帝国までの道のり
最初の野営から3日が過ぎた。エスも大人しくついてきている、というよりかは野営の手伝いもしているくらい馴染んでいる。エスの土魔法は秀逸で、野営時に土魔法で簡易的な家を作ってしまうのだ。これに気を良くしたのは女性陣だが、「土魔法で出来ているのだから入った瞬間に圧力で殺すこともできるぞ」と忠告だけはしておいた。俺はもちろんエスの作成した快適な部屋で寝ている。
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そういう俺たちも飯時にマジックバックから材料を出す事をまったく気にしなくなった。最初の晩こそ料理が出来てから目を覚ましたエスは気がつかなかったが、朝食の際にマジックパックからポイポイと材料を出していくオトハやカナデを見て目を丸くしていた。
朝の鍛錬でわかった事だが、オトハだけじゃなくソウもかなりレベルが上がっていた。誰かに習ったのでは無いか?というくらい実力が上がっていたが、自己修練の賜物かもしれないので聞いてはいない。3人に抜かれるのは流石に嫌なのでいつになく俺も集中して鍛錬をする。
恥ずかしい話だが、イヴォーグに出会った当初、俺よりも弱いと本気で思っていた。それが強い者ほど実力を見せなくするのが分かった。無駄に覇気を漏らしているうちはまだまだ若造ということだ。
いまのところ俺の独断による実力推定ランキングでは、①ローズ、②グウェン、イヴォーグ、③カルロ・ヴァーズ、④シュエル、⑤マスター(焦がしの名人)である。まぁ、合ってる間違ってるとかは分からないけれど、少なくとも俺が勝てる要素がまったく見出せない。不意打ちすらできないだろう。
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馬車を見つけて4日目で予定通り首都ナビカが見えた。そびえ立つ防壁はアイルランダーよりも当然のように高く、防御力も相当高そうだ。帝国のカラーなのだろう、出入り口の周りに青が塗られていた。
「ここら辺で私は離脱した方がいいかな」エスが切出した。
「おう、ありがとな」
お礼を伝えると、エスが体を震わせ、ビックリした顔で「なぜ、あなたがお礼をするの?」確認してきた。いや、道中にエスがいたおかげで快適な部屋で過ごせたわけだしと説明すると、エスは眉間に手を当てている。「あなた、その甘さはなくさないと帝国じゃ騙されるよ」と忠告された。「おう、気をつけてな」と別れを告げると、明らかによろめいていた。大丈夫だろうか、エス。
振り返ると女性陣どころかソウにまでジト目で見られた。
門は大きいので見えるが道中は距離がまだある。首都に入ってからの行動と現在の実力の確認をお互いにする。ソロ活動で行こうと考えていたのだが、エスにもバレてしまっており、いまさら「知らない人です」は通じない。結果、パーティーとして行動することを決める。あとは、別名で行動するかどうかだけである。これはイヴォーグの忠告に従って、俺の分はもらった冒険者タグを使うことにした。
「問題はウソを見抜く魔道具だよなぁ」
「そんなものがあるのか?」ソウが珍しく話題にくいつく。
「あぁ、アイルランダーの冒険者ギルドにもあったからメジャーだと思う」
「素材換金時は3人の誰かがやって、パーティー登録はしなくて良いんじゃ無い?」
4人で基本的に行動しているが、パーティー登録していない者が冒険者ギルドにどれだけいるかが不確定である。ただ、現実としては妥当な案だと思い方針を決める。パーティー登録するメリットはランクアップによる信頼度の確保、指名依頼の受注可否くらいで、デメリットはギルドが冒険者を管理できることか・・・。
方針も決まり、首都に入るための長蛇の列につくと、どんどん列は消化されていく。あまりにハイペースなので不思議に思ったのだが、魔道具を使ってまとめてチェックをしていることが分かった。最悪バレても俺だけで済むようにイヴォーグにもらったタグを持ち、3人とは距離を置くことにした。
緊張して俺達の番が回ってきた。
「それではこれから魔道具で確認を行う」門番の質からしてアイルランダーとは大違いである。明らかに装備品といい、強さといい段違いである。冒険者ランクでもB以上は確定だろう。周りには30人前後いて、モルモットのように黙ってチェックゾーンに入ると座るよう指示を受ける。
魔道具の色が赤になるとアウト、青なら問題なく入れる。問題は赤になった場合、どのような措置がされるか見れなかったことだ。できれば、ソウ達と違う団体になっていれば良かったと思わずにはいられない。
沈黙の中、
魔道具の色が赤に変わった
一気に騒つくゾーン
「黙れ、そのまま動くな!!動いたものは殺す」
無慈悲な門番の声に静寂が戻る。先ほどと同じ沈黙でも緊張感が段違いである。
「うるせぇ!!帝国などクソだ!」
急に俺の横の若者が立ち上がり叫び出した。
すげー心臓に悪い、と思ってドキドキしていると若者が俺を蹴飛ばしに来たので、クロスアームブロックで受け止めて足払いで転ばす。倒れた男はそのまま門番の方へ投げつけると、しゃがんでいる旅商人らしき人と目が合った。旅商人は唖然としていて「動いたものは殺す」と全体に言われたことを思い出し、すぐに俺は体育座りに戻る。
「まぁ、見事としか言いようがないな」
ゆっくりと当然のことながら門番は近づいてくる。俺に投げられた若者の捕縛は他の門番がしている。
「フードを取れ」帯剣に手を添えたまま門番が言う。
大人しく指示に従う。
「おぉ、ダークエルフか。何の用だ?」
「・・・観光です」
「おまえ、ふざけてるのか?」
「すまない。素材を売りたいと思っていたし、武器屋や防具屋巡りもしたいのだが」
さきに謝罪をしたのが効いたのか、警戒していた門番が帯剣から手を離す。
「他のものは?」
「反応ありません」
「では残った者は通っていい!!ただし、今あったことは口外無用である」
そう言って門番は通過許可をくだす。どうやら俺と話している間に2回目のチェックをしていたようだ。俺も立ち上がり、流れについていこうとする。
「またな、ダークエルフ」門番がそう言い、一瞬だけ殺気を感じさせるも俺は振り向くことなく門を通過する。スルーすることや自分の実力をボカすことが重要だとアイルランダーで学んだ。
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「ちょっと何ブロックして投げ飛ばしてるの!!バカなんじゃない!!」まさかカナデに怒られる日が来るとは思わなかった。いや、反射的に体って動くよね?そのための鍛錬を普段しているわけじゃないかと言い訳すると「それをコントロールするのも鍛錬」とソウがトドメを刺して来た。おまえ、エスの時の自分の行動を忘れてないか?
「まぁ、仕方がないね」オトハが珍しく軽い。
入った帝国の街並みは首都の名にふさわしく、防壁で見えなかった街並みは壮健だ。メイン通りが門につながっているかと思い込んでいたが、門の先には東に続いた道があり、その先の南北の通りがメイン通りの作りである。驚いたことに、見えるメイン通りは馬車3台は並行に走れるほど広いのだが、少し向こうに同じく広い通りが見えた。
「すごい広い道だね」
オトハは街並みに浮かれているのか上機嫌だった。ナビカ帝国に入ってからのオトハは明るくなった気がする。
「あぁ、一方通行って文化があるんだな」
「まぁ、人間が考えることだからね。利便性を追求すると妥当だと思うよ」
首都は中央に進む方向に傾斜が上がっており、中央には建物の隙間から城らしきものが見えた。明らかに都市設計がなされた上で首都ナビカはできたものだろう、見える範囲でも碁盤の目になっていることが想像できた。
それにしても異世界でも一方通行が考える人がいる、ということに驚くが、家もそう考えると同じような設計だ。似た容姿だと便利に感じるものや効率を考えるのも同じような過程になるのかもしれない。
初めての首都での生活が始まる。




