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04.メイドさんとご挨拶

「はぁ……いいお湯でした。少し狭かったですけど」


セシアが自室の扉を開けると、そこには白い長髪に尖った耳を持つ、メイド服姿の女性が立っていた。


「だ、誰ですか!?」


思わずセシアは声を上げた。


「初めましてですね、王女様。私はミレカと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


ミレカはそう言って、丁寧に頭を下げた。


「えっと……本当に誰なんですか?」


「この魔王城でメイドを務めております」


「メイドさんですか……?魔王城にもいるんですね!」


「はい。魔王様は力こそお強いですが、生活能力は皆無ですので」


「そうなんですか?」


「はい。赤子同然です」


「そこまでじゃねぇよ」


部屋の外に立っていたエレントスがそう言った。


「聞いていたんですね。盗み聞きですか?」


「廊下まで声が響いていたんだ。聞かれたくねぇなら、扉くらい閉めろ」


エレントスは呆れたようにそう言った。


「メイドはミレカ様お一人なんですか?」


「はい。ワンオペです」


ミレカはさらっと答えたあと、微笑んだ。


「それと王女様。私に敬語は必要ありません。ミレカとお呼びください」


「……ごめんなさい。敬語は外せませんが、ミレカですね。よろしくお願いします!」


セシアも笑顔で頭を下げた。


「それにしてもお一人なんて凄いですね!」


「ええ。私は仕事できメイドですから」


「自分で言うな」


エレントスがすかさず突っ込んだ。


「じゃあ、私のお部屋が綺麗だったのも、ミレカが掃除してくれていたんですね!」


「はい。王女様が来られる前から、この城全体を掃除しています」


「この部屋は以前、誰かが使っていたんですか?」


「ええ。昔この部屋に、住んでいた方がいました」


「ストラント様……ですか?」


「はい。彼は――」


「おい」


ミレカが話しかけた瞬間、エレントスが口を開いた。その表情は、今までにないほど険しかった。


ミレカは一瞬だけ目を伏せ、小さく息をついた。


「……話さない方が良さそうですね。申し訳ありません、王女様。失礼いたします」


ミレカはそう言って一礼すると、部屋を後にした。

セシアはエレントスの方を見る。


「……エレントス様?」


「……」


エレントスは何も答えず、そのまま立ち去った。


◇ ◇ ◇


「魔王様ぁ。いつまでいじけてるんですかぁ」


キャッタンはエレントスの寝室へ入るなり、にやにやしながらそう言った。


「……いじけてなどいない」


「またまたぁ」


そう言ってキャッタンが後ろを向くと、そこにはセシアが立っていた。


「勝手に人の部屋に入るな」


「このお部屋、鍵がありませんので」


セシアはそう言うと、エレントスへゆっくり歩み寄った。近づくほどにエレントスの表情は険しくなっていく。しかしセシアは少し手前で立ち止まり、深く頭を下げた。


「何だ……」


「勝手に人様の事情へ踏み込んでしまい、申し訳ございませんでした」


セシアは顔を上げ、まっすぐエレントスを見た。


「……そんなことを言うためだけに来たのか?」


「はい。誰にでも、踏み込まれたくない領域がありますから」


その言葉を聞き、エレントスは少しだけ目を細めた。


「やっぱり、お前は……」


「はい!何でしょう?」


「バカだな」


「なっ……!」


セシアは目を丸くした。


「バカって言う方がバカなんですぅ!」


「じゃあ、アホだ。アホ王女」


エレントスはそう言い放った。


「アホって言う方がアホなんですぅぅ!」


しばらく二人のやり取りが続いた。やがて眠気に負けたセシアは、「おやすみなさい」と一礼して寝室を後にした。セシアが部屋を出ると、部屋にはエレントスとキャッタンだけが残った。


「魔王様ぁ?」


「……何だ?」


「良かったですねぇ」


「……何がだ?」


エレントスが問い返すと、キャッタンは微笑み、そのまま部屋を出ていった。静かになった部屋で、エレントスは小さく口元を緩めた。

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