36.不朽の血族編〜明日〜(後編)
「……うぅ」
魔王城の自室で、キャッタンは目を覚ました。ゆっくりとベッドから起き上がると、部屋を出た。
「おはようございます、キャッタン!体調はいかがですか?」
セシアはキャッタンに微笑みかけた。その場にはエレントスとミレカもいた。
「大丈夫ですぅ……あの後、どうなったんですかぁ?」
「あの男性は逃げることをやめて、立ち去っていきました……キャッタンにとっては、あまり納得のいかない結末でしょう?勝手に判断してしまい、申し訳ございませんでした」
セシアはそう言うと、頭を下げた。すると、キャッタンは慌てて口を開いた。
「や、やめてくださいぃ!自分はあの人を懲らしめたかったわけではないですぅ……ただ、みんなと一緒に暮らしたかっただけでぇ」
キャッタンはそう言うと、目を逸らした。
「なら、良かったな。あいつはもう二度と来ないぞ」
「そうですね。永望の君は解散しましたし」
二人がそう言うと、キャッタンは目を丸くした。
「へ?」
「万事解決ですね!」
セシアはそう言い親指を立て、笑みを浮かべた。
「そういえば、お前、何で気絶したんだ?」
エレントスはキャッタンにそう問いかけた。
「魔法を使ったからですよぉ」
「キャッタン様、魔法をお持ちだったのですか?」
「その魔法しか使えませんけどねぇ」
「どんな魔法なんですか?」
セシアはそう問いかけた。
「簡単に言うとぉ、相手を浮かせる魔法ですぅ。全身が見えないとダメみたいなぁ、条件はありますけどぉ。この魔法を使うとぉ、自分に結構な負荷がかかるんですぅ。元々、造られた命ですからねぇ」
「やっぱり、あれはキャッタンの魔法だったんですね!本当に助かりましたよ。ありがとうございました!」
セシアはそう言って、微笑んだ。
「……何かデザートでもお出ししましょうか?」
「はいぃ。食べたいですぅ!」
キャッタンがそう言うと、セシアは腕まくりをした。
「私がケーキを作ってあげます!」
「お前はキッチン立ち入り禁止だからな?」
「ケチーーー!」
セシアは頬を膨らませ、そう叫んだ。
◇ ◇ ◇
飴を咥えた少女が、牢獄の廊下を歩いていた。やがて、眼帯の男がいる牢の前で足を止めた。
「誰だ?」
「……昔に会ったけど」
「昔だと……お前、サーカス団の奴か!」
「あなたと会った時点で、それはもう捨ててたけど……自首したと聞いたけど、罪悪感でも感じたの?」
「罪悪感か……違うな。目が覚めたのだ」
「そう」
少女はそう言うと、ポケットから飴を取り出し、牢屋の中へ放り投げた。
「食べたら?」
「……何のつもりだ。我を消しに来たのか?」
「それは別に指示されてない。私達は、道端に落ちてるゴミを捨てるほど暇じゃない」
「じゃあ、何のつもりだ」
男はそう言うと、飴を拾い上げ、牢の外へ放り投げた。少女はそのまま飴を拾うと、ポケットに入れた。
「情報を貰いに来た。ある女の子の」
「女の子……?」
少女はそう言うと、飴をかじった。
「最近、ある店でその女の子が働いてて、今まで見たこともない子だから、情報が欲しかったの……よく耳にするのは、バカでアホでちんちくりん。だけど、とても強くて、優しくて笑顔の可愛い子だと」
「……」
「名はセシア・プレーセス。知ってる?」
「……知らないな。我が知ってると思うか?」
「そう」
少女はそう言うと、飴を飲み込み、残った棒を牢屋へと放り込んだ。そして背を向けると、口を開いた。
「言っとくけど、あなたが何を考えたって、思ったって、罪は何一つ消えやしない……あなたに待ち受けているのは、未来じゃない。どうしようもなく深い絶望だ」
少女はそう言うと、顔だけを男に向けた。男を見つめる目は殺意に満ちていた。
「あなたのような、マッドサイエンティストに明日はない。一人孤独に、永遠の地獄で楽しくね」
少女はそう言うと、牢獄を後にした。




