周辺の探索
戦闘描写が少しあります
『ハイド』の練習をして1ヶ月程度が過ぎた。こちらの世界では、1ヶ月が30日、1年が13ヶ月ある。曜日は、刃、罠、狩、牙、王の物騒な5曜が魔族領内で、他の領内(つまり魔族以外)は火・水・風・土・光らしい。俺が覚えたのはもちろん後者だ。『王』が休みの日らしい・・・怖っ!!
最近、外出もひとりでするようになり、村から少し離れた湖まで『ハイド』で来ては魔獣を狩っている。あれだけ部屋で練習すると慣れたもので、こないだは狩りに行く前のヴェルに背中から声をかけたら殴られた。案外、狩人系のくせして膂力がある。ちなみに皆が行く狩りには連れてってもらっていない、理由は不明だ。
『サーチ』と念じる(詠唱しなくてもできた)と、ここ2・3日から薄っすらとした反応がある。どうも誰かにつけられているみたいだが、考えた末に気が付かないフリをすることにした。理由は敵意が感じられないのと、不意打ちがない魔族領内ではかなり安心ができるからだ。逆にこちらから追跡しても会ってくれるか分からないし、やっぱり知らない人って怖いじゃない。
「さて、今日の獲物はどうしようか・・・あっ、ゴブリンがいる」と湖から村と逆側の北西方向に向かう。ゴブリンなら肉を食べるわけではないし、魔獣だから狩りをしても誰にも怒られないだろうと積極的に実践相手に選んでいた。過去の選択肢のことはしらん!!
狩人のヴェルに気がつかれない『ハイド』(もう隠密と呼んでいる)にゴブリン達が気づくことはない。樹の上から使用する魔法に意識を込め、狙いを定める。『ファイヤーアロー』で1体の眉間を貫くと、気が付いたゴブリン達が周りを見渡し騒ぎ始める。まだ見つかってはいない。
次に訓練中の『ウォーターアロー』を『ファイヤーアロー』と同時に出し、それぞれ腹部、頭部に当てて2体を退ける。残りは3体となり、流石に弓をこちらに構え始めるゴブリンもいる。
隣の樹に飛び移り、そのまま樹を蹴り出し下降する。腰に備えていた訓練用の木剣で1体目が反応する前に首に水平に振るい、戦闘不能にする。一番後ろのゴブリンから矢が飛んでくるのを察知し、後ろに飛び回避する。牽制の意味で『ファイヤーアロー』でお返しも忘れない。
2体目は薄汚れた剣で右袈裟に切りつけてきたのでゾッとするも、木剣で受け流すことにし剣道の左胴のように振るうと突き破った後に鈍い手応えがあった。すぐに弓を引いていたゴブリンに向かったが、牽制のファイヤーアローが偶然にもクリティカルですでに終わっていた。
流石に緊張したのでひと息を付きたかったが、全てのゴブリンに火力調整をした『ファイア』でトドメを刺し、ゴブリンの魔石を腰のポーチに回収する。こうしておけば手も汚れないし、『ウォーターアロー』の痕跡も消せる。今は水魔法適性を知られたくないので予防策にもなるだろう。
湖まで戻って一息ついた。さっきの戦闘でもそうだが、明らかに自分が少しずつ戦闘に慣れてきているのを感じる。日本だったらケンカらしいケンカなんてしたことが無いし、体育の柔道や剣道くらいしか格闘的なことを経験していない。あれは嫌な思い出しかなく、もう日本の授業から無くなっていいと思う。経験者に勝てるわけないっつの。
そして、同じく、この世界にも馴染んできている自分を自覚する。初めてゴブリンを見たときは、その容姿と最初の選択肢を思い出し軽く吐いて逃げたし、湖に映った自分の姿を見て「なにこのイケメン!!!」としばらく呆けていたこともある。6歳ながらに少しウェーブのかかった金髪に褐色の肌、瞳が少し紫がかった深い赤で、ダークエルフ特性なのか端正な顔つきである。将来イケメン確定で、これなら鼻毛出ててもイケメンだわ、出さないけど。
伸びをして休憩を終えると、湖に映った自分が目に入った。そろそろ後ろの方が髪伸びてきたしヴェルに切ってもらおう、と村に戻ることにした。帰るときにも『サーチ』&『ハイド』の隠密セットを忘れない。狩り前にあった薄い気配はすでに無くなったことを確認できた。




