負けしないことが分かった。
ガラ空きになった胴を水平に打ち込むと他のオークと同じく戦闘は終わった。
「どうみてもグリーンオークは早くないか?」オトハに向かって話す。
「そ・・・それはそうだけど」
「まぁ、とりあえずソウを治してやれ」と茂みを指差すとオトハが駆け寄っていった。
「ほんとにケントなんだぁ。会いたかったぁ〜」カナデを見ると泣いていた。
まだ危険な森なのにいつまで日本人感覚なんだ、と叱りたくなるが、滅多に泣かなかったカナデの姿を見ると苦労してきたのが分かる。落ち着くまでその場で待った。
夕暮れが近づいて来ているため、街で話しをすることにした。槍を持ったいつもの門番は俺の冒険者タグを見て一瞬驚いたが通してくれた。珍しく「ランクアップおめでとう」と小声で話して来たので手で応えた。
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ソウ達がギルドに薬草の収集報告にいく間、ギブリのところに愛刀を受け取りにいく。「また、強いのと戦ったな」と渡すときにギブリが言う。なぜ刀を見ただけで分かるのかは謎である。確認のため鞘から少し抜くと綺麗な刃文にうっとりしてしまう。いかんいかん、時間がない。
「ギブリ、この魔刀に魔力を通しても問題はないのか?」
「おまえなら大丈夫だろ。ただ、切れ味が増す分、消耗も早くなるからメンテに必ず持って来い」
礼を言い、3人との待ち合わせのパブに行く。そこそこ混んでいてテラス席から中を覗くとカナデが手を振っている。よくローブを被っているのに分かるな、と少し感心する。
既にテーブルにはいくつかの料理が並んでいた。
「すまん、待たせた」
「飲み物はエールでいい?」とオトハが言う。
「いや、お茶が嬉しい」
「お茶なんてあるの?」とカナデが驚いていた。
いままで何を飲んできたのか?と思ったが、お茶の方が高いらしく、3人とも知らなかったようだ。いつも泊まっている宿(ピコ鳥の休息)では普通に出してくれてたのに。
そして、テーブルに並んだ料理を食べてゲンナリした。
「ほんっと、異世界にきてご飯が辛いんだよねぇ」とカナデが言う。オオカミの獣耳が垂れている。
「いつものことなんだから慣れなさい」食べているオトハの表情は、栄養摂取にしか見えない。
「まだ蹴ったの怒ってるのか?」黙っているソウに話しかける。
「いや、あれが無かったら無事じゃないことくらい分かる。助かった」頭を下げたソウが言う。
うん、ちょっと3人の状況が理解できた。
「ちょっと精算してくる。場所変えるぞ」と3人に言い、席を立つ。




