豆・豆・豆 その3
明らかに最後尾であるが、一定区間で猛り狂う女性陣が待ち受けているので問題はなさそうだ。解散は男性陣がいなくなってからのようで、俺が去った第1ブロック?はゴール付近へと回っているように見えた。『サーチ』が使えないので実際の動きがわからないのが不便だ。
「あらぁ〜」と言いながらすげぇスピードで豆を投げて来た女性に顔見知りがいた。
露店のおばちゃんである。
思わず顔付近に来た豆を歯で受け止めると、おばちゃんが光った。
「えぇぇえええええ!!!」おばちゃんは恥ずかしそうに頰を染める。
「これって・・・まさか」
「仕方ないねぇ、ほれ、オイデ」おばちゃんが手招きしている。
なんかオバちゃんから一定距離を開けると動けなくなる・・・なにこの仕組み。前世なら犯罪防止機能に活用したい。というか、豆まきみたいなイベントで使う機能じゃねぇえええええ!!!
おばちゃんの所に行くと首の後ろに手を回されキスされた。
・・・まぁ、いいんだ。嫌いじゃないし。でも、なんというか友達の母さんとキスするのって違うよな?さっきの戦士風女性はマッチョだけれど、魅力的だし、独身っぽいし良いけれど。なんか、なんか、違いが分かるよな?くそぉおおお。
とか思ってたら声が聞こえた。聞き慣れていて、聞きたくなかった声だ。
「リヒトさん、なぜいるんです?」
ダークエルフの長い耳を両手で隠す。振り向かないでゆっくりと前を走る集団へ向かおうとする。
ガゴォオオン!!!
3歩前の石畳が削れ跳んだ。豆で。
これ当たったらダメなやつだ。口で受け止めたら口内貫通するだろ!!!
「で、説明はありますか?」振り返った俺に反射したギルドバッチが見える。
「ギルドバッチがまぶしいですね」
「豆、避けてくださいね」
いやいやいやいや、避ける前に危ないスピードで投げるなよ。魔力強化使わなかったら貫通するから!!!と全力でルイに近寄る。
「豆くれ」口を開ける。
一気にルイの顔が赤くなる。そうか、こういう祭なんだ!!と理解した瞬間、なぜか周りの女性陣から罵声が聞こえて豆を投げられまくる。ルイも当たっている。
「いてっ!!・・・あっ」と声を出すと豆が口に入る。
通りを挟んだ女性・・・茶色髪の童顔がガッツポーズする。それを周りの女性陣は賞賛している。ドヤ顔の童顔、実った胸の持ち主。
ケイト、おまえは何がしたい。
諦めてケイトに近づく。
「リヒトさん、酷い!!!」とルイがジェントルエンの投石並みのスピードで豆を投げてくる。口で受け止めていい威力ではないので必死で避ける。石畳・・・壊していいのかギルド職員よ。
これ、こういう祭りなのか・・・。誰得って・・・女性陣?
ケイトはイシシシと笑っていた。その表情に呆れた俺は膝に軽い衝撃を受け、倒れかけたところをケイトに抱きとめられキスされる。青空とケイトの顔が見えた。
「キスする時は目を閉じなさい」
自分も開けてたくせによく言うよ。真面目に倒されるまで分からないとか、ケイトの俊敏性どれだけ高いんだよ。
「後ろの殺気放った姉ちゃんとこに行くんだよ」
手をブラブラさせたケイトが去って行く。まじで何がしたいんだよ!!
ルイの方に近づく。
「いやです」
「豆くれ」
「いやです」
豆をくれないルイに自分からキスする。周りからは歓声が聞こえる。
魔力強化がない分、本気でダッシュするのはいつ以来だろう。多分、ジャイアントゴーダ以来だろう。ジグザグに走るとタイミングよく少し前の石畳が弾け飛ぶ。誰かが豆を投げているのだろう。硬直時間は予想以上に短かった。
マジダッシュで走ると前の集団に追いついた。俺は相変わらず最後尾だが、周りの状況がすこし変化している。
路上でキスしている冒険者と女性がチラホラいた。周りから拍手も巻き起こっていて、俺もつい足を止めて拍手の輪に加わる。
「いい雰囲気だね」と隣で声が聞こえた。
「あぁ、いいな」と素で答えると豆を投げ込まれた。
またか・・・。




