信号機の点滅は注意
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ベニーラの説明はきれいにまとめられたレポートのようだった。
1年くらい前にアイルランダーの冒険者ギルドでモーダンに出会ったとのこと。そこで魔法使いとしてランクの高いパーティーに入りたいと話し、デオドラのパーティー”尖り耳の戦慄”に入ったらしい。真面目に話すベニーラだが、パーティー名に吹いたのは俺だけじゃなかった。表情が真面目なだけに余計に笑いを堪えきれず、腹筋を鍛えるはめになった。
入って間も無くサードリアに移動し、ダンジョンの宝箱から”ガニラウスの杖”を見つけたのはモーダンだった。モーダンの鑑定に間違いはなく、信用していたメンバーは言われるがままベニーラに装備をさせた。その頃からベニーラは意識が無くなることを自覚していたらしい。
デオドラとジョイレゾの2人がダンジョン探索を続けたいと話したが、ベニーラとモーダンの2人に押し切られる形でナビカ帝国に進んだのは最近のことで、やっと北の森で連携して狩りを始めたところで今回の騒動に至ったらしい。
「いつからジョイレゾは気がついたの?」オトハが聞く。
「勘だけど最初に”怪しい”って感じたヤツは大体ダメなんだよ」
「女の勘はバカにならん」
カナデが妙なイイネを入れる。ソウは話を聞きながら野営の準備をしはじめた。おまえが聞きたい、って話したんだよな?とか皆は思ってもなぜか本人には言わない。
「んで、ジョイレゾはどこからパーティーに入ったの?」
話の流れで聞いたのに空気が変わった。
「そこまで気がつく?」ジョイレゾが呆れた顔で俺を見る。
「なんの話だ?」デオドラはずっとそのままでいてください。
「いや、分からん。女性には謎がつきものだって俺は知っている」
本当に女性の謎について知っている俺が答えると何事もない雰囲気に平面状は戻った。下手なことを言うと電撃でパチンってなるらしい。情報元は童顔商人が言っていたので間違いない。
「これは俺の個人的な意見だけれど、ベヒーモスを倒せるレベルじゃないのは明確で、ナビカ帝国に嗾しかけたかっただけだと思う」
「理由は?」ジョイレゾが問う。
「どこかの偉いさんがナビカ帝国に損害を出すための計略」
「自分の命に代えても?」
「そうなるね。俺には理解できないけれど」
誰も何も言わず場が静かになる。野営を準備をテキパキとするソウの音だけが響いていた。もう日没まで時間はさほどないだろう、他の冒険者パーティーも同じく野営の準備をしているのがチラホラと視界に入る。
「でもさぁ、ケントは良く気がついたよね」カナデがしみじみ言う。
「美人への配慮は忘れない」
「ほんっっっとイラっとする」
そうオトハが声を発すると俺の横になぜか『ウォーターバード』が現れた。首を傾けたままジッとこちらを向くウォーターバード、その表情には冷たい殺気しか感じられない。
「これって・・・魔法なの?」ベニーラが呆然としている。
「あのオトハさん・・・」
なぜベヒーモス相手にも使っていない魔法を今使う?
「ケントはだらし無さすぎる!!!」
オトハの金切り声が響き、周りで薪拾いをしていたのか他の野営から喧騒が聞こえた。
「ちょっと!!止めなさいよ、冗談なんだから」
そう言って止めに入ったジョイレゾが説明を始めた。要は俺が『アナライズ』で”ガニラウスの杖”を呪いの品と判断してくれたため、対応してくれたとのことである。これはジョイレゾが俺の『アナライズ』を受けて、それに気が付いたための推論だろう。道理は通っているな、と俺は聞きながらフンフンしていた。
「あの顔、絶対に他の理由だな」
いままで沈黙を保っていたデオドラが不意に呟いた。そういう勘は持ってるんだな。目を向けると紺色の目がこちらを捉えていた。イケメン系統なのに”尖り耳の戦慄”というパーティーをどういう気分でつけたのか問い詰めたい、そう考えていると吹き出してしまう。
「ふっ」漏れ出す音を手で隠す。
「てめぇえええ!!バカにしただろ。ちょっと勝負しろや」
そろそろ野営をしている他の陣営から苦情が来そうだ。そうやって俺たちは賑やかな夜を過ごした。ソウはなぜかデオドラ達の分の食事まで用意をしていた。お気に入りのBBQ串を出してまでの歓待である。俺たち3人は内心『どっちだ?』という意思疎通を行うも、結果はでないまま夜は更けていった。




