アイルランダーの歩き方
冒険者ギルドを出てから周囲を確認しつつ宿:ピコ鳥の休息に戻る。3泊分を先に支払うことを厨房のマスターに伝えると、メイプルが「あと3泊したらどこか行くの?」と訪ねてきた。冒険者だからね、とそれとなく応えて頭をなでる。
ドーダの件がどの程度の騒ぎになるか不明だが、最低でも3日間は冒険者ギルドには近づかないことにする。今日は頭まで被れるローブや片手剣を見て回ることに決めた。
こないだ目当てをつけた武器屋に入るとドワーフがカウンターにいた。ちょっとロマンがこぼれ落ちそうになり、それだけでいい武器だなぁとか思う自分。相手はものすごく怪訝そうな目でこちらを見ている。
「すいません、片手剣を見たいのですが」
「その木剣はお前のものか?」俺の要望をスルーしたドワーフは腰に装備しているものを指す。
「えっと、大事な人が作ってくれました」
「ちょっと見せてくれ」
「いや、あの、俺の大事な木剣なんで」
「わかっとる!!早く見せろ」
いやいやいや、オッさん、ぜんぜん分かってないでしょ!!俺は片手剣見に来たんだよ。「じゃぁ、替わりにアレ見せて」と刀を指すと、ドワーフは歯噛みしている。
「絶対に落としたり、抜いて構えたりするなよ」とよっぽどだったのか刀を渡してきたので、こちらも木剣を渡す。
「すごいな・・・これ業物ですか」と口にするとドワーフの眼光がするどくなる。
刀は藍色の鞘に隙間なく収まっていて、鍔も欠けがなく綺麗だった。ただ、なんとなく漂っている雰囲気が普通の刀じゃない。室内にはたくさんの剣や刀があるのに素人の俺でも目が惹かれる。あぁ、これ木剣と一緒で魔力を通しやすそうなんだ、と鞘に入っててもわかる。
「作ってくれた方に感謝するんだな」とドワーフが木剣を返してくれた。
「それだけはいつも忘れません」とグウェンのことを褒められてニヤけてしまう。
「それの代わりとして考えているならその刀はありえるが、それ金貨3枚分だぞ」と商売っ気のない声が響いた。いや、持ち金全部でもそんなに無いし、ってか木剣がそれほどの価値ってことにビビる。グウェン、シュエルに氷魔法で撃たれるだけじゃないんだな。
「他に片手剣もいくつからあるが、その木剣の代わりとなるとな。しばらく大事に使うべきだな」とこちらの懐事情も見抜いているのかドワーフは続けた。助言にお礼を言い店を出る。ここのお店は他の店より刀が多いので次の目標とする。刀はやっぱりロマンだとし、なによりも軽くて鍔迫り合いなど出来ない俺には合っている武器だ。
流通している通貨は、金貨1枚=銀貨100枚、銀貨1枚=銅貨100枚なので計算はとても楽だ。ドーダの換金は金貨3枚で支払われてもいいのだが、冒険者は使用頻度の高い銀貨を好む。特に駆け出しの俺みたいなのが金貨を持っていたら、支払いで見せた時点で追っかけられることになる。
ちなみにマジックポーチには金貨30枚くらい入っているが、親のお金だし万が一の事態以外では使う気にもならない。もう自分で十分に稼げるのだから、7歳だけど。
防具屋では目当てのフード付きローブを買う。色はあまり選べずベージュ色を無難に選んだ。欲しい色のローブは付与効果があるらしく、『魔法向上(弱)』『物理耐性(弱)』等の付与になると金額が跳ね上がっていた。ただ、すっごくかっこよかった!!!まさにMMORPGの上級者装備みたいでテンションは上がる。店員に『はやく安いローブ買って帰れや』的な視線を受けていたが全く気にせずガン見した。女性が宝石に目を奪われる気持ちが異世界でわかった。思わず使わないと決めたばかりの金貨に手を出したくなったのは心のノートに留めている。
買い物も終わったし、このまま宿に帰っても良いのだが、どうも鍛錬が足りていないので森に向かうことにする。ギルドでは西地区の森(魔族領の方向)にはそこそこの魔獣がいるらしく、推奨ランクもD以上だった。ジャイアントドーダと戦えたのだから良い鍛錬になるだろうと踏んで俺は向かった。




