第23話_ジャーニートゥーザ北
「何があっても自分はもう二度とダンジョンには入らない」
カルディンがそういう、実に今更な発言を繰り出したのは、通路の先に光が見えた時だった。
「この陰湿な殺人機構は何のためのものだ。ヒトを殺したいなら入り口でサッサと殺せばいい」
「殺すための仕組みじゃねえってことだろ?」
イゾルデが言葉を継いだ。結局、カケリのピカピカ光るやつはマジで数時間続いたので、コイツも殺気を削がれたらしい。
カケリが一枚布に変わると同時に瓦礫はウニョンと蠢き、長い長い通路が俺たちの目の前に現れた。そこから更に数時間歩き詰めて、いまようやく出口が近づきつつある。カケリは成功した。軽口が出始めたのは、その確信のためだろう。
「すげえ仕組みだと思うぜ。ウチの国の奴らが話を聞いたら、みんな眼の色変えるに決まってる」
「ノクトさま、カンパンって余ってないですか?」
「お嬢、外に出たら休憩しても?」
ゴソゴソと服をまさぐるミレナに対し、彼女を横抱きにしたままノクトは返した。俺はというとアホどもの会話に混ざる気力は既に無かった。布と化したままのカケリはマフラー代わりに首に巻き付けている。外に出たら『クローズ』を言おう。いや言わないほうがいいか? いずれにせよ体力が限界に近い。俺はこいつらのようなステータスお化けではないからだ。
いや……やっぱ言おう。何だか体が暑い。マフラーなんて巻いてるからだ。汗が出ている。そこまで考えてイヤな予感が頭をよぎった。
そう言えば、このダンジョンはどこに繋がっているのだろう。
結論を言っておくと、その先で見たのは元の場所だったとかそういうのは無い。むしろもっとマイナスだ。
「外……」
カルディンがそう呟く頃には、ダンジョン出口から完全に外が見えていた。間違いない。雲一つ無い青空が見える。というより見えすぎている。視界の限り青空と砂しかない。
「砂漠かよ」
イゾルデがゲンナリした様子で言った。俺はガキの頃に必死こいて孤児院で叩き込んだ世界地図を頭に浮かべ、血の気が引いていくのを感じていた。
カケリが言った目的地は、北だ。北の方は我が魂の故郷・地球と同様に寒い。雪が降る。
つまり、多分。
「南に来ちまった」
物理的な問題だ。ウマとかムポピョスポタンとかで、残り10日くらいで、果たしてカケリの言う『北』に辿り着けるのか。
当然のように無理であることを、俺はもう少し後で知る。
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ムポピョスポタンも遥か遠くで喜びます。




