ルイが2階で、イカニがいる
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宿の延長手続きを10日ほどして冒険者ギルドに向かう。当初の目的であったDランクまでのランクアップをするためと、お金を稼ぐためである。ついでにリザードマンの魔石やギルドの判定魔道具についても聞いてこよう。
ギルドのカウンターにはルイはおらず、他の受付嬢がいた。ちなみにギルドの受付は男性も当然いる。いかにもな体格で荒くれ者の冒険者たちへの牽制には十分である。ただ、女性も逞しく、賢いことは身を以てしっている。
「あの、ルイはいませんか?」
「あぁ、ルイなら2階にいるわ。私じゃダメ?」とカウンター越しに前のめりの姿勢を取る。これはかなりあざとい、視線がつい胸に行ってしまう。当然、それを見越して服装も仕立ての良いブルーのシャツである。これならルイじゃなくとも〜。
「イカニ!!!私がリヒトさんの担当です」と音を立てて階段を降りて来た。
「ルイが忙しそうにしてたから私で対応できるか聞いただけよ」とイカニはまだ姿勢を変えない。
「ちょっと、リヒトさん!!なにを嬉しそうにしてるんですか。うわっ、ひっど」
イカニが奥に引っ込む。ベージュのパンツにブルーシャツ。薄いグリーンの髪の毛がショートカットで揺れている。うん、俺はキライじゃない。
「おはよう、ルイ」
「『おはよう』じゃないですよ。昨日は帰りに、ギルドに寄るかと思ってたのに来なかったので心配しました」
「すまん、時間がかかったのとアクシデントで宿に戻ったんだ」
「・・・」アクシデントの言葉が引っかかったらしいルイがジト目で見る。
「それでドーダの魔石の換金と討伐報酬をお願いしたい」狩ったドーダの魔石をカウンターに置き始める。たぶん、20個くらいあるだろう。
「ちょっと!待ってください」と10個過ぎたところでルイが言う。もう少しでピラミッドができあがるのに・・・。
「なんでリヒトさんが怒ってるんですか!数を考えてください、Eランクの冒険者で目立ちたくないんですよね」とカウンターから乗り出して小声で言う。ルイの前傾姿勢に「ありがとう」と答えたが、ルイは多分勘違いしていて笑顔になった。その笑顔に申し訳なくなり、大人しくルイの案内で2階に行く。
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2階に上がると、ギルマスのセルドと話した部屋とは違うところへ案内された。大きめの装飾のないテーブルが部屋の中央にあり、それを挟むように素っ気ないひび割れた木の椅子が4脚配置されている。ルイがドア側の椅子に座ったので、その隣に座ろうとしたら「あっちですから!リヒトさん」と笑われながら指示された。
「それで、ドーダの魔石は何個あります?」ルイが受付カウンターに置いた分を並べてくれる。
「あと、8個・・・かな」と偽装革カバンから魔石を取り出す。
「その間がなんか気になりますね」テーブルの魔石を数えるルイ。ピコピコと今日も猫耳が揺れている。
「あと、これはどうなる?」とドーダより大きく、深い色の魔石をテーブルに置く。
「あの・・・リヒトさん、これは何の魔石でしょうか?」
「多分、リザードマンだ」
あっ・・・ルイの表情が消えた。焦点もあっていないように見える。
間をあけたルイが「はぁあああ」と盛大なため息した後、「リヒトさん、お願いですから今後は別室のみの対応にしましょう。毎回カウンターでこんなの見せられたら私の精神がもちません」と一気に言うと部屋を出ていった。
その後、ルイは男性ギルド職員と一緒に部屋に戻って来た。小脇に魔石の判定機を抱えている。
「この魔石の質感は俺も見たことがない」とテーブルに着くなり魔石をかかげている。
「では、判定機にかけます。リヒトさん、よろしいですね?」
「あぁ、もちろんお願いします」と丁寧に答える。
「・・・『リザード・アーチャー』の判定がでてます」
「お、俺にも見せてくれ」と男性ギルド職員が興奮している。
「ところで、バッチがあるからギルド職員なのは分かるが名前を教えて欲しい」とやさしく聞く。珍しく腹が立っていることを自覚する。勝手に魔石を触ったのも気に入らなかった。もしかしたらリザードマン達の物だからかもしれない。
「すまない、俺はザックといいます」と頭をさげるも俺はなにも答えない。そんな俺が珍しかったのだろう、ルイが話を切り出した。
「リヒトさん、これほどの魔石の場合、職員2人以上で判定するのが決まりとなっております。礼儀を失していたのは申し訳ありません。手続きを進めさせてもよろしいでしょうか」とルイがザックよりも深く頭をさげる。
「すまない、続けてくれ」
「ありがとうございます」ルイとザックは判定機を使いながら話し合う。
そんな二人の様子を見ながら、俺はムキにならなくても良かったよなぁと反省する。
う〜ん、早く体を動かしたい、と考えていた頃にザックが部屋を出る。
「ザックはギルマスを呼びにいきました」ルイは察しがいい。
「そうか、さっきは悪かったな」
「リヒトさんが怒るの初めてみましたよ」とルイは笑顔で応じてくれた。
「初対面なのに名乗らないし、『俺はイケメン』的な空気がなぁ」
「よっぽどですね、頭が痒くなるなんて」と声を出して笑った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おう、またおまえか」とセルドとザックが入ってきた。
「こんちは」と軽く応じるとセルドの後ろのザックが固まる。
セルドにルイが手際よく判定機の内容とザックと話し合った結果を説明した。セルドは疑問に思ったことを都度ルイに確認を取っていた。
「また、ソロか?」ルイとの話が終わったセルドに聞かれた。
「大丈夫か?」とザックの顔を見て応える。
「ギルド職員は守秘義務がある。こいつも問題ない」
「ソロだ。また嘘検知の魔道具を使っても良いが今日は時間がない」
「嘘検知は使わない。それじゃ換金でいいのか?」
「いくらになる?」
「金貨15枚になる」
「わかった、それじゃ30枚用意してくれ」ともう1個魔石を置く。
「わはははは!!おまえ、やりすぎだ。ルイ用意してやれ」と明らかに狼狽していたルイに声をかけた。ザックは固まっている。
「判定はいいのか?多分、さっきのが『アーチャー』なら『ウィザード』だと思うが」と伝えておく。あとで返却とかされたくない。
「大丈夫だ。よく2体も同時に相手したな、ソロで」
「ところで、リザード・アーチャーは何ランクに分類されてる?」
「B−だな。俺も昔戦った。だからおまえがEって無理なんだよ、ギルド的にも」
「分かった。ランクアップも頼む」
「ルイ、ランクアップも同時な。それじゃぁ、また笑わせてくれ」とセルドは出て行った、遅れてザックも出た。
それにしてもランクアップも簡単にやってくれるな、ギルマス。
二人がいなくなると先ほどの部屋も広く感じる。とても静かだ。
「リヒトさん、なにか言うことはないですか?」と残ったルイが言う。
「ずっと俺の担当でいてください」
シュッッ!!
顔に風を感じる
目の前にルイの足の裏があった。
「次やったら当てますよ」微笑みを浮かべている。
なんか背中が冷たい。
ここでさらっとリザード・ソード(?)の魔石を出したい衝動にかられるも、冗談抜きで蹴とばせされるだろう。それにルイに本当に担当を降りられる恐れもあり自粛した。
ルイが戻ってくると、トレイに金貨30枚と銀貨100枚、それと更新された冒険者タグをのせていた。
「ランクアップでBランクとなってます。おめでとうございます」
ルイよ、ずいぶんと乾いた声だね。
「ルイ、さっきはマジでごめん。でも、ほんと担当変わらないでね」と本気で謝る。
「つぎやったらご飯奢ってくださいね」
「いや、それなら明日ご馳走する!!」
「えっ・・・」
「やっぱりダメ?今度誘うから考えてといて」と断られたのが恥ずかしく、部屋を自主的に出る。すぐに隠密を使用し前回と同じく裏口から出る。もう急いでギブリに会いにいかないとね!!!
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「あの、ビックリしただけなんですけれど」と笑顔で独り言ちるルイがいた。




