表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の力を引き継いで異世界転移したものの、先代勇者が国にハメられて暗殺された歴史を知ってしまった件。  作者: 藤咲玲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/87

第40章:ログハウスの完成と、一撃の漁法

第2部

 数時間後。俺の手により、釘も魔法も使わない、完全に物理法則のみで組み上げられたログハウスが完成した。


 歪み一つない完璧な角材の接合部。これには流石のセリアも「……あんた、本当に元は会社員だったの?」と感嘆の吐息を漏らし、エレンは「神の御業です……!」と建物の前で祈りを捧げていた。


 だが、今の俺たちには重大な問題があった。


 空腹である。


「食料がないな。とりあえず、あの川で魚でも捕まえるか」


「ええ。では私が、神聖王国の聖具を応用した『釣り糸の生成魔術』と、結界を利用した『自動罠』を仕掛けましょうか?」


 エレンが頼もしく聖印を掲げ、川辺で何やら神聖な準備を始めようとする。その横でセリアも「私は網の形をした闇の膜を作ってやるわよ」と準備万端だ。


「いや、そんな面倒な…」


「……はあ? あんた、まさか手で捕まえるつもり? 泥だらけになってまで魚を追いかけ回すなんて、そんな下品なこと私は嫌よ!」


 セリアの呆れ声を聞き流し、俺は川の淵へと近づいた。


 俺はただ、川面へ向かって静かに、一回だけ掌を叩きつけた。


 バンッ――という乾いた音だけが響く。


 その瞬間、川底で起きた衝撃波が正確に魚たちの浮き袋を直撃し、数秒後、数匹の立派な岩魚がぷかりと腹を見せて水面に浮かび上がった。


 ……静寂が訪れた。


「…………はあ?」


 セリアの口が完全に開きっぱなしになっている。エレンも手にしていた聖具の釣り糸をポロポロと落とし、アングリと口を開けて水面を見つめていた。


「あの、サトオ様……今、何をされました? 魚を、その……叩き伏せたのですか?」


「いや、水面を叩いて衝撃波を伝えただけだ。これなら水流を乱さず、必要な分だけ確保できるだろ?」


 俺が淡々と説明する横で、クルスが「キュイイイ!」と歓喜の声を上げて飛んでいく。


 浮かんだ魚を次々と回収し、俺たちの足元へ誇らしげに積み上げていく姿は、さながらプロの漁師の助手だった。


「…………」


「…………」


 セリアとエレンは言葉を失い、魚を運ぶクルスと、涼しい顔で立ち上がる俺を交互に見比べている。


「……やっぱり、この男に『常識』という言葉は存在しないのね」


 セリアが深い溜息をついた。


 物理を理解しすぎているがゆえの異常行動。エレンもまた、先ほどまでの聖女の威厳をどこかに置き忘れたように、ただただ呆然と魚の山を見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ