第2章:青い輝きと、見知らぬ天井
「はぁ、はぁっ……!」
あまりの情報の濁流に、俺は膝をつき、激しく息を荒らげた。
光が収まると同時に、身体は信じられないほどの万能感に満たされていた。五感が異常なほどクリアになり、身体の芯でエネルギーが脈動している。
「これが……勇者の力……。でも、魔力そのものはあんまり増えてないな。現代人の限界ってやつか」
カタ、と微かな音が響く。
見上げると、椅子に座っていた勇者の骸から急速に光が失われ、サラサラと白い灰に変わっていく。風もないのに崩れ去り、衣服も机も、光の塵となって消えていった。
その静かな崩壊の終わり。床の上に、一つの金属が重々しい音を立てて転がった。
――コロリ。
それは骸の手首に嵌められていたはずの、青い宝石のついた指輪だった。
主を失った指輪は、いまや俺の魔力に反応するように、かすかに脈動しながら青い光を放っている。俺は歩み寄り、その指輪を拾い上げた。
【ユニーク魔道具:『亜空間の指輪』を認識しました】
【所有権が『佐藤 連』に移行します】
【機能:異界門の解錠、四次元格納庫】
意識を指輪の奥へ集中させると、脳裏に広大な闇の空間が浮かび上がった。
【格納アイテムを確認します】
・勇者の鉄剣(標準仕様・良質)×1
・旅人の外套(認識阻害・環境適応)×1
・異世界通貨(金貨50枚、銀貨100枚)
・回復薬×5
指輪の中には、当面は贅沢して暮らせるだけの金貨が眠っている。経済的な焦りは一切ない。
だが、俺はこの金には極力手をつけないと決めた。他人の遺産に頼り切るのはプライドが許さないし、なにより大金を持っていれば周囲に変な目をされる。世間体というやつだ。
「お金に困ってないのは助かるけど……極力、自分の力で稼いで生きていこう」
灰が消え去った虚空に向かって、俺は深く一礼した。
「あんたの力、確かに受け取った。……行ってくる」
指輪を左手の指へ嵌め、魔力を込める。青い宝石が眩い光を放ち、空間を裂くようにして、未知なる異世界へ繋がる巨大な「光の門」が目の前に開いた。
――浮遊感。そして、強烈な重力。
ドサリ、と硬い石畳の上に転がった。
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