07.花より団子
「お花見に行きたいです!」
セシアはエレントスを見つめてそう言った。
「……お前、この始まり方、何回やるんだ?」
「この作品は私の一言から始まるんですぅ」
セシアはそう言うと、窓から魔王城の外を覗いた。
「花見になんか行けるわけがないだろ。お前は人質だ」
「お花見に行けないと死んじゃいます。私が死んでしまったら、人質としての価値がなくなってしまうでしょう?」
セシアはエレントスの方へ振り向いてそう言った。
「人はそんなんで死なねぇ」
「ぐぬぬ……せめてもの春要素は入れたいんです」
セシアがそう言うと、キャッタンが近づいてきた。
「じゃあ、行きましょうよぉ、お花見ぃ」
「話聞いてたか?」
エレントスがそう言うと、キャッタンは笑った。
「城の中でぇ、お花見をすればいいんですよぉ」
「どうやってだ……?」
エレントスがそう言うと、ミレカが口を開いた。
「こちらでございます」
ミレカの後ろには桜の枝や桜盆栽が飾られていた。床にはレジャーシートが敷かれ、その上には三人分のお弁当と水筒、団子などが並べられていた。
「さすが、ミレカ。仕事が早いですね!」
セシアはそう言うと、レジャーシートに座った。
「早く来てください!」
セシアがエレントスとキャッタンに向かって手を振ると、二人もレジャーシートに座った。
「お弁当ぅ、楽しみですねぇ」
「オープンです!」
セシアはそう言うと、ゆっくりとお弁当を開けた。
「……凄いです!本当に美味しそうです!」
「ふむ。しっかり出来てるな」
三人は手を合わせると、箸を動かして食べ始めた。
「この花はどこで買ったんだ?」
エレントスはミレカにそう問いかけた。
「魔界です」
「魔界……?そんなところがあるんですか?」
セシアは不思議そうにそう言った。
「魔族が住まう世界ですよぉ」
「なんか次回くらいで行きそうですね」
セシアはそう言って微笑んだ。
「残念だが、そんな展開は10話までない」
「また10話ですかぁ!?」
セシアは眉をひそめた。
「……?ミレカはお弁当ないんですか?」
セシアはミレカにそう問いかけた。
「はい。私は一メイドですので――」
ミレカが言い終わる前に、セシアはミレカの口へご飯を突っ込んだ。
「何するんですか、王女様?」
「ミレカもこの城の一員ですよ!」
セシアはミレカに微笑みかけた。
「王女様……大好きです」
ミレカは真顔のままそう言った。
「……」
「どうしましたか、エレントス様?」
セシアはエレントスにそう問いかけた。
「いや、別に」
エレントスは目を逸らしてそう言った。
「エレントス様。もしかして、あーんしてほしいんですか?」
「違ぇよ!」
エレントスは大きな声でそう言った。
「王女様が嫌ならぁ、自分がやってあげますよぉ!」
キャッタンはそう言うと、ご飯をエレントスの口元へ近づけた。
「やめろ!邪魔だ」
エレントスはそう言うと、キャッタンを掴んで花瓶の中へ入れた。
「魔王様ぁ、どこに行くんですかぁ!」
「食べ終わったんだから仕事だ」
エレントスはそう言うと立ち去った。
「エレントス様って、仕事あるんですか?」
「魔王様は、仕事という単語を使いたいだけの、ただのニートです」
「ニートじゃねぇよ!」
エレントスの声が遠くから聞こえてきた。
「やっぱり、お花見はいいですねぇ。そして、お花見といえばお団子です!お団子食べましょう!」
セシアはそう言うと、団子が置いてあった場所へ手を伸ばした。だが、そこには何もないお皿だけが置かれていた。
「……って、ないじゃないですかあぁぁ!」
「魔王様が全部食べておりましたよ」
ミレカがそう言うと、セシアは立ち上がった。
「やっぱり締め上げるしかないですね!あの食いしん坊!」
セシアはそう言うと、エレントスの寝室へ向かった。
「魔王様、食べてたっけぇ?」
キャッタンはミレカにそう問いかけた。
「いえ、私が食べました。王女様にああ言われたので」
ミレカはそう言うと微笑んだ。
◇ ◇ ◇
数時間後。
セシアがフラフラと歩いていた。
「王女様、どうしましたか?」
ミレカはセシアにそう問いかけた。
「お団子は歩くんですよぉ……」
セシアは枯れた声でそう言った。
「……王女様、お団子を食べたのは私です。申し訳ありませんでした」
ミレカは素直に謝った。
ミレカは、この一件で嘘をつくと面倒くさいことになると学んだのであった。




