アイルランダーの冒険者ギルド
門をくぐり、人通りに任せて歩くとメインストリートらしきところにでる。防御壁で見えなかった町並みは中世ヨーロッパのそれだった。ただ所々違うのは魔法文化の発達のなのか、それとも魔獣のせいなのか見たことのない物品や馬とは呼べない代物が貨車(馬車でいいのか?)を引いているところだろう。
うまそうな匂いのする露天で食べ物を買い、ついでに冒険者ギルドの場所を聞くと親切におばちゃんが教えてくれた。恰幅のいいおばちゃんは、最初、俺が声をかけたときは明らかに驚いていたが、雑談しているうちに「いってらっしゃい!!」と背中を叩かれて送ってくれた。叩かれて送り出されるなんて、小さい頃の奏の母ちゃんみたいだった。奏もこっちに来てるだろうが、岩本家は家族仲が良かっただけに辛いだろうな。あいつ、怒ったら訳わからん行動するらなぁ〜。
通称:岩本母ちゃんの店で買ったタレがかかった肉の串焼きは、甘じょっぱく、肉もサクサクしていて不思議な感触が良かった。なんとなく不思議・懐かしな味にまた来ようと思う。
おばちゃんの道順通り行くと、3階建と思われる冒険者ギルドに着く。建物には水平の剣が並べられたシンボル?みたいなものがあったので冒険者ギルドで間違いなかった。入る前に自分がダークエルフで変に目立つことを改めて意識して扉をあける。
中は受付カウンターと一部の冒険者用の雑貨らしきものが置かれたスペースが右手にあり、左手にはパブみたいな食堂兼酒場のようだ。パブは結構広く吹き抜けになっていて、階段の先には2階席が一部見えた。今はどちらにも少ししか冒険者がいない。
「冒険者の登録をしたいんだ」と受付で書類処理をしているお姉さんに話しかける。
「はい、冒険者の登録ですね。えっと、ダークエルフの方・・・ですよね?」と目をパチパチしている。
「ダメなのか?」
「いえ、そういう意味ではないんです。エルフの方の担当はしたことあるのですが、ダークエルフの方は初めてお会いしまして、失礼しました。」と頭をさげる。いや、悪いことじゃないと思うのだが、俺が偉そうなのか?と小心者日本人気質が出る。
「気にしないでくれ。それより手続きと手頃な依頼をしたい」
「わかりました。では、登録自体は申請書を記入してもらって、特技欄もお願いします。あと、ギルドの制度について説明は必要ですか?」と顔をあげて笑顔で対応される。美人なお姉さんに笑顔で対応されたら悪い気もしない・・・と顔をよくみたら受付嬢の頭に猫耳がついていた。全体的に黒いが先だけ白くなっていてピコピコ揺れている。
どうやらこちらの視線に気がついたらしく、「獣人が担当だと嫌ですか?」と困った顔で言ってきた。無下な視線と感じられたようで、この世界では獣人に差別があるようだ。
「いや、こっちこそ失礼した。これでお互いに帳消しにしてくれ」と慌てて訂正すると、口に手を当てて笑った。
「はい、リヒトさんですね。片手剣と火魔法が使用できるんですね。魔法が使えるのでしたら、どちらかのパーティーに入る予定はあります?」と、もう緊張していない受付嬢から聞かれるもソロ活動でしばらく行く旨を伝える。アイルランダーでも魔法使いはそこそこいるらしいが、だいたいがパーティーに加わっているらしい。どんな魔法使いかまではさすがに教えてくれなかった。
「登録したばかりですが、リヒトさんは魔法が使えるのでゴブリンを狙うといいかもしれません。10体倒すとEランクにあがれます。討伐部位は魔石を持ってきてください、こちらで判定します」
「ちなみに今まで倒したゴブリンの魔石があるんだがダメか?」と皮のカバンから出す。
「問題ありません。さっそく判定にかけます。買い取りも冒険者ギルドでいいですか?」と話すので任せることにした。物価や魔石の価値もわからないし任せた方が信用されるだろう。判定の間、依頼掲示板が酒場の方にあったので、他の依頼を物色しながら判定結果を待つ。できれば、この街でDランクを目指しながら情報収拾をすることにする。




