37.短冊に願いを込めて
「短冊を書きましょう!」
セシアはミレカを見つめてそう言った。
「良いですよ。ご用意いたしますね」
ミレカはそう言うと、その場を立ち去った。すると、ふわふわとキャッタンがセシアに近づいてきた。
「ちょっと遅くないですかぁ?もう夏祭り行きましたよぉ?」
「ふふん!この作品は、そういうの気にしたら負けなんです。急に雪だるまを作っても良いんですよ?」
「それは流石に早すぎますよぉ!……それで王女様はぁ、何の願いを書くんですかぁ?」
キャッタンはそう問いかけた。
「今回は夢のある願いを書こうと思います!」
「前回は何て書いたんですかぁ?」
「聞きたいですか?良いですよ、特別に教えてあげます!」
セシアはそう言うと、話し始めた。
◇ ◇ ◇
これは王宮での出来事。
「セシア、今日は七夕なんだって。短冊でも書こうよ。作ったんだ」
ローラは椅子に座りながら、短冊をちらつかせた。
「良いですね!……あれ?私、去年何て書いたんでしたっけ?」
「……セシアは去年、謎に3枚書いてたよね?しかも『空を飛べますように』『蚊に刺されませんように』『雨が上がりますように』って……」
「全部叶いましたね!」
セシアはにっこりと笑った。
「いや、願いがしょうもないよ!?あと、空は飛べてないでしょ!?」
「まあ、私は常に浮いている存在なんで、実質叶ったみたいなものですよ」
「急なブラックジョークやめて!そんなことないからね!?」
ローラはそう言うと、短冊とペンをセシアに手渡した。
「ローラは去年、何て書いたんですか?」
「……私は『ずっとセシアといられますように』って書いたよ」
「ローラ……そんなの書かなくても叶いますよ?」
「いや、セシアに言われたくないよ……」
ローラはそう言うと、ペンを動かし始めた。セシアも短冊に文字を書き込んだ。
「よし!出来ました!」
セシアはそう言うと、短冊をローラに見せた。そこには『イケメンと出会えますように』と書いてあった。
「せ、セシア……そんなに困ってたんだ」
「その反応はやめてください!私だって年頃ですからね!?……結構顔は良いと思うのに、どうしてモテないんでしょうか?」
セシアはそう言うと、ローラの書いた短冊を覗き込んだ。
「あれ?書いてない。願い事、決まらないんですか?」
「……まあね。どうしよう」
ローラがしばらく考え込んでいると、セシアはその手から短冊を取った。
「わっ!」
「書いてあげます!」
セシアはそのままペンを走らせ、短冊に何かを書いた。そして、ローラに見せた。そこには『友達がイケメンに出会えますように』と書いてあった。
「いや、セシアの願い事じゃん!どんだけ願い叶えたいの!?」
「ふふん!冗談です」
セシアはそう言うと、短冊を裏返した。そこには『幸せに暮らせますように』と書いてあった。
「セシア……ありがとう!」
ローラはそう言うと、セシアを抱きしめた。
「良いですよ!」
ローラはそのまま、ペンで短冊に何かを書き足した。
「何て書いたんですか?」
「内緒」
ローラがそう言うと、二人は庭の木に短冊を吊るした。セシアがローラの短冊をちらっと見ると、そこには『セシアと一緒に幸せに暮らせますように』と書かれていた。
「ふふん!ローラ、一緒に葡萄でも食べましょう!」
「今日、百粒以上は食べたよ。何で太らないの?」
二人はそのまま中へと戻った。
◇ ◇ ◇
「――っていうことがあったんですよ」
「イケメンに出会う……良かったじゃないですかぁ、願いが叶ってぇ」
「何言ってるんですか?叶ってませんよ」
「いやいや、魔王様にぃ、魔界でも色んな人と出会ったんでしょぉ?」
「エレントス様、イケメンですかね?多分、私には負けてますよ。顔面偏差値で言うと、中の中以下ですね」
「誰が中の中以下だ!」
そう声がして振り返ると、そこにはエレントスが立っていた。
「鏡に言われたこと、効きすぎだろ」
「魔王様も短冊をお書きになられますか?」
ミレカがゆっくりとこちらに歩いてきた。そして、三人にそれぞれペンと短冊を手渡した。
「何にしましょうか……これにしましょう!」
セシアはそう言うと、短冊に文字を書いた。キャッタンが覗き込むと、そこには『世界中が笑顔であふれますように』と書いてあった。
「えええぇぇ!王女様がぁ、まともなの書いてますぅ!」
キャッタンはそう言うと、二人にセシアの短冊を見せた。
「素敵な願いではないですか」
「アホ王女にしてはマシな願いだな」
「馬鹿にしないでください!私もこういう願い事をするんですよ。はい。みなさん、吊るしますよ!」
セシアはキャッタンから短冊を受け取ると、観葉植物に吊るした。三人もそれぞれ書き終えると、短冊を吊るした。
そこには『みんなと一緒に仲良く暮らせますように』『花粉症がなくなりますように』『魔王城の維持費が安くなりますように』と書かれていた。
「……いや、みなさんも私とあんま変わんないじゃないですか!」
「お前と違って、こっちは死活問題なんだ」
「そうですよ。私は命に関わります」
「いやぁ、花粉症は命には関わらないでしょぉ……」
キャッタンは小さくそう呟いた。しばらくして、三人がその場を立ち去ると、ミレカはセシアの短冊を手に取り、その裏を見た。そしてため息をついた。
「……本当に嫌になる」
そこには『この幸せな日常が続きますように』と書かれていた。




