第14.5話_番外編_ミレナさんの楽しいコンクリート建築
※このお話は番外編です。読まなくても本編の進行には関係しません。※
※時系列的には第14話の途中であった小噺的なナニカです。※
「この国ってコンクリート製のお家が多いですよねっ!」
「今しなきゃダメな話か、それ?」
俺は走りながら呆れた。というのも、ミレナのアホがこの話題を出してきたのは森を走ってる最中だったからだ。ドワーフの要人が密談場所で殺されて、二人組の男を追いかけている真っ最中。走っても走ってもドワーフの死体が転がっている。
「さっきの会談場所もっ! なかなかの出来映えでした!」
「何だその上から目線は」
「下らん話をしている場合かっ!」
カルディンが檄を飛ばしてくる。正論である。いつ奴らに追いつくか分からない。場合によっては待ち伏せパターンもあり得る。滅茶苦茶危険だ。
「でもっ、走ってるだけって退屈ですしっ! ちょっと小粋で知的なお話したいなって!」
「知的ぃ?」
俺は鼻で笑った。
「よく言うぜ、自分のフィールドだからだろ」
「そうです! 法術士と言えばお家造りですから!」
法術士とは大地の加護を受けて色んなコトが出来るインチキくさい奴らだ。大地の、というところがポイントで、初心者でも比較的地形の操作は簡単だと聞く。
地形の操作が可能というのは、つまり地面からニョキニョキっと家っぽいものを作るのも可能だということだ。それで我がクソ故郷・アークベルは法術士を大量に雇ってはコンクリート建築を造らせまくる。
「おめでたい頭してんな。ウチの国はアレ、全部戦争の準備だぞ。産めや増やせや地を満たせや! だ!」
「えっ!? 法術士のクリエイティブ精神が根付いてるんじゃないんですか!?」
「どの家も豆腐みてーな原初の姿してんの見てねえのか?」
「豆腐は言い過ぎだと思うが……」
なお、前世でへぇぇと思った記憶があるのだが、コンクリート建築自体は紀元前から存在していたらしい。何だっけ火山灰がどうこう……まぁそんなトリビアはどうでもいい。目の前の現世のことで既に頭はパンパンだ。
「けど頑丈だし後からたくさん継ぎ足しできますし! 私は好きですよ、コンクリート建築! アマリスさまのお家も私が造ったんです!」
「知らん知らん知らん」
「あっ信じてない! 信じてないですね!? いいですよなら落ち着いた時に造ってあげますあなたの家!」
生憎だが落ち着いている暇はない。少なくともあと25日くらいは落ち着けない計算だ。
「そこの騎士野郎の家でも造らせてもらえ」
「なにっ! ……ちょっと嬉しいかも知れんぞそれは! 自分の家は古いからな!」
「俺の家は燃やされたけどなお前に!」
「古い話を!」
「つい一昨日の話だボケ!!」
「ケンカはやめてください! でも燃えたんですか? コンクリート製なのに?」
俺は我が家を思い出した。ああ我が家、狭くて古くてボロが出まくっていて、補強のために木材を追加しまくった我が家! おまけに中には手慰みに造っていた木像も結構あった。だから燃えたワケだ。
「どうせヘンに窓枠とか屋根とかに木材使ってたんでしょう? コンクリート建築を信じないからですっ!」
「おお! クソエルフクソエルフ!」
「クソエルフじゃないです! でも許しましょう! 私は優しいしあなたより上の存在なので! いずれ造ってあげますねコンクリートのお家! こう見えて私って実は怪我の治療よりお家造りの方が得意なんです!」
「……いいのか、それは?」
走りながらカルディンがおずおずと言った。俺はそろそろ息が切れてきたが、ミレナの顔を見るときょとんとしていたので気分が良くなった。
「いいって? 何がです?」
「治療より家造りの方が、ってお前」
法術はインチキくさいが、それだけ術の行使には負荷がかかる。特に治療行為は複雑で難度が高い。対する地形の操作は簡単だ。
「そりゃ自分がアホですって言ってるようなもんだぞ法術士」
この世界の一般論である。俺はあくまでそれを指摘しただけだ。指摘しただけなのにミレナは顔を真っ赤にした。
「ちーがーいーまーすー! 得意で好きなだけで治療が苦手とかそういう話じゃないです!! 私はバカじゃないです!! バカじゃない!! バカっていうヒトがアホなんですぅ!!!」
「声デッッッカ」
この一連のやり取りから学びとれることが一つある。つまり――ミレナは声がデカい。
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