表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/54

第17章:聖都の影、嘘と誠の境界線

 聖都の冒険者ギルドは、いつにも増して騒がしかった。


 俺たちは埃まみれの姿のまま窓口へ向かい、遺跡での出来事を報告する。俺の隣には、フードを深く被り、俺の外套を掴んで離さないセリアがいる。


「――なるほど、遺跡の中枢で防衛装置が暴走し、構造全体が崩落したと。……怪我人は?」


 受付嬢が眉をひそめながら、手元の書類に記録を走らせる。俺はいつもの、少し頼りないFランクの笑顔を作って答えた。


「ええ、ギリギリで脱出しました。……正直、何が起きたのかさっぱりで。いきなり床が鳴り出して、気がついたら崩れていて……不審者? 誰のことでしょう。あの中には、ただ不気味な連中が数人いただけです。怖くて顔を見る余裕もなくて……」


 俺は極力、視線を泳がせ、「恐ろしい目に遭った無力な冒険者」を演じきった。


 隣でバルドがわざとらしく咳払いをし、ミアが完璧なタイミングで補足する。


「ええ、本当に危なかったわ。あのままでは全員生き埋めになるところでした。サトオが裏道を見つけてくれなければ、私たちもどうなっていたか……」


「そうですか……。調査部隊を派遣すべき規模の崩壊ですね。……ですが、サトオ様、その少女は?」


 受付嬢の鋭い視線が、フードの下のセリアに向けられる。俺は自然な動作で、セリアを背後に隠した。


「遺跡の瓦礫の下で泣いていたんです。連中が儀式に使おうとしていたみたいで……。見捨てて逃げるなんて、俺にはできませんでした。Fランクの分際で生意気なのは分かってます。でも、保護させてください。責任は俺が持ちます」


 俺は真っ直ぐに受付嬢の目を見つめた。嘘はついていない。すべて、俺が背負うと決めたことだ。


 受付嬢はしばらく黙り込み、やがてふう、とため息を吐くと、呆れたように微笑んだ。


「……保護の届出は受理します。ですが、街中での騒動は厳禁ですよ。あなたのこれまでの貢献を考慮して、今回は不問としますが、次は……ありませんからね」


「ありがとうございます!」


 ギルドを飛び出し、裏路地へと駆け込む。緊張の糸が切れ、俺は壁に寄りかかって大きく息を吐いた。


「ふう……助かった。みんな、さっきは口裏を合わせてくれてありがとう」


 俺たちはそのまま路地裏の宿へ移動し、小さな個室に集まった。


 セリアをベッドに座らせ、俺は扉に鍵をかけると、バルド、ミア、レイに向き直った。


「……言っておかなきゃならない。この子は、ただの孤児じゃない。さっきの遺跡にいた連中が、利用しようとしていた存在だ。この子を連れていることは、これから教団の……そして世界中の厄介事の標的になることを意味する」


 仲間たちの表情に緊張が走る。だが、俺は彼らの返答を待たずに言葉を続けた。


「俺は一人で消えるつもりだった。だが、お前たちがこうして……俺の理屈に付き合ってくれるなら、少しだけ頼らせてくれ。今夜だけは、この街で身を隠す場所が必要なんだ」


 バルドが俺の肩を強く叩いた。


「何を水臭いことを言ってやがる。あんたがその子を守ると決めたなら、俺たちの答えは一つだろ」


「そうよ。プロの魔術師として、あんな怪しい教団に遅れを取るつもりはないわ」


「罠の解除と逃走経路の確保なら俺の専門だ。任せときなって」


 ミアとレイも、不敵な笑みを浮かべて頷く。


 誰もそれ以上は追及しない。ただ、俺の「秘密」の重さを、彼らは仲間として共有してくれたのだ。


 やがて夜の帳が下り、聖都は静まり返っていく。


 俺はベッドの上で小さく丸まるセリアを見つめながら、これから始まる、終わりなき逃走と戦いの日々を静かに予感していた。

面白ければ、ブックマーク、評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ