第19章:最弱のパーティ
朝のギルドは、いつものように酒臭い熱気と怒号で騒がしかった。
受付嬢が、俺が差し出したギルドカードを溜息交じりに眺める。
「サトオさん、ね……。今回も受ける依頼は『街道の溝掃除』と『薬草摘み』? ……本当に上を目指す気、あるの?」
俺は「へへ、これが一番安全ですから」と適当に笑い、依頼票を受け取ろうとした。
――その時だ。
背後に立っていたセリアが、ギルドの掲示板に貼られた高ランクの『討伐依頼』を無造作に指差した。
「ねえ、サトオ。あのお仕事、報酬が銀貨五十枚よ。今の貴方の泥臭い依頼より、ずっと効率的じゃない?」
その瞬間、ギルド中が水を打ったように静まり返った。
Fランクのしがない冒険者が、あろうことかBランク相当の『狂暴化したオークの集落討伐』を値踏みするように指差しているのだ。周囲の荒くれ者たちの視線が、一斉に俺たちへと突き刺さる。
俺は慌てて彼女の口を塞ごうとしたが、すでに手遅れだった。
「あら……サトオさん、そのお連れの方は? 珍しいわね、あなたがパーティを組むなんて」
受付嬢が面白がるような視線で俺たちを見比べる。
俺は額を押さえ、心の中で深いため息をついた。ここで下手に否定して騒ぎを大きくすれば、余計に目立つ。それならば、いっそ適当な依頼を受けて、街の外で「やっぱり無理でした」と体よくサボって帰ってくる方が、平穏への近道かもしれない。
「……分かった。臨時で一人、追加登録させてくれ。名前は……セリアだ」
俺の言葉に、セリアはフードの奥で悪戯っぽく口元を緩めた。
「ふふ、よろしくね。頼りにしてるわよ、サトオ」
こうして、史上最も歪で、ちぐはぐな最低ランクパーティ『泥の靴』が結成された。
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