14.魔界訪問編〜依頼〜(後編)
「そうです……僕に依頼をしてみませんか?」
ラジアはそう言って微笑んだ。
「……依頼?」
「僕は君のストーカーから依頼を受けているんだ」
「なぜそれを!?」
男性は思わず声を荒らげた。
「ストーカー……何の話ですか?」
セシアは困惑した表情を浮かべた。
「ハハ、単純な話さ。おかしいと思わなかったかい?見せられた顔写真が全部、隠し撮りだったことを」
「そ、そうなんですか!?でも、さっき奥さんに殺されると聞いたって言ってましたよね?」
「言葉が足りなかったかな?奥さんっていうのは、相手の奥さんじゃなくても女性に対して使うことがあるんだよ〜」
ラジアはそう言って男性へ視線を向けた。
「で、どうする?」
「……分かった。依頼させてくれ」
「OK。君は何を望む?」
ラジアがそう問いかける。男性が口を開くより先に、隣の女性が口を開いた。
「……あのストーカーを殺してください」
「あぁ、もしかして君が彼の奥さんかな?」
「そうです……彼がこうして魔法を使っているのも、あの女に見られたら、また私に危害が及ぶんじゃないかって心配しているからなんです」
「以前、被害に遭われたのですか?」
セシアがそう尋ねると、男性が語り始めた。
「……きっかけは、あの奥さんが旦那さんと口論している場面を見かけたことだった。二人が別々の方向へ去ったあと、その場を通ると花柄のハンカチが落ちていたんだ。さっきの奥さんのものだと思って、まだ近くにいるうちに届けに行った」
「ハハ、それで見事に惚れられちゃったわけだ!」
「ああ。それ以来、つきまとわれるようになった。魔衛隊にも相談したが、事件性がないと言われて相手にされなかった」
「魔衛隊はそういうの全然動かないからね〜」
※魔衛隊──現代でいう警察にあたる組織。人間界にも同じ名称で存在するが、由来が異なる。
魔界──魔族を守衛する部隊
人間界──魔法で親衛する軍隊
「ある日、妻と一緒に歩いていたら、あの奥さんが突然現れた。そして、浮気だとか言い出して……妻を殺そうとした」
「それは魔衛隊にご相談されたのですか?」
セシアがそう尋ねた。
「もちろんしたさ。でも、その間の安全までは保障してくれなかった」
男性が答えると、妻が頭を下げた。
「お願いします。依頼料はきちんと払います。だから、あの女を殺してください!」
「ハハ、言ったね?任せといてよ」
「ダメです!人を殺すなんて!」
セシアは強く言い放った。
「ハハ、僕達は人じゃないよ〜」
「そういう意味じゃありません!」
セシアが言い返すと、妻が険しい目で彼女を睨んだ。
「うっ……」
「依頼料次第かな。汚れ仕事は安い金じゃやってられないからね〜」
「……では、D金貨20枚ではどうでしょうか?」
「えぇ、全然足りないなぁ〜」
「じゃあ……50枚で」
「いやいや、せめてDプリージ金貨くらいは出してもらわないと〜」
ラジアがそう言うと、セシアが割って入った。
「20枚で十分じゃないですか!?ストーカーを捕まえて魔衛隊に引き渡せば良いだけですよ!」
セシアがそう言うと、ラジアは微笑んだ。
「20枚はさすがに割に合わないよ!……分かった。D金貨50枚でストーカーを魔衛隊へ突き出す。それで良いね?」
二人は揃って頷いた。
「……本当にお願いします。あの女は火炎魔法を使います。気をつけてください」
「任せといてよ。強力な魔法が使えそうな人が隣にいるからね〜」
ラジアはそう言ってセシアを見た。
「それじゃあ、少し時間を置いてから店に来てくれない?名刺に場所が書いてあるから」
そう言ってラジアは席を立ち、歩き出した。
「いや、まだフラッペ飲んでないです!」
セシアが机の上を見ると、グラスは空になっていた。
「の、飲みましたねぇぇぇ!」
「君が飲まないからだよ〜そもそも僕のお金で買ったんだから、別にいいだろう?」
「ぐぬぬ……それはそうですけど!」
セシアは悔しそうに頬を膨らませながら、ラジアの後を追いかけた。




