03.魔王城へようこそ!(後編)
「どうして……どうして檻の中なんですか!」
セシアは鉄格子を揺さぶりながら叫んだ。
「お前、昨日のこと覚えてないのか?この城を破壊するつもりか」
「そんなつもりありません!」
「魔法の鏡に魔道書、魔石、マント……昨日、お前が駄目にした物だ」
「魔道書はダメにしていませんよ?」
「……飲み物、こぼしたよな?」
「はい。でも、新しいものがあるでしょう?」
「普通はねぇんだよ……」
エレントスは呆れたようにそう言った。
「まさかぁ、王女様がここまで常識知らずだったなんてねぇ」
キャッタンはくすくすと笑った。
「常識というか、人間性というべきか……」
「魔王様が人間性を語るんですね!」
「お前、人質じゃなかったらとっくにやってるからな?」
「まぁまぁ、王女様も反省していますからぁ」
「どこがだよ……我は、お前が暴れないならこんな場所になんか入れないぞ」
「分かりました!暴れません!ここは嫌です!どうして魔王城にまで来て、また檻に入れられるんですか!」
「……分かった。下手な真似はするなよ」
エレントスはそう言うと牢の鍵を開けた。
「はあー!やっぱシャバの空気は美味しいですね!」
セシアは牢から飛び出し、満面の笑みでそう言った。
「王族の言葉遣いじゃねぇだろ」
魔王はそう言い残し、奥へと姿を消した。
「エレントス様は変わっていますね。こんなにも美しい女性が目の前にいるというのに、大した気遣いもないなんて!」
セシアがそう言うと、キャッタンが笑った。
「仕方ないよぉ。魔王様は女性経験がないんですぅ。世間一般で言うと、どう――」
「勝手に喋るなぁ!」
キャッタンの言葉を遮るように、エレントスが叫んだ。
「エレントス様……」
「……何だよ」
「女性経験がないことは、恥ずべきことではありませんよ!」
「余計なお世話だ!」
「王女様はぁ、婚約者とかいないんですかぁ?」
「いませんよ。まだ14歳ですから」
セシアは微笑んだ。
「婚約を申し込まれたりはしなかったのぉ?」
「されましたよ?でも……どうしてか、みなさん去っていってしまうんですよね」
「お前の性格を知って幻滅したんだろ」
「違いますよ?きっと私の魅力に耐えきれなかっただけです!」
「その自信はどこからくるんだ……」
エレントスは呆れながら、一つの鍵をセシアに手渡した。
「……ここから階段を降りてすぐ横に部屋がある。そこがお前の部屋だ。物を壊したりしたら、またここだからな」
エレントスはそう言って、牢を指差した。
「分かりました!ありがとうございます!」
セシアはそう言うと、階段へ向かって駆け出した。
「……面倒くさい奴が来たもんだ」
「賑やかでいいじゃないですかぁ……まるで、前の日常に戻ったみたいですぅ」
「……」
エレントスは一瞬だけ表情を曇らせた。
◇ ◇ ◇
階段を降りてすぐ横に、一つの部屋があった。
「ここですか!」
セシアが扉を見ると、そこには一枚のネームプレートが掛けられていた。
「ストラント……前にここに住んでいた人ですかね」
セシアは鍵を差し込み、扉を開けた。部屋の中は埃一つなく、驚くほど綺麗に整えられていた。
「素敵なお部屋ですね!」
セシアはそう言いながら近くの椅子に腰掛けようとした、その瞬間、足元のカーペットに躓き、盛大に転んだ。
「痛いですううぅぅ!」
その悲鳴は、魔王城中に響き渡った。




