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異世界転生、俺だけソロ活動から!!  作者: とかじぶんた
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商売上手と教え上手

 裏庭スペースにダライ、バンジー、俺の3人がいてもソコソコのスペースがある。今更だけれど、この宿をルイに紹介されてよかった。実際はCランクパーティーがゴロゴロいるからEランクが泊まるクラスじゃないんだろうけれど。


 「んで、まずイチゴ8個な。確認してくれ」と古いテラス席のテーブルに置こうとしたら、バンジーがイチゴを両手で受け止めた。ヒゲのおっさんがイチゴを持って破顔するってどこのホラーだ。1個ずつ手のひらに置く俺のことも考えてほしい。


 バンジーは手のひらに8個並ぶとすぐにイチゴを食べ始めた。困った顔をしたダライが代わりに金貨8枚を俺にくれる。


 「さて、もう1つはサービス。ダライは魔法が使えないのか」いちおう確認だけはしておく。

 「あぁ、魔法なんてまったく無縁だ。これでも何年も冒険者してるからな」

 「おっさんだもんな」


 「うるせぇ!!!おまえこそその若さで、ってダークエルフの年齢知らんが大したもんだ」

 「とりあえず、そこに座れ」


 憮然(ぶぜん)としたダライだがそれでも素直に土の上に黙って胡座(あぐら)をかく。こっちはEランクなのに俺を認めてくれているのがわかる。今時なら俺が教師なら体罰で訴えられるだろう。さっきアナライズでダライを見た時に『回復魔法適性』って出てたんだよなぁ。ダライの背中に回る。


 「ちょっとグラッとするぞ」と言い、簡単に魔力だけを当てるとダライが地面に顔を擦りつけてた。ズザァアア!!って漫画みたいと俺は我慢できず笑ってしまう。


 「いってぇな!!!てめぇ、なにする・・・」と怒声をあげたダライが途中で自分の異変に気がつき静まる。

 「多分、回復魔法使えるぞ、おまえ」

 「な、なっ!!どういうことだ」と声をあげるのは口の周りをイチゴで真っ赤にしたバンジー。おまえはやることが他にある。ヒゲまで赤く染まっている。



 「『ヒール』だっけか?今の巡る感覚のまま唱えてみろ」とバンジーを無視して、まだ両手を見つめているダライに話しかける。


 「我を癒し手(いやして)と御身の力で治し(たま)え『ヒール』」と自分の顔に手をあててダライが唱えると、小さな青白い光が灯り(ともり)擦り傷が治った。


 「・・・なっ、な」と言葉にならないのか、バンジーが腰を抜かして地面に座る。それにしても『ヒール』の詠唱文をダライは知っていたのか。俺も知らなかった。


 「よかったな。これでリーダーも早く治せるだろ」と結果に満足した俺は言う。塞がっている魔力を自分の魔力でこじ開けるなんてやったことないし、上手くいかなかったら顔面ズザーで終わってたわけだし。


 だが、声をかけたダライは涙を流していた。



 「おい、ダライ、大丈夫か?顔は・・・おっさんのままだぞ」

 「あぁ、すまん。ちょっと・・・まえを」とダライは飛び切りのジョークを無視し、涙は止まる様子はない。



 とりあず、とりあえずだ、俺は隠密セットを使って武器屋に行くことを決めた。あとは赤ひげのバンジーがなんとかするだろ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 「ちわー」と先ほどの雰囲気を忘れた俺が言う。ダライなど知らん。

 「おう、木剣の坊主か」とドワーフのおっさんがカウンターから出てきた。こないだの刀を買うことを告げると、驚くと思っていたドワーフのおっさんは渋い顔をする。


 「これを買うヤツが来たか」

 「いや、もう出し渋るのとか無しだよ。一目惚れしてお金を用意してきたわけだし」と藍色の鞘を見つめる。金貨は3枚をカウンターに置く。もう俺のもんだ。


 「坊主、ちょっと裏庭に来い」と金貨を受け取ったドワーフのおっさんが刀を持って移動する。



 「まず、坊主も分かっているだろうがこいつは魔剣の類だ」

 あぁ、やっぱりそうなのか。俺の持ってる魔剣の雰囲気に近かった。

 「それで刀に認められなければ売ることはできない、ってか使えない。抜いてみろ」


 藍色の鞘ごと刀を受けとり、静かに抜く

 抜刀が静かに鳴る

 正眼に構える

 軽く袈裟に刀の筋をおくり

 左から右へ水平に通す

 できるかぎりゆっくり刀を流す

 


 はぁーーーと長いため息が出る。刀身の長さ、幅、刀の重心位置すべてが素晴らしい。片手剣適性のおかげなのか、自分が刀に対するロマンが溢れすぎているのかは分からない。高揚する気持ちを抑えてドワーフのおっさんへ振り返る、間違いなく俺は満面の笑みだと思う。


 「久しぶりにイイもん見たな」おっさんは頷いていた。どうやら合格したらしい。



 俺はふと思いつき、元々持っていた偽装カバン(マジックポーチ入り)から魔剣を出す。そして、右手に魔剣、左手に魔刀を構える。まだ腰には木剣もある、The ロマンである。なんでもThe付ける日本人なのが俺だ!!!



 っと調子に乗ったところで強力な船酔いみたいな感覚に陥り、かろうじて膝を地面につく。


 その瞬間、『ドッ!!!』とドワーフのおっさんに左脇を蹴られ、一瞬握力が抜けたのか魔刀から手が離れた。感覚が少しずつ戻ってくる。


 「こぉの馬鹿野郎!!!どこに魔剣2刀構えるヤツがいる!!!!!」と怒鳴られる。



 その後、こんこんと説教を聞かされた。これほど長く熱い説教を受けたのはグウェン以来で、説教の内容はグウェンより濃く、ものすごい勢いだった。それに俺の長い耳を引っ張られたのは初めてのことだった。冗談でも『もう傷物にされちゃった・・・』とか言える雰囲気じゃなかった。思いついたけれど。


 当然、怒鳴り声が鳴り響く店にはだれも来なかった。


 店を出るときに「リヒト、明日も来いよ」と背後から念押しされた。・・・あぁ、俺がロマン馬鹿だった。

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