12.魔界訪問編〜依頼〜(前編)
ラジアは手元の書類に目を落としていた。
「今朝、ここに買い物に行くと言って家を出たらしいよ〜」
二人の目の前には、大きなショッピングモールが建っていた。
「尾行ですね!」
「ハハ、そうだよ。とりあえず、バレないように慎重に行こうか」
二人はショッピングモールの中へ入った。
「でも、どうやって見つけるんですか?」
「ここで魔法を使うんだよ」
ラジアは顔写真を取り出し、目を閉じた。
「人捜しの魔法」
ラジアはそう唱えると、すぐに目を開いた。
「どうですか?」
「場所が分かったよ。さあ、行こう」
ラジアは歩き出し、セシアもその背中を追いかけた。
「ほら、見て。あそこに座ってるカップル」
二人は五階のカフェの前に立っていた。
「イチャイチャしてますね!でも、旦那さんじゃありません。顔が違います」
「ハハ、それはここに書いてあるんだよ」
ラジアは書類を指差した。
「姿を変える魔法――変身魔法の使い手だってね」
「凄い……でも、どうして分かったんですか?」
「たとえ姿を変えても、僕の能力の前では無力さ」
ラジアはセシアに微笑んだ。
「……じゃあ、話しかけましょうか?」
「待って」
ラジアはセシアの腕を軽くつかんだ。
「このままじゃ黒とは言えないよ。やっぱりホテルに入るところを見ないとね〜」
「ホテル……!?な、何の話ですか!?」
「ハハ、14ちゃいのお子様には分からないか〜?」
「ば、バカにしないでください!……あの、あれですよね、なんかぁ……」
セシアはそのまま口をつぐんだ。
「……まあ、彼は浮気なんかしてないけどね〜」
ラジアは笑いながら言った。
「へ?」
「さっきから二人の話を聞いてたんだけど、奥さんの話しかしてなかったよ」
「じゃあ、なんで変身魔法なんか……」
「奥さんに殺されるってね」
「……それって」
「それじゃ、話を聞きに行こ〜!」
ラジアがそう言うと、二人はカフェへ入った。
「僕の奢りでいいよ」
「ありがとうございます」
(私、お金持ってないけど……?)
「じゃあ、僕はキャラメルフラッペで。君は?」
「えっと……」
セシアは言葉を詰まらせた。
(こんなお店、来たことないから……何を頼めばいいのか分からないよ……)
「じゃあ、パイポパイポパイポのシューリンガンシューリンガンのグーリンダイグーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助フラッペで」
「いや、それ寿限無じゃないですか!?何味なんですか!」
「ガムシロップ風味らしいよ」
「それはもうガムシロップじゃないですか!?」
ラジアは代金を払い、二つのフラッペを受け取った。
「そこの席でいいかな」
ラジアはフラッペをカップルの向かいの席のテーブルに置いた。そして、二人はその席の前に立ったまま、カップルへ声をかけた。
「……何ですか?」
男性が口を開いた。
「君の奥さんの話を聞きたくてね」
「……また探偵か……行こう」
男性は女性を連れて立ち去ろうとした。
「待ってくださいよ。奥さんと別れる方法、知りたいんでしょう?」
その一言で、男性は足を止めた。
「何でそれを……」
「……とりあえず、私達と話をしませんか?」
セシアがそう言うと、男性と女性は再び席に着いた。二人も向かいの席に着いた。
「僕はこういう者でね」
ラジアは名刺を差し出した。
「ソルブの天秤……?」
「何でも引き受けます……?」
二人は名刺を見つめながらそう呟いた。
「そうです……僕に依頼をしてみませんか?」
ラジアはそう言って微笑んだ。




