28.魔王城に不法侵入!
これは、セシア達が海へ行っている間の魔王城で起きた出来事である。
「あー俺って何てラッキーなんだろ!」
ユイスは上機嫌で魔王城の廊下を歩いていた。
(ミレカさんから城の仕事を任せてもらえた。これは俺のことを信用してくれてるってことだよな〜)
「いやー!俺の夢が叶うのも近いかもな」
そう呟くと、ユイスは手元の紙へ目を落とした。
「とりあえず掃除かぁ……廊下しか書かれてないな。勝手に他人の部屋に入ったら殺す!って書いてある……」
ユイスは少し考えたあと、ニヤリと笑った。
「いや、どうせならミレカさんの部屋を一目見てみたいでしょ!」
ユイスはそう言って顔を上げた。
「よし、行くか!」
ユイスはそう勢いよく歩き出したものの、すぐに立ち止まった。
「……でも、場所が分からないなぁ」
ユイスは廊下を歩いていると階段を見つけ、そのまま地下へ降りていった。階段を降りてすぐ横にあった部屋(セシアの部屋)の前で足を止めた。部屋の前には一枚の木の板が落ちていた。
「……何だこれ。まあ、いいか」
ユイスが扉を開けると、そこにはベッドでうつ伏せになっている一人の男性がいた。
「うわああぁぁ!」
驚いたユイスの声に反応し、男性は飛び起きてユイスを指差した。
「し、侵入者だああぁぁ!」
「いやいや、違うから!あんた、この城の人?」
「まあ、城の人と言っても大差ないな」
「は?」
ユイスは顔をしかめた。
「俺は可愛い妹のお兄ちゃんだ」
「妹……?」
(ミレカさんじゃないな……というか、こんな変態アホ面に似た女性なんていたっけ?)
「ごめん。誰のお兄さん?」
「あ?お前知らないのか。この城に人質として連れてこられた王女様だよ。可愛くて、思いやりがあって、強さも兼ね備えた完璧な美少女だ」
(ミレカさんか……!?いや、違う。人間界の王女様か? 確か、この国の名前はプレーセス王国だったような……)
「ぷ、プレーセス!?」
ユイスは目を見開いた。
「そうだ!俺はこの国の王子、カトラス・プレーセスだ!」
「あー、あの非モテ嬢のお兄さんか!」
ユイスのその一言で、カトラスは一気に距離を詰めた。
「誰が非モテ嬢だぁぁ!」
カトラスは勢いよく飛び蹴りを叩き込んだ。ユイスは吹き飛ばされて床を転がった。
「ぐああぁぁ!何すんだよ!」
「セシアは将来、お兄ちゃんと結婚するんだよ!」
カトラスはそう言って、親指で自分を指した。
「シスコンじゃねぇか!」
「シスコンではない!」
カトラスはそう言って、さらにユイスを蹴りつけた。
「俺はセシアを一人の女性として愛しているんだ!」
「余計キメェよ!……ってか、お前も侵入者じゃねぇか!」
ユイスはそう言うと立ち上がった。
「セシアは可哀想に囚われの姫だ。助けてやりたいが、俺は彼女より弱い。だからセシアが魔王を倒すまで待っているんだ!」
「それが何でこの城にいる理由になるんだよ……」
「それはセシア不足に決まってるだろ!彼女を見ないだけで俺はおかしくなってしまう!」
「うわぁ……なんか、あのお嬢さんの気持ちが分かった気がする」
「だからこうして、バレないように不法侵入してるんだ!」
「あ、不法侵入なのは認めるんだ」
呆れたユイスは、そのまま部屋を出ようとした。
「おい、お前。このこと、城の奴らにチクらないよな?」
「え?ああ……まあ、あんたみたいなのがこの城にいると、ミレカさんにも危害が及ぶかもしれないしなぁ」
ユイスがドアノブに手をかけたその時だった。
「お前も誰かの部屋を探してるんだろ?」
「は?」
ユイスはそう言って振り返った。
「俺は何度も侵入を繰り返してきたから分かるぜ。教えてやってもいいんだが?」
「誰があんたに聞くか!」
「……俺もお前のこと、チクっていいんだぞ」
カトラスは小さくそう呟いた。
「仲良くしようじゃないか。お兄さん」
「そうだよなぁ!」
二人は笑顔で強い握手を交わした。
「もしかして、探してるのは白髪頭のメイドか?」
「白髪って言うな!ミレカさんだよ!」
「よっしゃ、着いてこい!」
二人は階段を上がり、廊下を歩き始めた。
◇ ◇ ◇
「ここだ!」
カトラスが一つの部屋を指差した。ユイスは緊張しながらドアノブに手をかけた。その瞬間――ドアノブから火花が散った。
「バチバチバチッ!」
「えっ?」
次の瞬間、ユイスの全身に電流が走った。
「ぎゃあああぁぁ!」
感電したユイスは、そのまま床へ倒れ込んだ。
「侵入者対策……だと!逃げるぞ、クソ野郎!」
「うえぇぇん!ミレカさぁぁん!」
カトラスは倒れたユイスを肩に担ぐと、そのまま魔王城を全力で飛び出していった。




