ドーダは多くを語らない
〜前回のあらすじ〜
ドーダを複数倒し調子に乗っているとビッグドーダ(仮)に襲われる。
なんとか倒したものの、森に巨大な穴が空いたため塞ぐ作業をする。
街に戻ると時刻は夕暮れになっていた。
閉門まえの夕暮れ刻になんとか街に入ることができた。門番はたまたま昨日腕組みしていた人で、俺のことを覚えていた。毎日何人もの出入りがあるのに印象に残るほどダークエルフは珍しいのだろう。特に挨拶程度しか話していないのに冒険者タグを見せると「初日でEランクまで上げたのか」と反応した。
「あっ、リヒト!!おかえりなさい」とメイプルが配膳を片付けながら声をかけてきた。”おかえり”って言ってもらっただけなのに妙に嬉しかった。ほんとうに看板娘なのかもしれない、食堂は混み合っている。
「マスター、今日も宿泊できるか?」と出発時に泊まることを伝えていなかったことを思い出すと、応えたのはメイプルで「リヒトの部屋は変更ないよ」と鍵を渡された。できる子なのね、メイプル。部屋に入り、ウォーターボールを中空に浮かべて簡単な水浴びを済ます。
夕飯時刻の終わりが近づいており慌てて食堂に向かうと、メイプルにカウンターを案内された。
「ねぇねぇ、今日の冒険を聞かせて」と隣の席に座ってねだられる。メイプルが部屋を確保してくれてたおかげで泊まれるので面白おかしく話を伝える。メイプルは「えぇ〜!!」とか、「気持ちわるっ!!」と、反応と一緒に表情がコロコロ変わるのが面白く、ついつい最後の大物の話までしてしまった。
それが他の冒険者に聞かれているとは思いもしなかった。
「おいおい、それジャイアント・ドーダじゃないのか?」と片方だけ金属製の肩当てを装備した冒険者が話に入ってきた。彼の後ろには背の高い男とシーフ風の女性、それとローブをきた魔法使いっぽい人がいる。どうやらメイプルの反応がひとを呼んだようだ。
「ジャイアント・ドーダは知らないが直径3mはあったぞ」メイプルの反応から常連客と思う。
「3めっとるってなんだ?」と肩当ての男が話す。
そうか、単位が違うんだった。
「いや、そこのテーブルくらいの口だった」と彼らのパーティーが座っている丸テーブルを指差す。
「おいおいおいおい、いくらなんでも言い過ぎだろ。そんなの出たらソロじゃ敵わないぞ。おまえ、冒険者ランクは?」と聞かれる
「Eランクだ。昨日なったばかりだ」と話した途端にテーブルで爆笑が起こった。
「おまえ、メイプルちゃんにそこまで話しちゃダメだろ?俺は許せんね」とひとりで盛り上がった肩当て男が言う。おまえだけヒャッハーしてろよ、とか思い始めていたらメイプルに手を握られた。その顔はちょっと泣きそうだ。ごめんな、メイプル。
「なぁ、メイプル」とできるだけ落ち着いた声で話しかける。
メイプルの少し上空や頭の上、爆笑したパーティーのテーブル上に大小さまざまのウォーターボールが浮かべた。ウォーターボールの中身は空洞にしたから食堂の明かりをキレイに照らして間接照明のような演出だ。
「うわぁああ!きっれーい!!!」とメイプルが目を輝かせた。
それとは正反対の反応をしたのは爆笑パーティーだ。特に魔法使いっぽい人は、「ちょっ、これって『ウォーターボール』しかも詠唱なしで・・・この数」と椅子からすべりこけた。他の人たちは何も言わない。ちょっとしたショーみたいだし、キレイだとか思わないのかな?
「ねぇ、冒険者のお兄さん。俺の話を信じる信じないはかまわない。でも、ウソは言ったつもりは無いし、メイプルを傷つけることや騙すようなことはするつもりもない」と静かに気持ちを伝える。
今度は浮かべたボールを輪にして右から左に小さいボールをくぐらせる。メイプルは「きゃははは、おもしろーい」と声をあげる。かわいいなぁ、メイプル。それに比べてパーティーからはリアクションがない。
なんかダダ滑り芸人になった気持ちで、「おい、大丈夫か?」と俺が声をかけると背の高い男が「わかった。すまなかった」と謝罪を述べた。あんたじゃないよな?とか思わないわけじゃないけれど、メイプルが悲しむのはイヤなのでパーティーに背を向けてカウンターに戻る。
なぜかマスターが厨房からこっちを見て口をあけていた・・・あんたまた焦がすよ。




