サブスト6 追うものと追われるもの
第2回更新祭を明日1/31に実施します。
明日よかったらお付き合いいただければ幸いです。
ソウイチロウとオトハを追う予定だったカナデはすぐに匂いを探した。どうも同じグーム公国でも出発地が違うことはあるらしく、二人の匂いどころかクラスメイトのモノすら感じられなかった。
『これは予想外だったなぁ』と森の中でカナデは独り言ちる。そして、自分の身を守るために選択した隠密スキルをすぐに使い始めると、よく分からないまま頭の中に浮き出る地図を観察する。ハンター特有の隠密は、魔法とは異なることをカナデは知る由もない。
『この赤点とかが人・・・あと動物って感じね。すぐ隣の植物がマップに出ていないのだから』と、これからの行動へと展開していく。移動している2つの点に注意を払うことも忘れない。衣類のポケットを探ると銀貨30枚が入ってた。カナデはすぐに一定速度で移動する2つの点の方向へ向かう。
カナデは3つの不安を抱えていた。まず、周りのクラスメイトがそれほど固まって動いていないこと。次に隠密では敵と認識できるモノがいるのに自分が武器を何ももっていないこと。最後はこの世界がどれほど他人(クラスメイトを含む)を信用していいのか判断がつかないことだ。
そんな不安から素早く身を隠しながら森を出たとき、目的の男女2人が街道を早足で歩いているのが見えた。大きな声で呼ぼうと思った時、彼女たちに向かって森から黒いナニカが飛び出した。カナデは考えるよりも早くに叫んでいた。
「オトハ、ソウ、危ない!!!」
声が届いたのか、二人がゆっくりと振り返るのが見える。カナデは瞬間的にナニカに向かって走っていた。想像以上にグングンと加速する自分の身体に『おっ、おっ、おおお』と心の中で悲鳴をあげる。オトハにほぼ10mと迫ったところで、イノシシみたいな獣にカナデが追いつく。止まることができないと悟ったカナデは、そのまま飛び蹴りに移行する。こんなことをするのは小学校の空手以来だと一部冷静な自分がいた。そのときの相手はもちろん健人だ。
ドォッム!!!
鈍い音とともに獣の進行方向を変えることに成功した。蹴った感触は自動車のタイヤで、飛び蹴りでダメージらしきものが入った気がしない。仮に飛び蹴りが外れても、ソウイチロウが獣を受け止めるような位置どりをしていた。相変わらずの紳士的な行動に少し安心する。
「あれ武器なしで何とかなる?」と後ろを振り向かずに確認をとるも返事がない。
「ねぇ、無視すんなよ。わたしがバカみたいじゃない?」と振り返るとソウイチロウとオトハの目は私の顔をガン見していた・・・。
「カナデだ!わかるだろ!!」獣が突っ込んでくるのを躱す。
「カナデか。武器は街道の石しかない。街まで避けながら行くぞ」とソウが言う。確かにそれが正解かも。
「水魔法『ウォーターボール』って出た!!!あっ・・・」とオトハが空間に拳大の水を出すも、すぐに地面に跡を残して消えた。
「オトハは何がしたいんだ!!!」と大声をあげた私を責めないで欲しい。獣が蹴りを入れた私を集中的に狙っているのだから気も立つのは仕方がない。
激しい呼吸を繰り返す獣の突進をなんども躱し、街に少しずつ近づく。街から助けに来てくれるのでは?と期待していたところで、獣は森へ戻っていった。なんか中途半端だな、と思わないわけでは無いが大きな怪我も無く助かったのだと実感が湧くと疲れが出た。
「ほんとなんなのよ、ここ」と深く息を吐く。ソウイチロウとカナデも同じような気持ちなのか、表情も似たり寄ったりだ。
「ねぇ、カナデなの?ほんとに?」とオトハに確認される。
「ドットの耳を撫でられない私が獣耳を選ぶのは必然だよ」と笑いながら答えると、オトハは安堵の表情を浮かべている。ソウイチロウは獣耳が気になるらしく、珍しくテンション高そうな顔をしている。異世界効果か?
疲れた私たちはその場で座り込む、見晴らしも良く不意に獣に襲われる心配はないだろう。もう街の入り口も見えている。息も整ってきたところでオトハが口を開く。
「街からも私たちが獣から逃げていたの見えてたよね。街に入る時どうしようか」安定のオトハがこれからの方針を決めるために言う。これからの事、この異世界でどう行動するかを含めて現状の確認をしあう。




