41.流れていくそうめん!
「やっぱり夏といったら流しそうめんですよね!?」
セシアはエレントスを見つめてそう言った。
「何言ってんだ。もう秋だぞ」
「季節感バグってますねぇ」
「うるさいです!私が夏といえば、まだ夏なんですよ!」
セシアはそう言うと、ミレカを見上げ、上目遣いをした。
「というわけでぇ、用意してくれませんか?」
「……分かりました。お任せください」
◇ ◇ ◇
セシア達の目の前には、半分に割った竹を繋げて作った、水の流れる竹樋があった。
「何で城の中なんですか!?おかしいでしょう!」
「魔界でやりますかぁ?」
「こっちの方が人がいねぇからいいだろ」
「でも、普通、流しそうめんは外でやるものなんですよ!?」
「城の周辺は、王女様にとって危険ですから」
ミレカがそう言うと、セシアは首を傾げた。
「……では、順番に流していくので、こちらをどうぞ」
ミレカはそう言うと、セシア達にめんつゆの入ったつゆ鉢と箸を手渡した。そして、そのままセシア達から見えない場所へ向かっていった。
「さーて、頑張りますよ!エレントス様に、そうめんは一ミリも渡しません!」
「食い意地張りすぎだろ」
エレントスがそう言った直後、とんでもない速さでそうめんが流れてきた。
「ここだぁ!」
セシアは慌てて箸を伸ばし、そうめんをすくおうとする。だが、空振りした。そうめんはそのままエレントスの顔へ飛んでいき、見事に張り付いた。
「ナイス顔面キャッチ。魔王様」
「ふん……その顔についた汚いそうめんは、エレントス様が責任を持って食べてくださいね?」
「汚くねぇよおぉぉ!ふざけんな!もう少し遅くしろ!」
エレントスがそう叫ぶと、今度はゆっくりと、皿に乗ったカレーライス、ハンバーガー、ピザが流れてきた。
「何流してんだあぁ!」
「見たら分かるじゃないですかぁ。ファストフードですよぉ」
「私はそうめんを食べたいので、エレントス様が責任を持って食べてくださいね?」
「お前ら、さっきから我に当たり強くねぇか?……そうめんを流せ!」
しかし、エレントスがそう叫んでも、しばらくそうめんは流れてこなかった。
「……あれ?詰まりましたかね?」
セシアが竹樋の先を覗き込む。するとそこには、一人の女性の魔族がいた。彼女は流れてくるそうめんを、次々と食べていた。
「誰ですか!?」
「あれはぁ、ギャル尾根ですねぇ!」
キャッタンは微笑みながらそう言った。
「何ですか、その某大食いタレントみたいな名前は!?」
「魔界で有名な人ですよぉ!あの人も空間魔法が使えたんですねぇ」
「うっ……でも、私の流しそうめんを邪魔する人には黙っていられません!」
セシアがギャル尾根の元へ向かおうとすると、エレントスが慌てて制止した。
「待て!下手にあの人に絡んでみろ。この作品は打ち切りになるぞ!」
「……っ!じゃあ、どうすれば!」
「簡単ですよぉ。ギャル尾根の嫌いな物を流してもらうんですぅ!それで魔界にバイバイですぅ!」
「そんな簡単なことでいいんですか!?」
セシアは少し考えたあと、口を開いた。
「……では、おじさんを流してください」
「待てええぇぇ!何でおじさんを流すんだよ!」
「よく考えてみてください、エレントス様。流しそうめんにおじさんが流れてくる……どう考えても嫌でしょ!」
「それはそうだが、そう簡単に流れてくるわけ――」
エレントスがそう言った直後だった。竹樋の上流から、一人のおじさんが流れてきた。
「本当に流れてんじゃねぇかあぁぁ!」
「行けますね、これ!どんどん行きましょう!」
セシアがそう言うと、次々とおじさんが流れてきた。やがて竹樋は、おじさんでいっぱいになった。
「何だこれ……我は悪夢を見ているのか」
「現実ですよぉ!ミレカは凄いですねぇ!こんなに大勢のおじさんを連れてくるなんてぇ!」
「いや、そこじゃねぇだろ!」
セシアがギャル尾根の方を見ると、彼女は顔をこわばらせていた。そして、何も言わず、その場から姿を消した。
「帰りましたね!良かったです!」
「ですねぇ!」
セシアとキャッタンはハイタッチした。すると、エレントスが呆れた顔で口を開いた。
「おい。これ、どうすんだよ……?」
エレントスは目の前のおじさんでいっぱいになった竹樋を見てそう言った。
「「あっ……」」
こうして、セシア達の流しそうめんは一度もそうめんを食べることなく、幕を閉じたのであった。




