17. 魔界訪問編〜解決〜(後編)
「わっ!」
二人は魔王城の図書館へと戻っていた。
「今日でどのくらい稼げたんだ?」
「ふふん!聞いて驚いてください。D金貨55枚です!」
セシアがそう言うと、エレントスは眉をひそめた。
「あいつら、いつもそんなに稼いでんのか……」
「でも、Dプリージ金貨20枚を稼ぐには一か月くらいかかるらしいんです!長くないですか!?」
「お前は金銭感覚バグりすぎだろ」
「ふん!王女ですから!」
「褒めてねぇよ!」
エレントスはそう言うと、図書館から出ようとした。
その時、セシアが口を開いた。
「あの……カラリリ様の想い人って、誰だったんですか?」
そう言うと、エレントスは振り返り、セシアを見つめた。
「あ、申し訳ございません。相手の事情には踏み込まないと決めたんでした……今のは聞かなかったことにしてください」
セシアはそう言って図書館を出ようとした。その時、エレントスがその腕を掴んだ。
「えっ?」
「その話……どこで聞いた?」
「ラジア様からです……」
「他に何か言っていたか?ラジアは……カラリリは何を話していた、お前は何を聞いた?」
「あの、エレントス様。腕を……」
セシアがそう言うと、エレントスははっとしたように手を離した。
「すまない……」
エレントスはそう言うと、図書館を立ち去った。
「エレントス様……」
「大丈夫ですか、王女様」
セシアが振り返ると、そこにはミレカが立っていた。
「大丈夫です。あれくらいの痛さがちょうど良いですよね!」
「王女様、気持ち悪いです」
「ドMじゃありませんよ!?」
「言ってません」
ミレカはそう言うと、セシアに微笑みかけた。
「王女様は、魔王様について知りたいですか?」
「そりゃ、知りたいですよ!……でも、ご本人は踏み込まれたくなさそうですし」
「そんなことありませんよ。私は結構前から魔王様を知っていますが、あの人は素直じゃないんです。強気で不器用。けれど、仲間想いなんですよ」
ミレカはそう言うと、セシアを見た。
「話を聞いてあげてください。魔王様は、その程度のことでお怒りになったりはしませんよ」
「ミレカ……」
「あ、でも私は信頼がないので怒られますけどね」
「一体、何をしたんですか!?」
セシアは驚いたようにそう言った。
「それはですね。私はこう見えて、昔は荒れていたんですよ」
「へぇ、意外で――」
セシアはそこまで言って言葉を切った。
(そういえば、肝試しの時に怖いミレカを見たような……)
「王女様?」
「は、はい!ありがとうございました。エレントス様のところに行ってきますね!」
セシアはそう言うと、図書館を立ち去った。
◇ ◇ ◇
「コンコンコンコン」
セシアはエレントスの自室の前でそう言った。
「セルフノック音やめろ!」
エレントスはそう言うと扉を開いた。
「失礼します!」
セシアはそう言って部屋に入った。
「お前、どんどん抵抗なくなってきてないか?」
「私は最初から抵抗なんてありませんよ!?」
「あれよ」
セシアはそのままソファに座った。
「お前なぁ、一応異性の部屋にいるんだぞ?」
「エレントス様、私を異性として見てるんですか!?」
「違ぇよ!」
「えっ、じゃあ男性だと!?」
「それも違う!あれだろ……異性として見るっていうのは、恋愛対象として意識することだろ?」
エレントスは少し恥ずかしそうにそう言った。
「何照れてるんですか。気持ち悪いです」
「お前、マジでぶっ飛ばすぞ!……んで、何しに来たんだ?」
「それは、エレントス様について聞きたくて!」
「我か……?」
エレントスは少し顔を曇らせた。
「はい!やっぱり知りたいですから」
「何で知りたいんだ?……カラリリにでも恨み言を言われたか?」
「それは知りません。でも、エレントス様は相手のことを知りたいと思う理由って、何だと思いますか?」
セシアはそう問いかけた。
「……好奇心や、防衛本能とかか?」
「チッチッチ……それも正解ですね!」
セシアは人差し指を左右に振った。
「間違いじゃねぇのかよ」
「けれど、一番大切なのがあります。それは、安心感を得るため、自分を理解してもらうため、そして人と繋がるためです。相手を知ることは、人と繋がるための最高の手段ですよ!」
セシアはエレントスに微笑みかけた。
「そうか……すまないが、今はまだ言いたくない」
「そうですか。私は、エレントス様が話したくなったら、いつでも聞きますからね!」
「分かったよ」
エレントスは少しだけ表情を緩ませた。
「……あの、一つだけ本当にエレントス様に言いたいことがあったんです」
「何だ?」
「最初はいかにも魔王って感じの硬い口調だったのに、途中から口調が変わりましたよね。キャラブレてますよ?」
「早く部屋から出て行けえぇぇ!」
エレントスはそう叫ぶと、セシアを部屋の外へ追い出したのであった。




