オウヒメイチゴともぐもぐ娘
作戦『更新ガンガンいこうぜ』をただいま継続しております。
もうじき『いのち大事に』になります。
その日の夕飯、食堂は西の森ですさまじい爆音を聞いた冒険者の話と魔獣:コッカトーリーの群れが飛び去る珍事での話題が耳につく。ダークエルフ特性なのか、耳を澄ました際に意識的に聴力がよくなる。森の異変について少なくとも心当たりがある。
もうローンスターに向かって行こうかなぁ。会えるかどうか分からないけれど、ギルマスのセルドが言うのだから新人が多く登録されたのは間違いない。前から考えていた3色は国を現していて、そのうちの1つはグーム公国だったということだろう。黄色って国旗か何かかな?
「さて、メイプルに問題です。グーム公国の国旗は何色でしょうか?」横に座るメイプルに質問する。
「きいろにちょっとした緑色のマークがついてる!!」
うん、俺は答えがわかりません。
「そうか、メイプルは物知りだなぁ」
酔っ払いみたいに頭をなでて、革カバンからイチゴもどきを上げる。そうだ、これも売れるって行商人のケイトが言ってたな。
「なぁ、マスター。このイチゴもどきって売れるのか?」と勝手にメイプルにあげていたイチゴもどきを見せる。
「おまえ、それオウヒメイチゴじゃねぇか!かなり高額で売れるぞ」と中華鍋を振るいながら首だけこっちを向けて返事をする。たまに焦がすくせに器用なんだよな、このマスター。
「いや、勝手にメイプルにあげてたんだよな。俺も食べてるし毒じゃないんだけどさ」
「それ最大魔法量を上げる効果があるからな・・・。歳の数以上は1日に摂取しなければ問題ないがな」
んっ?おぉ!!行商中にケイトが滅茶食べてたな。多分、アイツは効果も知ってて食べていたのか、『行商中は行商以外ではお金を稼ぎません!!(キリッ)』って感じだったのに。ただ、それは商人の姿勢として正しいと思うし、なによりも貴重なアイテムの価値を知らない相手に「売れるぞ」と常識を教えてくれたのだから感謝している。
「ところでメイプルって何歳なの?」これは本人に聞くべきだろう、俺の夕飯時は横の席が定位置である。
「9歳だよ。リヒトは?」とメイプルは5個目のオウヒメイチゴを口に入れながら話す。目線もイチゴのままだ。
「えっ!・・・17歳くらい」まさかのメイプル姉さん(俺より年上)だった。俺の実年齢は詐称する。7歳って正直に答えても160cm超えてるから信じてもらえないだろう。それに冒険者だから他の人達に舐められるわけにもいかない。
「あまり分からないんだよね、森で生活してたからさ」と一部事実を重ねることも忘れない。良心の呵責だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝の剣の鍛錬を終え、いつもの遅い朝食を取りに食堂で過ごしていると懲りないダライが話しかけて来た。
「昨日はすまなかった」と折り目の良い礼をするので、手で大丈夫と合図を送る。今はパンが口の中の水分を根こそぎ取っていて話せない。それにお礼は要らないと昨日も伝えている。
「リーダーの具合はどうだ?」と社交辞令に聞く。
「いくつかの骨が少しヒビが入ったが命あってこそだ」とダライは苦笑いをしていた。
「グリーンオークは何ランクなんだ?お前たちはCランクパーティーなんだよな?」
「グリーンオークはC+という位置付けになっていた。うちらの実績上げと、戦利品もおいしいと思って討伐クエストを受けたんだが、かなり厳しい結果だ。正直、あそこまで削られると思わなかった」
随分と行儀のいいダライをマジマジと見てしまう。あれほど最初は因縁をふっかけてきたのに。C+魔獣とCランクパーティーの差が大きいのが分かった。あと、自分の実力がC+でも余裕がかなりあることも。
「あのさ、確認なんだが魔法使いの人、あの人の魔法って強いのか?」
「バンジーの魔法は弱くない。ってか、昨日のおまえの魔法はなんだったんだ?」
無詠唱で使ったからダライには分からなかったのだろう、バンジーの使った魔法と同じ『ファイヤーアロー』だったんだが。
「俺はリヒトだ。そのバンジーって人にオウヒメイチゴを買うか聞いてくれないか?」と実物を1つ渡す。
「オウヒメイチゴ!!?おうっ!!ちょっと待っててくれ」と慌ててダライは食堂を出ていった。俺がEランクだったことを笑っていた人と同一人物とは思えないダッシュである。学校でパン買いに行かされていたヤツを思い出した・・・そうか、あいつらも転生してるのか。人の命がすぐに消えるこの世界では怖いものがある。
『私の中級くらいの威力がある』とシュエルは初めての魔法訓練後に言っていた。『ファイヤーボール』は下級上位魔法だと考えれば、一般的には中級魔法クラスの威力なのかもしれない。俺が上級魔法を使えるようになったら歩く砲台みたいになるのだろうか。いまなら巻き込まれない自信はない。
『ステータス』
名前:リヒト・ヴァーズ 性別:男
種族:ダークエルフ
職業:冒険者(Eランク)
適性:火魔法適性、水魔法適性、光魔法適性、時空魔法適性、片手剣技術、鍛治技術、隠密技術、身軽
個性:金髪、用心深い、運が良い、モテ期(初期)
スキル:火魔法レベル2、水魔法レベル1、光魔法レベル1、片手剣レベル1、隠密レベル1、身軽レベル1
加護:まだまだほんの気持ち
火魔法レベルが1つ上がっていた。光魔法の訓練もそうだが、時空魔法を鍛えたいと思っている。できるかどうか不明だが、マジックカバンを作りたい。それかアイテム収納のスキルとか覚えれれば最高だ。
思考を巡らせていると、ダライがバンジーを伴ってきた。もちろん、ダッシュで。
「リヒトさん、ダライに聞いたが、このオウヒメイチゴを譲ってくれるのか」と興奮気味のバンジーが話す。距離が近い。
「あぁ、何個ほしい?」とバンジーに話すと目が血走っていた。
「何個あるんだ!!これで魔法量が増えるんだぞ、金は・・・」と俺が座るテーブルに金貨が8枚を乱暴に置く。
「ちょっと落ち着け。ってかダライは止めなくていいのか?」と第三者に話を振る。
「いや、俺は魔法を使えないから分からんが、王族が欲しがるほどの魔法量増大アイテムなら気持ちはわかる」
「リヒトさん、頼むから売ってくれ。こんなチャンスを逃す魔法使いなんていない」
「1個いくら出す?」と相場が分からない俺からは値段を言わない。
「8個・・・っていうのは贅沢すぎるか」と下を向きながら話すバンジー、1個で金貨1枚の換算か。メイプルが昨日7個食べてたんだけど。
「いいよ、売る。あと、これから時間あるか?」とダライとバンジーに話しかける。
バンジーは買えるのが分かり泣きそうなほど喜んでいる。そんなに価値あるのかよ。とりあえず、食堂では迷惑なので裏の広場に移動する。




