第50章:収穫される世界
第3部 魔王編
かつての残党拠点では、突如として空が切り裂かれ、次元の彼方からサトオの意志が神の視点となって降り注いできたことに、兵たちが混乱して武器を構えていた。
「……セリア、彼らに声をかけてやれ。状況も理解できずに怯えているようだしな」
サトオはニヤリと鉄仮面の裏で口元を歪め、接続先の空に自身の声を響かせる。
それは恐怖で支配する、ではなく相手に逃げ道を与えた上で、こちらの都合に合わせさせる狡猾な意識の伝達だった。
「聞け。俺はお前たちを排除するつもりはない。ただ、このまま無秩序な残党として散るか、それとも俺の下で生き残るか、選んでほしい。」
サトオが指先を動かすと、空間に投影された薄光が、拠点を見下ろす巨大な視界を形成した。
「俺の管理下にある限り、お前たちを消滅させたりはしない。飢えも防ぐ。その代わり、時折俺が『手助け』を必要とするときは、力を貸してくれないか?」
それは軍の長としての強制的な号令ではなく、あくまで互いの生存を担保にした取引だった。
向こう側で、魔王軍の将校たちが顔を見合わせる。武器を下ろすかどうかの迷いが、その槍先から伝わってくる。
「……あんた、そんな言い方をしておいて、実質的には逃げ場を塞いでるだけじゃない!」
セリアは憤慨するが、サトオは意に介さない。
「逃げ場を塞いだんじゃない。生き残るための選択肢を与えただけだ。お前たちの誇りを守ったまま滅ぶ道と、俺の下で未来を繋ぐ道。どちらが彼らにとって幸せかは、彼ら自身に決めさせるさ」
サトオの言葉は理知的で、同時に逃げ場のないほどに重かった。
将校がゆっくりと剣を収め、震える手で空に向かって跪く。
(……力じゃない。自分で選んだと思わせることで、より強固に繋ぎ止めるつもりなの?)
セリアはゾッとするような戦慄を覚えた。彼の指輪が世界を繋ぎ変えるたび、抗う術すら持たないまま、世界はサトオという主へと組み込まれていく。
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