第49章:収穫される世界
第3部 魔王編
浄化された村外れの倉庫跡地で、サトオは静かに立っていた。
指先を軽く合わせ、亜空間の指輪にわずかな魔力を通す。かつて「深淵の門扉」という禍々しい魔導制御室だったものは、今やサトオの意識の深淵に完全に根を下ろし、支配下にあった。
(……『門扉』の概念を、この指輪の空間に接合した。つまり、俺の意識が「どこ」を指し示すかによって、このゲートは対象を自由に変更できる)
サトオは鉄仮面の裏で、冷徹な笑みを浮かべる。
今までの「召喚」は、魔王軍が強引に異界の門を開くという泥臭い手法だった。だが、サトオの構築した新しい「ゲート」は、もっと効率的なシステムだ。
パチン!と指を鳴らす…
サトオの意識は指輪を介して、彼方に潜伏していた魔王軍の残党拠点をロックオンした。
指輪が空間の座標を固定した瞬間、サトオは亜空間を繋ぎ合わせる。
爆音も、悲鳴もなかった。ただ、世界そのものが息を呑むような静寂が訪れ、拠点があった場所の空間が、極薄のガラスのようにひび割れる。
先ほどまでそこに存在していた魔王軍の軍勢も、彼らが築き上げた要塞も、消滅したわけではない。彼らはそのまま存在し続け、空間と軍勢が潜む空間が直接つながったのだ。
(よし。この空間を維持したまま、扉を開けば、いつでもこの座標から彼らを呼び寄せることができる)
軍勢は、サトオの意識ひとつでいつでも援軍として呼び出せる状態にあった。
「……ありえない。拠点ごと繋げたの?」
セリアは呆然と立ち尽くしていた。魔王の娘である彼女にとって、魔王軍は帰るべき場所であり、味方だった。サトオが行ったのは、ゲートを介して、彼らの空間と直結させることだった。
「……彼らの存在する空間を、俺の居る場所へ接続しただけだ。必要になれば、ここへ呼び出すもできる」
「……あんた、まさか、軍勢そのものを自分の『手駒』にするつもり?」
「いや、どちらかと言えばお前の手駒だな」
「効率の問題だ。現世で無秩序に彷徨う残党より、俺の管理下に置く方が、彼らにとっても、お前にとっても安全だろう?」
彼にとって脅威となるものは、排除すべき存在あると同時に、扉を通じていつでも味方として呼び寄せられる軍隊でもあった。
その時、意識の片隅でシステムボイスが響く。
『次元の基点に、新規の軍勢個体を指輪経由で接続しました』
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