11.魔界訪問編(後編)
「あれ、エレントス〜行かないの?」
ラジアはエレントスにそう問いかけた。
「……お前に任せていいか不安でな」
「ハハ、大丈夫、大丈夫。任せといてよ〜」
「……アホ王女」
エレントスはそう言うと、セシアを見た。
「誰がアホ王女ですか!?」
「夜になったら迎えに来る……そいつがお前に危害を加えそうになったら、躊躇なく攻撃しろ」
エレントスはそう言ってラジアを指差した。
「僕ってそんなに信頼ないの?ショックー!」
エレントスは眉をひそめると、そのまま立ち去った。
「ここは何のお店なんですか?」
セシアはラジアにそう問いかけた。
「簡単に言うと便利屋かな。依頼されたら何だってやる。それがソルブの天秤さ」
「そうなんですか……あの、エレントス様が言っていたカラリリ様という方は?」
「僕と一緒にこの店をやっているんだ。エレントスとは、僕と同じで友人だよ……まあ、つまらない女性なんだよ。感情があんまりないっていうかさ〜」
ラジアはそう言って微笑んだ。
「そうですか」
セシアも微笑み返した。
(王宮にもこういう人はいたけど、やっぱり苦手だなぁ……)
「仕事の紹介っていっても特にないんだよね。お客が来たら話を聞いて、依頼をこなすだけさ」
「……あの」
セシアは少し身を乗り出した。
「どのくらいお金を貰えるんですか!?」
「えっ、お金?……そうだな。それは依頼内容によるかな〜」
「Dプリージ金貨20枚くらい稼ぎたいんですけど」
セシアがそう言うと、ラジアは笑った。
「それは結構な額だねぇ!うーん……まあ、一か月くらいかな」
「長いですね……」
セシアが肩を落とすと、ラジアはきょとんとした。
「王女様っていうのは本当なんだね……魔界では、僕はかなり裕福な方なんだけど」
ラジアはそう言うと近くのソファに座り、手招きした。
「座りなよ〜」
「……分かりました。失礼します」
セシアはそう言ってソファに腰を下ろすと、ラジアを眺めた。
(この人は、角がないんだなぁ)
「ハハ……僕に角がないことが気になるかい?」
「いえ、そういう魔族もいますから」
(実際、ミレカもなかったよなぁ)
「僕にも角はあったんだよ……でも、なくしちゃったんだ」
「なくした……?」
セシアがそう問いかけた瞬間、扉が開いた。
「あの、ここが何でも依頼を引き受けてくれるっていう店ですよね?」
そこには、一人の魔族の女性が立っていた。
「そうです!どうぞお掛けになってください」
ラジアの言葉を聞き、女性は向かいのソファに座った。
「実は、私の夫が浮気をしてるかもしれなくて……」
「OK!浮気調査ね。任せといてよ」
「ありがとうございます……あの、こういうのって何日くらいかかりますか?」
「普通なら結構かかるけど、このソルブの天秤なら今日中に答えを出してあげるさ」
「そうですか……!これ、夫の顔写真と勤務先、それから退勤時間とかが書かれた紙です」
女性はそう言って、書類を差し出した。
「ありがとう」
「あの……お金は?」
「ああ、この店は後払いでね。あとから君が好きな金額を支払ってもらうんだ。この店は信頼で成り立っているからね」
ラジアはそう言って微笑んだ。
「そ、そうですか!じゃあ、お願いします!」
女性は少し頬を赤らめると、小さく頭を下げ、そのまま店を後にした。
「……意外とモテるんですね」
「僕の顔を見て?モテないわけがないだろ?」
「ナルシストですか?良いですね」
セシアはラジアを見ずにそう言い放った。
「君も僕に惚れてる?」
「惚れてません」
「……本当は惚れてるよね?」
「惚れてません……今日中なんですよね?じゃあ、早く行きましょう。早い方がいいです」
セシアはそう言うとソファから立ち上がった。
「ハハ、そうだね。じゃあ、行くとしよう」
二人は店を後にした。




