サブスト5 ソウイチロウとオトハの旅路②
上野総一郎の視点です。
総一郎は昂ぶっていた。夢にまで見たなろう系小説の世界が目の前にあった。街道はイメージそのままに、それほど古くない馬車が通った跡がそこにしっかりと残っている。そんな俺の気持ちを知らずに乙葉は自分が”オトハ”で登録し、姓がなくなったこと、それと取得したスキルの話を始めた。治癒魔法を取得しているあたり、なろう慣れしてるじゃないかと感心さえした。
「俺は片手剣技術を中心に肉体系強化スキルを選んだ」と熱い追加説明をしたい衝動を堪えるのに精神を使ったほどだ。自分がここまでテンションが上がった事がないのは自覚している。これでは、なろう系ヒャッハー人物になるだろう。じっとしていられず、街道沿いの街を目指すようオトハに提案した。
「そうね、行きましょう。助けもこないでしょうから」とオトハは淡々と了承する。その冷静な雰囲気と俺との温度差がすごく、純粋に感心してしまう。おかげで少し頭が冷えた。
「奏は見かけたか?」とオトハに話しかけるも、首を横に振るだけだった。どうやら他の色を選んだようだ。奏なら”青”を選ぶ可能性もある。あと気になるのは、健人くらいか・・・分からんな。それにしても、オトハが小部屋の本を読んでくれて助かった。あそこで踏みとどまる発想がなかった。
焦りの原因は憧れだけじゃなく、この世界での自分の体の変化があったからだ。あきらかに強く、早くなったのが実感として分かる。そして、剣で道を切り拓ける可能性は十分あるだろう。しばらく歩いたところで街が見えた。
早く装備を整えたい気持ちが逸り、軽装のポケットの銀貨を握りしめ早足になる。横を向くとオトハも同じ気持ちだったのか、笑って早足に応えてくれた。




