第25話_ヴァルズール入港
「交渉の前にだ。お前らは王に会いに行く必要がある」
街の近くには砂漠船用の船着き場があった。船を横付けにして、板状に切った砂岩を丁寧に砂の上に配置してある。船員たちは荷車を砂岩の上に置き、ゴロゴロと音を立てながら交易品を港に運び込んでいく。
「サンドワームはしばらくあのままだ」
あのまま、とは船の後方に縄でグルグル巻きにされている状態のことである。サイズがサイズだけに曳行するような形になった。
「魔物にかじられないよう祈るんだな」
「会いに行く『必要がある』ってのはどういう意味だ?」
俺たちを船に乗せたスキンヘッドのオッサンは、この砂漠商船の船長だった。ぬらぬらと光る汗を手拭いで拭きながら「そういうルールなんだよ」とオッサンは言う。
「余所者は全ての活動前にまず王に謁見する。それまではあらゆる経済活動を禁ず、だ。破るとそれを見過ごしたヤツも含めて牢屋行きになる」
「だからついさっき会ったばっかのオッサンを信じて荷を預けてろってか? で、それを信じる世間知らずはどれくらいいる? 過去の統計から正確な数値を言ってみろ」
「信じようとしない世間知らずなら体感4割だ。お前もその4割に入る」
ンだと、と返そうとしたところで頭をシバかれた。後ろで話を聞いていたノクトだ。
「その土地にはその土地のルールがあるものだ、若造。……船長、荷の安全確保も貴様らの役割になるということだな?」
「モチロン後で手数料はいただく。いいか『若造』、この街のルールは『公平』だ」
若造、という呼び名を気に入ったらしく、船長がニヤニヤとして言った。
「とにかく『公平』な取引をしろ――ってのがここの王様のお達しでな。トラブルは不公平から生まれる、だそうだ」
「フワフワした街だなオイ。大丈夫か?」
「何をもって『公平』なんだ、ってか? 分かるぜ、俺もここで取引を始めるまでそんな感じだった。まぁついて来いよ」
船長はそこで船のタラップを降り始めた。他の船員に何やら指示を出して、港へと進み始める。
「王に引き合わせがてら教えてやる。『ヴァルズール』の歩き方をな」
ヴァルズール。それが、この砂漠の真っ只中にある街の名のようだった。




