祭のあと
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祭の後、独特の空気が好きだ。なんというか終わってしまった、という喪失感と楽しかったなぁという気持ちが交錯して日常に少しだけ色を添える。日本では激混みの地元の花火大会とか、祭って感じがして好きだった。今では毎日が前世の祭なみに刺激的だけれど。
驚いたことに例年祭の次の日は、街中の掃除をすることに決まっているらしい。祭の参加者はもちろんのこと、冒険者で今滞在している者たちも参加対象としているところが凄いところである。宿に泊まっている冒険者や商人もこの日は皆で掃除をする。
「こういう時の風魔法ってすごいな」
「でも水魔法もすごいよね」
カナデとオトハの掃除の効率に周りが驚いている。粗方のゴミはカナデが風魔法で収集し、オトハの水魔法が街道をキレイにしていく。冒険者を引退したら二人で清掃の会社を開けると思う。納期も早く、これならば需要は高いだろう。
「祭で走ってる時も思ったけれど、この祭の仕組みで使われている魔法のクオリティがヤバイ」
「袋、豆、拡声器もかな?びっくりなレベルだよね」
「商人ギルドでやってるみたいだよ」オトハが事も無げに言う。
ソウは失恋?なのかショックから立ち直っていなく、口数が少ない。逆に口数がウザイほど多いヤツがいる。
ダライだ。
もうデレッデレなの。側から見ると明らかに鼻の下伸びてるし、時々思い出したかのように無駄にキリッってなるんだけれど、少し経ったらデレーっと音が鳴ってると思うほど重症だ。まさかとは思うけれど、イカニは部屋にお泊まりしてないよな?朝の掃除から一緒にいるけれど。
そんなことを考えているうちに掃除は持ちブロックは全て終わった。マスターも「オトハとカナデのお陰でかなり時間がかからなかった」と御礼にオーク肉のサンドイッチが振舞われた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
イヴォーグの店のカウンターには、ピカピカのブーツ、鎧、薄い手袋?みたいな品が置かれてあった。
「ブーツと鎧はフィットするか確認してくれ」
いつも通り愛想のない説明をカナデにする。カナデはオドオドしながらもブーツを履き替えた瞬間に笑顔になった。そんなに違うのかよ!と突っ込もうかと思ったところ、「リヒト、これ異次元だ」と先に回答があった。
○ミニドラゴンのブーツ
火耐性(中)
身軽(小)
耐摩耗性(中)
○ミニドラゴンズ・スーツ
火体制(中)
威圧耐性(小)
耐衝撃(中)
身軽(小)
○ミニドラゴン・スキン
火耐性(小)
素手摩耗防止
鎧は特にミニ・ドラゴンの明るい黄緑色が綺麗に加工されていて、スッキリしたデザイナが女性用らしく好感がもてる。性能だけじゃなく、格好も小洒落ている。
「それで、このスキンだけど使ったことあるか?」
「ないです」
カナデは自然とイヴォーグには敬語になっている。冒険者って基本的にタメ口らしいぜ、とか言いたくなるがイヴォーグ相手だと無理もない。あれほどイケメンだし、なによりも距離が近い。
スキンはとても変わっていて魔法具扱いらしく、装備すると文字通り素手に吸い込まれる。最初にカナデが装備していたときに「驚きの浸透力!!」と俺が言ったら、オトハがツボにハマったらしく声を上げて笑っていた。更に装備した本人が「まるで素手のよう」ってCMみたいなことを言ったら、オトハが声を出さずに悶絶していた。
「よく分からんが異世界の話か?」イヴォーグがぶっ込んできた。
「ん??イヴォーグ、異世界とか知ってるの?」
「あぁ、話に聞く程度だがな。実物はリヒトが初めてだった」
他の3人も唖然としていた。俺もかなり呆然としそうだ。
「いつから知ってた?」
「前に言ったよな?この世界には前金で全額払うやつはいないって」
本人的には俺に伝えていたらしいが、話を聞いていたクーデも呆然としていたから気がついていなかったようだ。そりゃそうだろう、前世で「異世界から来ました」って言われて信じるヤツなんていない。少なくともどこかの病院を紹介されるか、交番に連れて行くことになるだろう。
「そっか、だから親切に商売の仕組みを教えてたのか」
「あぁ、そういうことだな」
「親切なエルフだな、イヴォーグ」
真面目に言ったらハサミが飛んで来た。危ないからね、危ないからそういうの!!
そんなふざけた事をしていたら、急にイヴォーグが真面目な顔をした。
「ローズからの使いの件。リヒトに少し技術支援をしろって内容だった」
「それはどういう」
「リヒト限定の話だと思うが質問しないなら後ろの3人も付いて来ていい。クーデは店番な」
なぜかクーデに俺が睨まれる。仕方がないので舌を出して応戦すると顔が赤くなった。カウンターの先の小部屋を出ると左右に続く通路になっていた。そこを右に曲がり、左手のドアを開けると地下への階段があった。
「余計なことはしゃべるなよ」
後ろを向かずに前を歩くイヴォーグが言う。いつもの冗談を言える雰囲気ではない。後ろの3人も黙ってついてきている。ソウの喉が鳴る音が聞こえた。
「まず、『アナライズ』はリヒトの知っている通りだが、それを拒絶する魔法がある。『ブロッセ』だ」
「『ブロッセ』」と詠唱すると少し変わった感触がある。
「この状態ならよっぽどレベル差がない限り『アナライズ』を妨害できる」
「イヴォーグが俺に『アナライズ』したら?」
「ほぼ全て見える」
やっぱりイヴォーグは俺よりも強いのか。予想だが俺の刀の前の持ち主ってイヴォーグのような気がする。
「この刀ってイヴォーグの?」
「つまらん事を聞くな」
否定も肯定もしない。ただ、表情がかすかに曇ったように見えた。もう聞かないでおこうと思う、せっかくのシュエル以来の魔法講師なんだから。




