ヴェルの進路相談
王の日(休養日)だったのでヴェルに髪を切ってとお願いする。前にシュエルに切ってもらうよう頼んだら「そんな金髪切れるわけないでしょ!!」と断られ、それから幼なじみで金髪に抵抗のないヴェルに切ってもらっている。案外、頼んだ通り切ってもらえるので上手なんだと思う、解体のナイフ捌きと一緒で。
「ねぇ、リヒト。最近、コソコソとどこいってるの?」とハサミの音を響かせながらヴェルが聞く。
「散歩だよ。なんで?」あの気配が薄いのはヴェルじゃないと思うが確認は念入りにする。
「だって、私が狩りから帰ってきて家に行ってもいないし、夕方には私も後処理あるから遊べないしさぁ」
やっぱりヴェルは白か。そもそも俺に後ろを取られるヴェルにあの隠密は使えないか・・・。
「そっか、一昨日の狩りはどうだったの?」
「グウェンさんとリーバイおじさんと一緒。いつもよりかは多かったかな」
リーバイおじさんはヴェルのお父さんと遠い親戚で、グウェン(父さん)とも仲がいい。ちなみにヴェルのお父さんはシルヴァといい、村唯一の鍛冶士で、ロマンが溢れ出す工房を見せてもらったことがある。流石に6歳じゃ鍛冶技術があってもあの熱量には耐えられない。あれ?『クール』使いながらならいけたのか。
「ねぇ、シルヴァさんは工房にいるの?」
「リヒトは鍛冶が好きねぇ・・・今日は王の日だから私が髪の毛切ってるんでしょ!」と休養日だったことを思い出す。
「不思議なんだけれど、『王の日』で働いている人っていないのかな?」
「そりゃぁ、城の護衛だったり、魔王様の側近だったら休みもないんじゃない?こんな村じゃ毎日休みみたいなもんだよねぇ〜」とハサミを片付けながらヴェルが言う。
「ヴェル、ありがとう!!『ウィンド』」と魔法でまとわりついた髪を飛ばす。文明は前世ほど発達していないけれど、魔法文化はかなり便利だ。
「いいえ。それじゃいつもの報酬をお願いします」と手を出してニッコリしたヴェルが言う。
「はいよ、魔石3つ」お代として魔石3つを渡すが、お互いにどれほどの価値なのか分かっていない。
「ほんっとただの散歩で魔石持ってるんだもんねぇ〜」と渡された魔石をすぐに自分のポーチにしまう。
「ところでさ、リヒトはこれからどうするの?」
「どうするって?」と最近考えていたことを言われて動揺した。
「だって、もうすぐ7歳でしょ。グウェンさんが近隣を治めているけれど、後継ぐの?」
グウェンは近隣の村を治めるのが主な仕事で、魔獣の狩りも被害が出る前に行ってのだと先日知った。童顔のダークエルフ嫁に氷魔法を打たれるのが仕事ではない。
「どうしよっかなぁ。魔族学校に行ってもっと勉強するのも良いけれど、村も好きなんだよね」と、思っていることを言う。前世の生活の利便性や娯楽は良いけれど、この村の生活と魔法は楽しい。あっ、マンガが無いのだけが非常に不満があるか。
やっぱり五分五分かなぁと考え事をしていると「私もリヒトと・・・」とヴェルがゴニョゴニョ言っている。なんかダークエルフなのに頰が少しだけ赤くなっている。思春期か・・・と中身が17歳人族+ダークエルフ歴まもなく7年だと思ってしまう。
「またね!!」とラブコメ路線を蹴飛ばし家に戻る。
「今度一緒に狩りにいこうね!」と後ろから声が届く。どうもヴェルは、『俺が狩りに行きたくない』とグウェンに言ったと思い込んでいる。実際には、俺にお声がかかってきていないだけである。これはソロ縛りの呪いなの?
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家に帰るとグウェンが珍しくリビングにいた。テーブルしかない簡素なリビングで、窓からは外の状況がいつでも見えるような造りだ。片手にジョッキを持って椅子に座っている。
「リヒト、もうすぐ7歳だな。明日、父さんからプレゼントを渡そう」と余り感情を出さないグウェンにしては陽気だ。
「ほんとっ!!やった!母さん、父さんがプレゼントくれるって!!」とキッチンのシュエルに伝えに行くと、シュエルは俺の髪をただ撫でた。どうした、母ちゃん?
「ほんと、良かったねリヒト。もう7歳になるのね」と撫でた手を止めずに口を開いた。少しだけ寂しそうだった。
本日の献立
・エルフ森の恵み、つまみ豆(お好きなだけ)
・草餅入りの芋らしきものの煮付け(1皿)
・イグル(イノシシ型の魔獣)の燻製肉
・デリッグ(日本のニワトリみたいの)の卵
それにしても、ダークエルフはお腹いっぱいにすぐなりやすいみたいで、省エネかもしれない。特に覚醒した頃は肉が食べたかったのに、今じゃ菜食の比率が圧倒的に高い。そのくせ背たけは伸びていて、既に160cmくらいはあると思う。7歳前に160cmあったら前世ならビビるな。ちなみにグウェンは180cmくらいで、シュエルでも170cmはあると思う。長身、美形路線なので自分の将来が楽しみでもある。
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自分の部屋に戻り、習慣化された就寝前の魔法の訓練と剣のイメトレをする。特にこないだのゴブリン6体との実戦は多くのことが学べた。それらのおさらいをしたあと、グウェンからのプレゼントが気になった。ただ、考えても仕方がないのは今の状況からも明らかで、前世でも割り切りの早かった俺はすぐに眠りについた。




